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【J1:第10節 F東京 vs 名古屋】レポート:静かな前半を生んだ両指揮官のアプローチ(14.04.30)

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互いの指揮官の意図が存分に出た試合だった。
西野朗監督は、試合後の会見でこう語った。
「F東京の特長は、3ボランチにあると思います。彼らの距離感が良ければ、堅い守備を出しやすくしてしまう。その3人をどうスライドさせて、開かせて、スペースと時間をつくるかがポイントになっていた。そこに玉田がドロップオフして中盤の数を増やしてボールを動かせた。有効にスペースを使えていたと思うが、そこからスピードアップして行こうというところで、ミスがあったり、コンビネーションがうまくいかないところがあった。3人をどう外していくか、距離を広げていくかを考えなければいけなかった」
名古屋は、西野監督の狙いを実践した。そのカギを握っていたのが、田中マルクス闘莉王と、玉田圭司の2人だ。闘莉王は、最終ラインから広角に蹴り出し、F東京の3ボランチの距離を広げた。そこに、玉田が前線から落ちてきてアンカー脇のポジションに入り込むと、そこを起点に攻めた。練達の2人がいたからこそ、名古屋はボールを保持する時間をつくれた。

ただし、それを見たF東京ベンチの動きも早かった。試合開始から、中盤でボールを動かされ続けるのを見たマッシモ・フィッカデンティ監督は早々にシステムを変更。4−3−1−2から4−4−2へとシフトし、3ラインで対応したのだ。
それにより、西野監督が語ったように、起点をつくられたあとの攻撃を阻止することに成功した。引き締まった試合展開はそうして生まれた。

フィッカデンティ監督は次なる一手を用意していた。だが、その戦術をピッチに投影する前に、名古屋が勝負を決めた。
後半開始早々の48分、右CKに矢野貴章が飛び込み、ニアサイドで合わせると、先制のゴールを揺らした。この失点が大勢に響いたのは間違いない。
F東京の指揮官は、55分から徳永悠平に代えて松田陸を投入する。そこで5−2−3の並びにすると、攻撃時は両サイドバックを高い位置に置き、サイドを起点にゴール前へと迫った。この変更によって前半とは真逆の怒涛の展開となった。ボールが互いの陣地を行き来し、スピーディーな試合へと変貌した。
しかし、先制した名古屋も闘莉王、楢崎正剛を中心にクロスを跳ね返す。体を張った守りでF東京の猛攻を防ぎ切り、名古屋は5連敗をストップすることに成功した。

試合後、フィッカデンティ監督が「後半の失点が試合の流れを変えた」と悔いたのはそのためだ。この試合の勝負どころは、まさにあの矢野の得点だった。
互いが、指揮官の意図を実践した。一つ一つの時間帯を紐解けば、サッカーの深さが伝わってくる。ヒリヒリとした展開を生んだ前半にこそ、この試合の面白さがあるのかもしれない。

以上


2014.04.30 Reported by 馬場康平
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