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【J1:第10節 甲府 vs 徳島】レポート:徳島の連敗は9でストップ。シュート19本も、決め切れなかった甲府は受け入れがたい結果を消化して次節の糧に代える(14.04.30)

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喜びを爆発させるというよりも、「勝ててよかったぁ」という雰囲気で引き揚げてきた徳島の選手。シーズン途中で陥る連敗も昨年の甲府のように中断期を挟んで8まで伸びればかなり厳しいが、開幕戦から続く連敗が9まで続けば“J1では通用しないんじゃないか”と不安になりそうなもの。小林伸二監督は、できていることをできるだけ伝えて、チームが変わっていっていることを理解させながらイージーミスを減らすことに時間を使ってきた。しかし、「チームや個人は伸びていっているけれど、間に合わないんですよね。(壁が)高くて。でも少しずつ慣れてくると変わっていくと思うんで、もう1つ勝てるように頑張ります」と会見で話した。徳島にとってJ1初勝利はこの“少しずつ”を少しでも加速させるターボになることも期待できる勝利。厳しい現実に変わりないが、これまで勝点という形で見えなかった進歩が勝点3という形で見えたことで、ファン・サポーターがそれを感じてくれてさらなる支援に繋がることも期待できる。

甲府に合わせる3バックで臨んできた徳島。4バックではセンターバックがサイドに引っ張り出されて中央が薄くなることを避けるという狙いもある。序盤は甲府の1トップ・2シャドーの3枚に対してボランチやウィングバックがDFラインに下がって4枚で対応していたように感じたが、甲府の攻撃のリズムがよく、先制点が決まる可能性が高いと思う内容だった。サイド、中央をバランスよく使って攻め込んだ甲府。ミラーゲームではあったが、ここでは個の差で上回ることもできていた。しかし、時間が過ぎていくにつれて甲府が“絶対に勝たないといけない内容”というふうに印象は変わる。つまり、主導権を持ち、シュートも打っているのに決まらない時間が長くなると、ポチョ〜ンと決められる心配がどんどん大きくなる。今年は違うが、好調時のバルセロナでも年に1〜2回は負けるのだから、バルセロナではないヴァンフォーレはもっと負ける。ましてやリーグトップの攻撃陣がいるわけでもないし、リーグトップの資金力があるわけでもなく、J1リーグ平均の約半分の予算で健闘しているクラブ。早い時間帯に決められなければ、徳島ベンチに座っているドウグラスの影がどんどん大きくなっていく。

徳島のGK・長谷川徹は開幕戦で先発したものの、容赦ない鳥栖の攻撃に5失点を喫して先発の座を失った。第8節から先発に復帰したものの清水に4失点、第9節の新潟戦でも2失点していた。「GKの責任だけではないけれど、失点が多いとキツかったでしょう?」と聞くと、「たとえDFにミスがあった失点だったとしても、GKとしてはそれをカバーしたいという気持ちがありました。それができていなくて悔しい思いでした」と答えた。この長谷川と甲府のGK岡大生とは、名古屋のU-15で同学年のチームメイトだった。約10年の時を経てJ1の舞台でお互い先発として対戦できたことを長谷川は、「岡とJ1で同じ試合に出場できてうれしい、幸せだと思いました。でも、今はチームでしっかりやらないといけないので、感傷に浸る余裕はなかったですね」と言う。2人は試合前、試合後の挨拶の時に他の選手より少しだけ長く顔を見合った。試合中、圧倒的にシュートを受けたのは長谷川で、公式記録では前半は8本、岡は1本だった。しかし、前半を失点0で終えたことで徳島は満足感を得ることができたが、甲府は不満の前半。

後半、徳島は津田知宏を下げて宮崎光平を投入する。結果的にこの投入が大きいカードになる。試合内容は甲府が有利なままで、立ち上がりから決定機もあった。しかし、城福浩監督は53分に河本明人を下げてジウシーニョを投入する。後半開始から4〜5分くらいで判断した交代だが、河本が打つべき時にシュートを打たなかったことが決断のボタンを押したのだと思う。河本だけではないが、この日の甲府は時間が経つにつれてシュートの判断に思い切りのよさがなくなる傾向にあった。主導権を取っているのに決められなければ“より確実に”という思いが出るのは当然。しかし打って入らなかったシュートも課題だが、打てるのに打たなかったシュートは隠れた課題。ビンの口にこびりついている乾いたケチャップをこそぎ落とすのに手こずっている河本。それさえ取れればドバッとゴールを決めるポテンシャルは持っているのだが、徳島戦では叶わなかった。ゴールデンウィークの連戦で一度は先発の座を失うかもしれないが、そういう時こそ客観的になるチャンスなのでビンを振り続けるだけで失望する必要はない。

決め切れない甲府は58分に盛田剛平を下げて下田北斗を投入し、69分には新井涼平を下げて石原克哉を投入する。ゲームがオープンな展開になる時間も増え、甲府にチャンスが来そうな予感もしたが、5バックでスペースを埋める相手から決定機を作るのは容易ではないことを徳島に教えられる甲府。
同時に徳島のXデー実現の可能性は高まっていた。橋内優也が自陣でマルキーニョス パラナからジウシーニョへのパスを読んでカットし、猛然とドリブルで上がる。右サイドの高崎寛之に出すと、高崎は右足でファーに山なりのクロスを入れる。(キックミス…)かと思ったが、ファーに入ってきたドウグラスがヘッドで何とか中央、マイナス方向に落とす。それをフリーで拾った宮崎が打ったシュートが寄せてきた青山直晃の足に当たって、カウンターの起点となった橋内の足元に小さな孤で落下していく。それを右足ワンタッチでシュート。アウトサイドにかけたシュートだったが、橋内が意図したのはおそらくインステップで左のコース。青山に当たってシュート回転でもかかっていたボールだと思うが、狙いとは逆の右に飛んだことでGK岡の逆を突いてゴールイン。

時間は73分。ここから先、甲府にとって時間は早くなり、徳島にとって時間は遅くなる。ヤマザキナビスコカップ第3節の浦和戦では逆転して3−2とリードする素晴らしい展開から最後は力負けの3−4で敗れているだけに、リードした時の戦い方は徳島の課題。ここまでリードした展開なんてほぼ未経験なのだからうまくやるには経験不足。しかし、GKの長谷川は、「ヤマザキナビスコカップの浦和戦はうまいゲーム運びができなかったし、最後は引いてしまって逆転された。リードしてからは気分的にしんどい時間でしたが、『攻めて来いよ!』くらいの気持ちでいました」と、気持ちを高ぶらせた。アディショナルタイムを含めた約21分間、つった足と痛めた腰をなだめながら徳島のゴールを守り切った。そして耐えに耐えて勝点3の笛を聞いた。

甲府にとっては受け入れがたい現実。あの失点は徳島に運があったが、宮崎をフリーにしていたのは甲府の課題で、運に見放されていたとしても防ぐことができた失点。もっとページを戻せば、決められなかったシュートや打たなかった決定機手前のシーンを数えれば、足の指まで動員するほどではないけれど、片手では足りない。ただ、絶望なんてしないし、「徳島に負けた悔しさがあったから川崎F(次節・5/3@等々力)に勝てた」と言えるような未来を作ればいいだけ。人間もJリーグも万事塞翁が馬。この日は湘南だけは連勝を10に伸ばしたけれど、未勝利の富山に初日が出て、名古屋の連敗は4で止まり、DeNAベイスターズは今季初の連勝を果たし、青赤(甲府とF東京)は仲良く負けただけ。そして、徳島も初日を出して連敗を9で止めた。連勝も連敗もいつかは止まるから、勝っても負けても次が大事。失望し過ぎても喜び過ぎても駄目。人生もリーグ戦も続くから次の準備が必要になる。ただ、徳島サポーターの皆さんは2〜3日浮かれましょう。

以上


2014.04.30 Reported by 松尾潤
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