3試合負けなしの水戸と4試合負けなしの熊本の対決。互いにここ数試合で感じた手ごたえを確信に変えるために、前節から中2日で迎えるこの試合で勝利を必要としていた。しかし、両者ともに決め手を欠き、スコアレスドローに終わり、勝点1を分け合う結果となった。
それでも、試合後の両指揮官は清々しい表情を見せ、この試合における手ごたえを口にした。「お互いにやりたいことができたいいゲームだった」と柱谷哲二監督が言えば、小野剛監督も「お互いに力を出し合ったゲームだった」と語り、狙いとする勝点3を手にすることはできなかったものの、ともに健闘をたたえ合うほど「中身の濃い面白いゲーム」(柱谷監督)が繰り広げられた。
第7節・群馬戦からシステムを4−4−2に戻し、ボールを動かしながら攻撃に人数をかけるサッカーにトライをしている水戸。それが形になったのが前々節後半から。前節は1−0という僅差ながらも内容の伴う勝利を手にすることができた。大事なことは継続すること。今節は中2日のゲームということで、コンディションを考慮してメンバー変更が行われた中でもチームとして狙いとするサッカーをしなければならない。チーム力が問われるゲームとなった。
そこで、選手たちは期待にこたえるパフォーマンスを見せた。前々節の東京Vと同様、熊本は序盤からタイトなプレスをかけてきたものの、水戸は恐れることなく、テンポよくボールを動かして攻撃を組み立てた。チームに勢いをつけたのはダブルボランチだ。中里崇宏と内田航平が中央で積極的にボールに絡み、攻撃にアクセントをつける。さらに27分に内田が強烈なミドルシュートを放ったように、ゴールに向かう姿勢も見せた。
そして、守備での安定感も際立っていた。常にリスクマネジメントを怠らず、齊藤和樹のスピードとキープ力を生かした熊本のカウンターに対しても的確な対応を見せ、ピンチを回避し続けた。「(第3節)北九州戦や(第4節)岡山戦でボールを支配しながらも1本のチャンスで決められた経験があるので、同じミスを犯さないように集中してできている」という冨田大介の言葉が示すように、過去の苦い経験を無駄にせず、チーム全体で高い意識を持つことができていた。攻守ともに着実な成長を見せたのであった。
0−0で迎えた終盤、水戸は三島康平と船谷圭祐を投入。そこから怒涛の猛攻を仕掛けた。前線で三島が起点となり、船谷がアタッキングエリアで躍動し、横幅を有効に使った厚みのある攻撃から熊本ゴールを襲った。しかし、熊本は粘り強い守備でゴールを死守。90+2分と90+4分にこぼれ球を拾った内田がシュートを放つものの、熊本DFが体を張ってブロック。終了間際、中里が放ったループシュートはゴールのわずか上に逸れていった。
熊本のゴールをこじ開けることができず、勝利を逃した水戸。とはいえ、決して悲観すべき内容ではなかった。チャンスの数は試合を重ねるごとに増えており、その多くがチーム全体でイメージを共有し、多くの人数が関わって作り出したものであることに大きな意義がある。チャンスを必然として作り出せていることは紛れもない成長だ。あとはゴール前の質とアイデア、そして「ゴールを決める」という強い意志が求められる。特に3つ目の意志こそが今の水戸に最も必要なものと言えるだろう。もっと貪欲に、もっとガムシャラにゴールに向かう姿勢が出れば、このチームはさらに強くなる。勝点1を積み上げて7位に浮上したが、ここが満足すべき場所ではないことは誰もがわかっていることだろう。ここからさらに上に行くために、今まで以上に強い意志を持ってゴールに迫ってもらいたい。
熊本にとっては終盤の水戸の猛攻に耐えきったことが一番の収穫と言えるだろう。3試合連続80分以降に失点しており、その悪しき流れを断ち切らなければならなかった。ただ、そのためにやり方を変えては意味がない。積極的な守備を貫いて成し遂げるという覚悟がプレーに表れていた。水戸のパスワークにかいくぐられる場面もあったが、それでも守備の積極性を失うことはなく、最後まで隙を見せることはなかった。そして、攻撃では変化をつけたセットプレーから何度も水戸ゴールを襲った。本間幸司の好セーブに防がれてゴールを割ることはできなかったものの、全体的に守勢に回りながらもゴールの予感を漂わせていたことにチームの力強さを感じざるを得なかった。
両者ともに自分たちの今やるべきことにトライした上でのスコアレスドロー。結果が示すように、そこに敗者はいなかった。
以上
2014.04.30 Reported by 佐藤拓也
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