福岡ダービーを語る時、絶対に忘れられないシーンがある。2013年10月6日、本城陸上競技場で行われたJ2第36節の戦い。勝利を決定づける2点目を挙げた西田剛(現愛媛FC)は一目散にサポーターのもとへ走り、ダンマクに書かれた「意地」の文字をバンバンと叩いた。その戦いにかけられているものは「意地」と「誇り」。勝利以外にそれを守るものはない。それがダービーだ。しかも、北九州との対戦は同じ福岡県内にホームタウンを置くチーム同士の戦い。アウェイであろうとも負けられないことは当然で、ましてやホームゲームでは勝利以外の結果は何も意味しない。そして29日、福岡は北九州をレベルファイブスタジアムに迎える。
迎える福岡ダービーは7回目。その歴史はまだ浅いが、ひとつ、ひとつの試合は「これがダービー」という名にふさわしい激しい戦いを繰り広げてきた。初対戦となったのは2010シーズン第14節の本城陸上競技場での対戦。雨の中、7,398人の観衆に見守られた戦いは一進一退。スコアレスのまま迎えたアディショナルタイムに鈴木惇(現東京V)が放ったFKがオウンゴールを誘って福岡が勝利を手にした。やりたいサッカーをしていたのは北九州。しかし勝利を手にしたのは福岡。皮肉なことに、オウンゴールに関わったのは、この日、北九州を牽引し、両チームを通じて一番の活躍をしていた桑原裕義だった。しかし、それがサッカー、それがダービー。最後の最後でサッカーの神様は福岡に微笑みかけた。
通算成績は5勝1敗と福岡がリードするが、福岡が安心して試合を進めたのは2010シーズン第31節にレベルファイブスタジアムで戦った試合のみ。それ以降は、どちらが勝ってもおかしくない戦いが続いている。そして、福岡が屈辱を味わったのは2012シーズン第29節の本城陸上競技場での対戦。8分、15分と失点を喫した福岡は、前半のアディショナルタイムに1点を返したものの56分に3失点目。後半のアディショナルタイムに意地のゴールを挙げたが、その気持ちさえ打ち消されるかのように、北九州にアディショナルタイムで4点目を奪われた。私事で恐縮だが、この試合は、忘れたくても忘れられない記憶として頭の中に刻まれている。2013シーズンの戦いで福岡は押し込まれる展開の中で2勝を挙げているが、この時の記憶がチームに刻まれていることも勝因のひとつだろう。
そして7回目のダービーは、福岡が4勝3分2敗の5位、北九州は4勝1分3敗の12位という状況で迎える。順位こそ離れているが互いの間にある勝点差は僅かに2。アウェイであろうとも負けられないという思いは北九州も同じで、ましてや勝利すれば順位が入れ替わることもあり、いつも以上に激しい気迫でぶつかってくることは間違いない。注意しなければいけないのは、ここまでの激しい戦いの数々を知る池元友樹と冨士祐樹の2人。今シーズンは3試合の出場にとどまっているが、かつて福岡の選手としてプレーした宮本亨も激しい闘士を燃やしている。そして、新戦力ながらチームを牽引する原一樹、風間宏希も警戒しなければならない存在だ。おそらく、福岡ダービーの歴史の中で最も手強いチームだと言えるだろう。
だからと言って、福岡が北九州に臆する理由はひとつもない。今シーズンの福岡は粘り強さがチームの武器。思うように力を発揮できない試合もあったが、昨シーズンの悔しさと、チームを救ってくれた人たちへの感謝の気持ちを胸に戦うチームは、背負うものの大きさを表現する力を蓄えている。福岡のシンボルとしてチームを引っ張る城後寿は、この戦いに内容も、結果も求めるが、それにふさわしいプレーをすることは間違いなく、その気迫はピッチに立つ仲間だけではなく、スタンドで声援を送るサポーターの気持ちも奮い立たせるはずだ。そして、今年は福岡の選手として福岡ダービーを戦う森村は、前節の群馬戦で決勝ゴールを挙げて復活をアピール。「福岡ダービーは絶対に勝ちたいし、サポーターも勝ちしか望んでないと思う。その雰囲気や状況というのを、すべてを楽しめる準備ができた。楽しみ」と意気込みを見せている。
おそらく、過去6戦にはなかった激しい戦いになることは間違いない。だが、それでも勝利を手に収めるのは福岡。ピッチに立つ11人。ベンチに控える7人。ベンチの外からチームとともに戦う選手。そしてスタンドから熱い声援を送るサポーター。レベルファイブスタジアムがひとつになって戦う試合では勝利以外の結果はあり得ない。
以上
2014.04.28 Reported by 中倉一志
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