山形は今季アウェイ初勝利、岡山は今季ホーム初勝利。これまでそのポテンシャルと釣り合わない下位に甘んじ、クリーンシートで前節ようやく今季3勝目を挙げたチーム同士が、今季初の連勝と上位進出へ加速する権利を懸けてNDスタで対戦する。過去の対戦は岡山の4戦全勝。中2日のゲームになるが、彼らの生命線である運動量をセーブしながらの展開は考えにくく、むしろそれこそが勝敗を分ける要素と言ってもいい。
山形は前節、好調の北九州を1-0で下してホームに戻ってくる。第7節・京都戦で後半アディショナルタイムに追いつかれ、第8節は内容自体の低調さで敗れた悪い流れをひとまず断ち切った。決勝点となった先制点は前半アディショナルタイム。再三オーバーラップを見せていた山田拓巳がスピードに乗って入れたマイナスのクロスに逆サイドから入り込んだ中島裕希が合わせ、この1点を後半も守りきった。松岡亮輔は後半に途中出場する直前、ややアプローチが緩んだチームに「ボールホルダーにプレッシャーに行かないと、J1のレベルではあれだけ余裕を持たれたら、いくら後ろで8人ブロックを組もうがやられる」と警告を発し、さらなるレベルアップを訴えるなど十分に満足できる内容でなかったことは否めない。しかし、そのなかでも勝負へのこだわりがプレーに色濃く反映され、昨年は身につかなかった「手堅さ」もチームの特長になりつつあることを示す一戦となった。この2試合の教訓を生かしたことで、山形は前を向いて今節に臨む。
岡山はシーズン序盤からすでに緻密なチーム戦術が確立されていたが、得点力が上がらず苦しいスタートを切った。さらに主力に負傷者が相次ぎ、特に植田龍仁朗、近藤徹志、竹田忠嗣と3枚のセンターバックが4月以降次々に離脱している。苦しい状況のなか、光明となっているのが大宮から加入した上田康太の存在だ。2試合の途中出場を経て初先発を果たしたのは東京Vを1-0で下した第7節。第8節・北九州戦は0-3とスコア上は大差での敗戦となったものの、影山雅永監督が「90分を通してアグレッシブに戦えた、というのは実は、今季8試合で初めてかなと思っています」と手ごたえを感じさせるゲームを実現すると、前節・札幌戦では2-0と初の複数得点を記録して勝利。上田自身も相手キーパーのパスミスを逃さず、加入後初得点となる先制ゴールを挙げている。1-0から相手の退場で数的優位になったあとも札幌・都倉賢との身長差を埋めきれず、けっしてラクな時間ではなかったが、「コミュニケーションを取る、反応する、ダメでもシュートに対してスライディングで身体を投げ出すことが、最後まで集中を途切れることなくできた」(影山監督)と無失点でしのぎ、85分には石原崇兆の突破から島田譲の追加点につなげて試合を決めた。
ボールを握り、展開し、時には一発で決定機をつくり出す。ともにボランチが大きな部分を担っている。山形では前節、積極的にミドルシュートを狙った宮阪政樹がサイドチェンジを使った展開力や組み立ての部分でチームを引っ張れば、秋葉勝は相手の隙を突く飛び出しに加え、前節では速く正確なくさびで縦に勝負できるパサーとしての能力も十分に発揮。対する岡山は上田に加え、島田、千明聖典といずれもボールが落ち着き、シンプルにさばくこともできる。
このボランチ同士がマッチアップするシーンも多く見られそうだが、ともに攻撃陣にスピードと運動量のある選手を配するだけに、セカンドボールや球際の争いで入れ替わった瞬間にチャンスにもピンチにもなり得るスリリングな展開が予想される。特に岡山は前節で久保裕一が務めた1トップに早いタイミングで当てるケースが多く、山形にとっては守備への切り換えからのボールホルダーへのアプローチや、1トップへの対応をノータイムで判断する必要がある。
「連勝しなきゃなかなか上との差が縮まらんからね」。そう話したのは、これまでJリーグで7つのクラブを渡り歩き、今節がリーグ通算500試合目の指揮となる石崎信弘監督。復調の兆しは見えている。だからこそ「連勝」という結果も得て早い時期に安定軌道に乗せたい思いはどちらも同じだろう。この一戦は、1試合以上の重みを持っている。
以上
2014.04.28 Reported by 佐藤円
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