ようやく、ようやく、岡山の攻撃がピッチ上で実った。「走り勝ったということだと思います。試合の入りから出足が相手を上回って、奪って出て行く、それを連続させることが出来た」と岡山・影山雅永監督は振り返る。ここ数試合で作られていた攻撃の形が、前に出てくる札幌に対して機能し、岡山は今年初めて複数得点でゲームを終えた。札幌は後半11分、左SB松本怜大が累積警告で退場。10人になってからはよりシンプルにゴールを狙ったが、得点には至らなかった。
岡山のそれぞれの選手から、自分たちの役割を忠実にこなして、チームに貢献しようという思いが見えていた。前節・北九州戦の敗戦が、本来の自分たちに立ち返らせた。トップの久保裕一のポストプレー、シャドーの林容平の前線からのプレッシング、石原崇兆の要所への顔出し、ワイドの久木田紳吾、染矢一樹の突破とクロス。ボランチの上田康太はエレガントにボールをかっさらい、島田譲は前線へと強く飛び出していく。自らの持ち味に徹し、余分な色気のない攻撃は秩序立っていた。また、竹田忠嗣、近藤徹志、植田龍仁朗を欠いた最終ラインは、3バック中央の後藤圭太を中心に、札幌のタレントの自由を抑えるため、「今日はとにかく声を出しました」(田所諒)と言う。それだけでなく鎌田翔雅も田所も抜かりないケアをしながら、攻撃への意識を高めていたため、全体に人がよく動き、アグレッシブな循環を生み出した。
前半は岡山がシュート7本、札幌が5本と本数に大差はないが、岡山がチャンスを作り続けていた。先制点が欲しかったが決められないまま臨んだ後半、岡山に得点が生まれる。後半4分、札幌のGK李昊乗から宮澤裕樹へのパスを奪って、上田がゴールへと流し込む。「キーパーが外に出す振りをして、つけてきた感じだったので、それを読めたという感じだったのかなと思います」と上田。1点を追う形になった札幌は後半11分、岡山の右サイドを駆け上がる石原を止めようとした松本に2枚目のカードが突きつけられる。怪我明けで前節後半から試合に戻った石原は、「ファウルの覚悟なしでは止められない石原崇兆」のキレを完全に取り戻した。
一方の札幌は10人になり、前田俊介に代わって砂川誠が投入されたことで、ポゼッションの時間を増やした。さらに榊翔太を入れ、フォーメーションを【3−4−2】にして、後半23分には日高拓磨のクロスから都倉賢のシュート、24分には左サイドを駆け上がった榊のクロスに宮澤が飛び込むが合わず。25分には岡山のクリアミスから、都倉がDFとGKのポジションを見きわめたふわりと浮かせたシュートを放ったが、ぎりぎりでバーの上へ。ボックス内に人数が揃うようになった札幌の攻撃を、岡山は集中してしのぐ。
踏ん張る岡山は自陣に全員が引く時間が続いたが、カウンター攻撃時にはサポートの選手が複数で入る切り替えの速さを全員が保っていた。とくに石原のドリブルでの上がり、キープはゲーム終盤の身体にヘビーに響く。また上田のパスの一本一本には、驚くほどわかりやすいメッセージが無数に込められていた。そして後半40分、ボックス周りでキープした石原はマイナスのボールを送り、これを島田譲が決めて札幌を突き放す待望の追加点を決めた。
札幌は前半に出遅れ、ミスからの失点もあり、堅守から生まれるリズムを作り出せなかったが、後半は攻撃的に機能させた。1年1ヶ月ぶりの先発出場となった古田も積極的にシュートを放っており、後半に見せた怒濤の攻撃は、3連勝中のホームゲームにつながるはずだ。岡山の秩序と躍動は開幕から約2ヶ月が過ぎたこのゲームで存分に見られた。心地よく吹く風を掴み、追い風にしてGW連戦の結果にしたい。
以上
2014.04.27 Reported by 尾原千明
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