湘南の勢いは止まらなかった。この試合を前に、3日連続の完全非公開練習をしていた横浜FCの「湘南対策」の上を行くパフォーマンスを見せて、J新記録となる開幕9連勝を達成した。
横浜FCは、前節磐田戦での警告で守備の要ドウグラスが出場停止。そのため、湘南の攻撃スタイルとの兼ね合いから、この試合で3バックの3-6-1に変更した。その采配は、横浜FCに先制点をもたらす。6分、左サイドからの永田拓也のクロスを黒津勝がスルーすると、逆サイドのウイングバック小池純輝が冷静に押し込む。両ウイングバックが絡むゴールは3バックを採用したことで生まれた得点だった。
しかし、湘南は横浜FCの隙を逃さなかった。横浜FCは、ある意味ボールを湘南に持たせてでも、湘南のショートカウンターのチャンスを作らせないようにしていたが、17分、逆に少し慣れない横浜FCの3バックが岡田翔平が裏に抜けるスペースを作ってしまう。菊地俊介のパスから易々と裏に抜け出しゴールゲット。時間をおかずに湘南が同点においついたことで、湘南の勢いに火が付く。21分に横浜FCがマークの受け渡しに苦慮する中押し込まれ、中島崇典がペナルティエリア内でハンドを犯しPKを献上。そのPKを岡田が再び決めて逆転する。そして43分には、永木亮太が蹴った距離のあるFKが少し風で押し戻され、クリアに飛び出す南雄太が中島と交錯して出られない中、ウェリントンにヘディングで決められて3点目。横浜FCは3バックの変更によって先制点は得るが、逆にその3バックの穴を突かれる形で失点を重ねてしまった。
後半頭から、横浜FCはホナウドとフェリペを投入。湘南も積極性を加えるために亀川諒史に変えて藤田征也を投入する。横浜FCは3バックを維持しフェリペからのロングフィードを織り交ぜつつも、「ねばり強くしっかりボールをつなぐこと」という山口素弘監督のハーフタイムコメントの通り、つなぎの要素をサッカーに加えていく。しかし、特徴である中盤の出足の良さとポジショニングの良さを加速させる湘南が中盤でも、横浜FCを苦しめた。横浜FCも寺田紳一が持ち前のテクニックを駆使し、中央で相手のボランチ2枚を置き去りにするプレーを見せ応戦。「1つマークを外せればチャンスになった。その回数が足りなかった」と小池が振り返るように、湘南のプレスを崩すトライは続けたが、決定機までは作れず。アディショナルタイムに得た黒津の決定機も決められなかった。湘南は、最後まで試合運びの堅さを崩さずに試合を締めくくった。
数多くのチームから大量得点を奪い続けている湘南の強さが浮き彫りになった試合だった。その強みは共通理解と信頼だろう。切り替えで一斉に前に出る思い切りは逆にリスクを生み出す可能性もあるが、この日見せたように、縦へのクサビのパスを入れるときに前線1人で受けるのではなく、近くのFWの選手がアタックに来るディフェンダーを必ずブロックして、クサビの成功率を格段に高めるコンビネーションを保つなど、思い切りの良いプレーをしやすくするためのチームワークに優れている。もちろん、サッカーに万能な戦術はないわけで、このやり方にもデメリットもあるが、最大の武器はこの戦術を全員が信じて遂行していることだろう。サポーターを含めて、その一体感が際立った試合となった。
一方の横浜FCは、この試合に掛けていたプランを90分間遂行するだけの成熟度を見せられなかった。前半の湘南のスペースの使い方、後半に見せた現状打開のための努力は今後にも繋がる部分もある。しかし、湘南との対比で言えば、いかにチームだけでなくスタジアム全体に信頼感を注入できるかを問われたのではないだろうか。いみじくも、曹貴裁監督の試合後の記者会見の、
「湘南ベルマーレというクラブが一時期存続の危機にあって、僕も10年お世話になっていますが、Jリーグの中で記録を更新できたのは、これは僕だけでなくて、その間クラブに携わった人が思いを持ってこのクラブを支えたことが、たまたま今年結果に出ただけで、もしかしたら去年かもしれないし、もしかしたら5年後かもしれない。思いを持ち続けるということが大事ということが、見ている皆さんとか我々のクラブで働く人に伝わるのであれば、9連勝は価値があることだと思います。ただ、これに慢心して、俺たち強いとか俺たち出来るんだということになると、その積み上げ自体が無意味なものになるので、それは我々だけではなくて、サポーターも含めて全員でやった、その歴史があるから今がある」
という言葉は、クラブ消滅という悲しみを起源に持つ横浜FCのクラブ、サポーターにも大きな意味のある言葉なのではないだろうか。
安英学は「相手は上手かったが、人もいたし、相手に崩されて拍手を送るような失点ではない。そういう失点をすることも含めて実力。今回は悔しいですが湘南の方が強かったということで、次に対戦する時には借りを返したい」と悔しさをにじませた。横浜FCもまだまだ成長できる。それは湘南がこの試合で見せてくれたもの。第41節、11月15日という大詰めで行われる次の神奈川ダービーで借りを返せるかどうか、それがクラブとして問われる。
試合のテンションは、過去の神奈川ダービーとも遜色のないものだった。次は、それ以上を期待したい。
以上
2014.04.27 Reported by 松尾真一郎
J’s GOALニュース
一覧へ- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- 2024J2昇格プレーオフ
- J3・JFL入れ替え戦
- bluelock2024
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off