青黒に染まったゴール裏からは凱歌が響き渡り、黄色に染まったゴール裏からは怒号が飛び交った。今季初の連勝は成らず、ホーム2連敗も止めることは叶わなかった。またしても栃木は、北関東の雄・水戸の軍門に下った。
水戸を迎えた今節の北関東ダービーは、煎じ詰めると「相手のストロングポイントを抑えられずに、自分たちのストロングポイントを抑えられてしまった」(山形辰徳)ということになる。
小野寺達也のパスに近藤祐介が反応し、左からのクロスを山形がファーサイドでボレーシュート。開始1分に栃木がファーストシュートを放ち、これで流れを掴む。直近の試合の課題であった、立ち上がりの拙さを克服してみせた。ただし、決定機を作るには至らず、13分にイ・ミンスが、20分にチャ・ヨンファンが、28分には岡根直哉までもが緩慢なプレーを重ね、徐々に雲行きが怪しくなる。
掌握していた流れを自ら手放したことで、今度は水戸がテンポよくボールを動かし始める。「中里がだいぶフィットしてきた」と柱谷哲二監督が言うように、ダブルボランチを経由した展開に栃木は振り回され、「ボールホルダーに対してプレッシャーが掛からなくなった」(小野寺)。良い守備からの良い攻撃が難しくなり、エースの瀬沼優司に良質なボールが供給されなくなる。完結できていた攻撃が中途半端に終わることが増え、それにより水戸にカウンターを許す機会を与えてしまったのだ。
悪いなりにも前半を無失点で終えたが、後半に入っても栃木はピリッとしなかった。48分の絶体絶命の危機はGK榎本達也が踏ん張ったが、56分の馬場賢治のヘディングシュートには成す術がなかった。馬場の2試合連続弾は尾本敬のロングフィードを起点に、三島康平が競り落としたボールから生まれた。尾本は栃木のセンターバックが背後の対応に難があることを把握しており、また制空権を掌握していた三島が勝てると踏んでボールを入れたのだ。前半から三島との空中戦でドゥドゥとチャが先手を取れなかったことがボディブローのように効き、ついには失点を招いてしまった。一方、水戸は6ゴールを挙げている瀬沼を自分たちの目の届く範囲に置き、栃木の攻撃力を半減させた。
ビハインドを負った栃木は、早い時間帯から長身の大久保哲哉を投入し、パワープレーを敢行。これに対して水戸は、5バックで応戦した。瀬沼と大久保を使うことが大前提の戦略を採ったが、そればかりになれば水戸も割り切った対応ができてしまい、つまり柔軟性がなくなることで栃木は自ら攻撃の選択肢を削ってしまったと言える。皮肉なことに、「下を使った方がチャンスになっていた」(大久保)。結局、有効打を打てずに、0―1で終戦を迎えた。
勝利だけが求められるダービーで結果を出した水戸。これで今季のダービーは2連勝で、3連覇を手元に引き寄せた。前節は先行しながら追い付かれたが、今回は見事に逃げ切ってみせた。それに関して柱谷監督は、「90分間集中してプレーしてくれた」と選手達を褒め称えた。と同時、「2点目を決め切ってとどめを刺せないのが我々の課題」と改善点にも言及し、「2点を取れるチームにしたい」と、理想を追い求めて突き進んでいくことを宣言した。
9試合を消化した時点で、先行を許した試合では3戦3敗の栃木。「先制点を取られると、今のJ2は難しくなる」(大久保)ことを、またも痛感させられてしまった。負け試合を急に勝ち試合に持って行く力を養うことは容易ではない。まずは、ドローに持ち込む力を付けることが急務だろう。先制された後に精神的に崩れないことが肝要で、追い込まれても質が落ちないようにしなければならない。そのためには、「トレーニングから試合を意識して臨まないといけない」と阪倉裕二監督。指揮官が重んじるトレーニングに答えがあるならば、そこで問題を解決するしかない。
以上
2014.04.27 Reported by 大塚秀毅
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