百戦錬磨の名将をも悩ませる名古屋の負傷禍が止まらない。今週水曜日の練習でピッチにいたフィールドプレーヤーは20人のみ。うち1人は別メニューでランニングをしていた田鍋陵太であり、練習の負荷が上がっていくと玉田圭司と牟田雄祐が別メニューとなり、紅白戦ではなく8対8にフリーマンを加えたミニゲームしか行えなかった。翌日の完全非公開練習では次節の相手を想定した紅白戦を行なうのが通例のため、西野朗監督は「対戦相手を探している。フィールドが16人じゃどうにもならない」と話し、「毎日、練習前にもらう負傷者リストに12〜13人の名前があるなんてこれまでにはほぼなかったこと。まあ、これもチーム。これもグランパス」とため息をついた。正直言って、今節の名古屋は試合メンバーを組むだけで精一杯といった状況だ。打開策を考える以前に、戦う体勢を整えなければいけない。
指揮官の言う通り、名古屋の負傷者リストは日に日に分厚いものになってきている。今週はケネディと刀根亮輔、望月嶺臣が新たにそこに名を連ねることになった。これで右サイドバックを務められるのは、前節からコンバートされた矢野貴章のみとなり、ボランチから試合を作れるゲームメイカーもいなくなった。痛恨なのはここまで4得点と好調を維持してきたケネディの離脱だ。水曜日の練習は全て室内での別メニューとなり、「おそらく次は出られない」と言い残して帰路についた。194cmの高さと懐の深いポストプレーを失ったチームは、攻撃の再構築を迫られることになる。また大武峻と牟田が不在のセンターバックのポジションについては指揮官が「(ハーフナー)ニッキかダニルソンのどちらかを選ぶしかない」と明言しており、練習を見る限りではダニルソンが田中マルクス闘莉王のパートナーとしては最有力だ。高さの闘莉王とスピードのダニルソンというコンビは相性が良さそうに見えるが、ダニルソンのセンターバックとしての能力は未知数だけに、さすがの闘莉王も「わからない。指示を出しながらやっていくしかない。大変だよ」と苦笑するしかなかった。
弱り目に祟り目とはよく言ったもので、そのような状況で名古屋が迎え撃つのは上り調子の鳥栖である。現在連勝中で順位も首位に勝点差2の5位と、15位名古屋のはるか上に位置している。エース豊田陽平は8試合6得点で得点ランクトップを走り、失点6はリーグ2位タイの堅さだ。もともと守備力には定評あるチームだったが、今季はボールを積極的に奪いに出る守備も織り交ぜるスタイルに進化した印象で、攻撃も豊田の空中戦を基点とした縦への速さだけでなく、左の金民友と安田理大のコンビに代表されるサイド攻撃も活性化されており、組織のバリエーションは明らかに拡充されている。名古屋の選手たちに鳥栖の印象を聞けば、「守備が堅い」「ロングボールを蹴ってくる」というのが大半だったが、そのイメージを持ち続けていると危険かもしれない。今季の鳥栖は守備のチームではなく、もっとオーソドックスに強いチームになっているからだ。
名古屋の浮沈を握るのは守備になってくる。西野監督のスタイルを考えれば攻撃と言いたいところだが、DFラインの負傷者続出と8試合15失点中ということを考えればそうも言ってはいられない。ただし守備を固めるという意味ではなく、いかに守るかが肝要だ。例えばGK楢崎正剛はこう表現する。「ディテールにこだわって守備はしたいけど、今は基本的なことをまずやるしかない」。代役だらけのDFラインに緊密な連係は望めないのは明白だけに、それは真理だろう。自身も負傷を抱える身だが、そこは笑い飛ばして前を向く。「オレのケガは大丈夫ですよ。オレまで休んだら、何人休んどんねん!という感じやし(苦笑)。自分のフォームは早く取り戻したいですけどね。今はチームを助けるために、自分のプレーに集中するのも一つの手かもしれない」。
守備を固めることはしたくない。それは指揮官の言葉にも強く表れる。
「攻撃的に戦うことを戦術として伝えていても、攻撃はボールを奪うところから始まるもの。守備から攻撃への切り替えで、前に飛び出していく意識を持たせたい。DFが思い切って前の選手を追い越していく、ボールラインを超えてオーバーラップしていくことにブレーキはかけたくない。そういう推進力を持って攻撃に出ていい」
あくまで攻撃の第一歩としての守備。ではその先をどうするかは小川佳純の考えが明確だ。ケネディ不在が濃厚の前線は、永井謙佑と松田力のツートップがおそらくはファーストチョイスとなる。その使い方を攻撃の中心人物は次のように話してくれた。
「今はピッチにいる選手の特徴を生かせていないです。例えばジョシュア(ケネディ)がいるのにクロスが上がらない。去年までなら生かすためにクロスを上げ続けていて、それは一つのやり方ではあった。今年はジョシュアがスルーパスで抜け出す場面が多いけど、それは特長を活かしているわけじゃないですからね。でも永井や(松田)力ならスルーパスは生きる。(矢野)貴章がサイドバックなら、攻撃面で生かさないといけない。今はメンバーが揃わないし、出ている選手の特徴を出さないと」。
守るべきところをシンプルに守り、攻めるべき局面で躊躇せずに攻め切る。言葉にしてしまえば簡単だが、満身創痍の名古屋がすべきことはそれ以上でもそれ以下でもない。推進力のある鳥栖の左サイドを封じ、豊田との空中戦を制す。中盤でのセカンドボール争いに勝利し、決定機につなげる。DFは守備を、MFはつなぎを、そしてFWは得点を。今は耐え、まずは連敗を止めることが何よりの回復薬となる。磯村亮太も言っている。「持っている力を全て出す。こういう流れだから、普通にやっても変わらない。とにかく今は勝点を取ることが大事です」。
泥沼のような悪循環を断ち切る術は、連敗を止め、あるいは勝利を得ること以外にはない。そのために、負傷者の帰還を望んでいても仕方がない。現状で戦える状態にある選手たちが何を思い、何を見せるか。大切なのは、プロとしての気概を見せられるか否かだ。そこに年齢もキャリアも関係はない。名古屋にとって現状が試練だというならば、勝利に値するだけの気迫が最大の鍵であり、見どころとなっていきそうだ。
以上
2014.04.25 Reported by 今井雄一朗
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