試合終了とともにピッチに倒れこんだ選手たちの姿がこの一戦にかける両チームの思いを象徴していた。今季2度目の連勝を狙うホームの水戸はもちろん、アウェイの東京Vも「我々にとっても、サポーターにとってもどうしても勝点3がほしい試合という位置づけだった」と三浦泰年監督は説明する。引き分けという結果に終わり、目標を達成することができなかったものの、勝利への執念を燃やして戦い続けた両チームの選手たちにスタンドから大きな拍手が贈られた。
「勝つ」ために両チームとも意識したのは安定感を失わないことだった。三浦監督が「守備の連動、守備のコレクティブが必要だった」と語るように、これまでボランチを務めてきた中後雅喜を左MFに起用するなどして、これまで以上にプレスの意識を高め、水戸のビルドアップを封じ込めようとしてきた。
それに対して、水戸はロングボールで対応。前線の三島康平やDF裏に走り込む吉田眞紀人にボールを蹴り込むことで東京Vの守備陣形を間延びさせようとした。そして決定機が生まれたのは17分、中央で中里崇宏と内田航平がパス交換。東京Vの陣形を中央に引きつけておいて、左サイドに展開。パスを受けた尾本敬がクロスを上げると、ニアに走り込んだ吉田がスルーし、ゴール前フリーで待ち構えた船谷圭祐が左足を振り抜く。ボールはゴール上に外れたものの、ロングボールとショートパスを織り交ぜながら東京Vのタイトなプレスを攻略していこうという姿勢を見せた。
だが、ハーフタイム、柱谷哲二監督はその戦い方に激怒した。「僕の嫌いなビビったサッカーだった」。今週水戸が取り組んできたのはボールを動かしながら2対1や3対1の局面を作ること。そこへのトライが足りなかったことを柱谷監督は厳しく指摘した。
もちろん、相手のプレスにはまらないように「ロングボールを蹴ってこぼれ球を狙うことも一つのやりかた」(小澤司)ではある。しかし、「それ以上に相手が嫌がることがある」(小澤)。後半は今週やってきたことを追及していこうということで入っていった。
すると、前半とは見違えた姿を水戸は見せた。面白いように中盤でボールが回るようになり、2人目、3人目の飛び出しを見せながら相手のプレスを崩していった。61分に馬場賢治が投入されると、前線からやや下がった位置で起点となり、攻撃を活性化させた。そして62分、スローインを受けて左サイドを突破した中里からの折り返しを走り込んだ馬場がうまく右足でミートさせてゴールに刺し込む。馬場のうれしい今季初ゴールにより、水戸が均衡を破った。その後も流れは変わらず、「2点目を取りに行った」(柱谷監督)水戸が再三東京Vゴールを襲う展開を築いた。
しかし、そこでトドメをさせなかったことが勝利を逃す原因となった。この日の東京Vは終盤に勝負をかける秘策を用意していたからだ。これまで先発してきた安西幸輝をベンチスタートさせ、勝負どころで起用して攻撃を活性化しようという狙いを持っていた。67分に安西を投入。そして、77分にDFラインのテコ入れを図って守備の修正を行うと、終盤狙い通り息を吹き返してみせた。80分、前田直輝とパス交換して右サイドを突破した安西がゴール前に高速クロス。ニアに走り込んだ常盤聡が頭で合わせて同点ゴールを叩きこんだのだ。
終盤両チームともに勝利を手にしようと一進一退の攻防が続いた。そしてラストプレーで水戸は決定機を迎える。尾本が左サイドから入れたクロスを受けた途中出場の鈴木隆行がトラップしてからシュートを放つ。DFに当たりながらもゴールマウスにボールは飛んだものの、ゴールライン上でGKがしっかりとキャッチ。両チームとも死力を尽くした激闘は1対1のドローに終わった。
この試合を「きっかけをつかみたかった一戦」だったと三浦監督は振り返る。それは水戸も同じこと。それだけにこの勝点1は満足できるものではないだろう。しかし、この日両チームが見せたファイトは今後浮上するために必要なベースとなることは間違いない。シーズンを振り返った時、両チームのターニングポイントとして挙げられるゲームになるかもしれない。そんな予感をさせる好ゲームであった。
以上
2014.04.21 Reported by 佐藤拓也
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