この試合のスタメンが発表された際、報道陣にざわめきが起こった。長崎の佐藤洸一と愛媛の西田剛という両チームのエースが共にベンチにも入っていなかったからだ。互いにエースを欠いた試合、共に前線のコンビネーションに注目が集まった。
立ち上がりから攻勢に出たのは前線からのプレスを得意とするホームの長崎だった。ただし、ボールは支配するものの攻撃が単調になり決定的なシーンまで行くことができない。45分にようやく決定機を迎えるが、奥埜博亮が放ったシュートは惜しくもゴールバーに嫌われてしまった。前半、長崎は8本のシュートを放つもこのシーンが唯一愛媛ゴールを脅かした場面だった。後半も前半と同じような流れが続くが、長崎は崩しの工夫とゴール前の精度に難がありゴールが遠い。するとサッカーのセオリーどおり、劣勢のチームにチャンスがやってくる。愛媛は74分、2分前に交代出場した表原玄太がドリブルで素早いカウンターを仕掛け、ペナルティエリア内へパスを送ると西田の代わりのこの日ワントップに入った渡辺亮太が今季初得点を挙げて先制。スタジアムを静まり返らせた。
ただ、この日の試合はこれで終らなかった。ここまで5戦負けなしの長崎はここから走力を生かしたアグレッシブな反撃を見せる。足の止まった愛媛は長崎の攻撃をファールでしか止める事ができない。長崎は88分に得た約30メートルのFKを、途中出場の石神直哉が芸術的な同点弾を突き刺す。静まり返っていたスタジアムは一気に大歓声に包まれ、長崎の攻撃はこのあと一気に加速した。このまま行けば逆点できるという雰囲気がスタジアム全体に伝播し、アディショナルタイムが4分と表示された時には更なる歓声が上がった。すると90+1分、13分前に投入された山田晃平が相手DFのパスをひっかけ、そのままドリブル。ゴール前に走りこむ東浩史を目がけてクロスを入れると、フリーの東が昨年まで在籍していた古巣相手にドラマチックな逆転ゴールを流し込んだ。敗色濃厚の試合をひっくり返した長崎はこれで6戦負け無し。2位をキープした。。
逆点を許した愛媛の石丸清隆監督は試合後の会見で「もったいない試合でした」と話した後に、「コンディション的に難しい選手が何人かいる状態だったので、なかなか早いタイムで変えるリスクは高いと思っていたので、ゲームの流れを見ながら0-0で我慢しながら、僕らの台所事情のしんどさといいますか」と付け加えている。この試合もそうだが、次節から続く連戦を考えると控え選手のコンディションも上がってこないと厳しい戦いとなりそうだ。
一方、長崎の高木琢也監督は「苦しんで勝利するということもひとつチームの自信、そして雰囲気を作るには良かったと思っています」と話している。この試合では采配がズバリと決まり、石神や山田など交替カードを切った選手が得点に繋がるプレーを見せた。控え選手の活躍でチームに勢いが出たことも大きな収穫と言えそうだ。
ところで、J2年目ながら2位という順位にいる長崎。チームだけを見れば大躍進間違いなしなのだが、この日のスタジアムの観客数は3,340人。今節行われた全てのJ2の試合を見渡してみても、長崎より観客数が少ないのは最下位の讃岐の試合のみ(2015人)。長崎は2位にしてこの観客数なのだ。ドラマティックな試合をもっと多くの人と味わってみたいものだ。
以上
2014.04.21 Reported by 植木修平
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