名古屋の台所事情が厳しいことはスポーツ新聞を読んで知っていたが、メンバー表を見て矢野貴章がサイドバックというのには驚いた。甲府の盛田剛平はプロになってからFW→DF→FWと、37歳でFWに再コンバートされているのだが、これとは話が違う急造のサイドバック。4−4−2の右センターバックに入ったハーフナーニッキ(19歳)も今年のヤマザキナビスコカップ第2節はフル出場しているが、リーグ戦は昨年の第25節で8分間の途中出場だけで初先発。まだまだ経験も少ない中で急遽チャンスがやってきた感じだろう。ただ、ヤマザキナビスコカップの第1節で甲府と名古屋は対戦しているが、このときは甲府が勝ったものの名古屋の若手の可能性の大きさを見せつけられているので、名古屋が持つ可能性は脅威だった。
甲府は昨年の8連敗の記憶が頭の奥底でチラチラ点滅する1週間でもあったが、水曜日のヤマザキナビスコカップで大卒1年目、2年目のルーキーが見せたアグレッシブなプレーがチームに自信や活力を呼び戻していた。盛田を1トップに置く3−4−2−1はいつも通りだが、中と外を使うバランスがよく、特にサイドが活動的だった。矢野とハーフナーのサイドで対面したウィングバック阿部翔平は、「(矢野がサイドバックをやっているのを)見るのは初めて。マークするのが難しいポジションを取ろうと思っていた。慣れていないんだと思うし、(矢野がサイドバックから)パスを出すイメージもなかった。今日は(盛田の動きと連携して)名古屋のセンターバックを外や手前に引き出したかった」と話した。盛田を活かした決定機の作り方としては、彼を先発で使い始めた第2、3節とはチームの重心が前になっていて、同じメンバー・同じ配置でも印象は違ってマイナーチェンジした感じ。
完成度という点ではまだまだ熟す余地があるが、リーグ戦2連敗を代償に内容を修正できた点は大きい甲府。8連敗のことを思い出していたことを、背信行為と少し恥じたくなった。
27分、CKから佐々木翔が今季の第1号をヘディングで決めて、久しぶりの先制。直後に名古屋に攻め込まれるが、GK岡大生と名古屋のFW松田力が接触して試合が止まったことで甲府は落ち着きを取り戻した。その後は名古屋タイムになっても隙を作らない守備で前半を1−0で乗り切ることに成功した。
後半、名古屋はハーフナーをベンチに下げ、MF望月嶺臣をボランチで投入。ダニルソンが、ボランチからセンターバックに下がる布陣で臨んできた。甲府は立ち上がりの時間から少し慌てているような守備もあって、ペナルティーエリア近くでFKを与えたり、ミドルシュート打たれることもあったが、GK岡が最後の砦として機能。甲府は1点差と勝点3を保持し続けるが、名古屋には田中マルクス闘莉王とケネディというすごい人がいるのでアディショナルタイムを含めた時間に1プレーでちゃぶ台をひっくり返される心配は常にしていた。
お互いに交代選手を投入していった後半の中盤。甲府の1枚目の交代カードはチーム得点王タイの石原克哉(現状は1得点の選手が4人…だけ)。評価の高まる甲府のオジサン軍団(参加資格は35歳以上)の中で背番号7・石原の運動量とキレと勘所はすばらしく、77分にはクリスティアーノのシュートのこぼれ球に詰めて行き、スライディングシュート。小糠雨がGK楢崎正剛のキャッチミスを誘ったのか、詰めた石原にゴールの神様が味方した。ここまで、取っても1点だった甲府が、公式戦10試合目にして初めて複数ゴールを挙げることに成功。この追加点で勝点3をグッと引き寄せた甲府。85分にPKを与えるもケネディが枠を外すという幸運も味方した。85分に1点差になっていれば名古屋のエンジンにもターボがかかっていたと思うが、PKを外したことで終盤の攻勢も青木亮太ら若手のガッツだけが頼り。1点差で闘莉王が上がってくればかなり怖かったけれど、2点差のままで闘莉王は上がってこなかった。
そして、小糠雨の中、久しぶりに城福浩監督がイナバウアーガッツポーズを披露(無意識に出る動きです)。連敗が続く心配は杞憂に終わったが、この日の観客数は8197人。甲府は、2月の大雪災害で予定外のキャンプを強いられて支出が増えたりするなどしており、黒字経営をする上でワールドカップ期間中にキャンプをすることが難しい現状がある。城福監督は会見で「多くの観客がスタジアムに来て支援してくれることを期待したい」とアピールした。これは現場だけの問題ではなく、クラブに関わる人すべてが取り組む問題。連敗を止めて喜んでばかりはいられない。勝てない苦しい時でも応援してくれるファン・サポーターを増やすために、クラブがどうあるべきかを問われているのではないだろうか。
ケガ人が多く台所事情が苦しい名古屋はリーグ戦4連敗となった。今年は主力選手の多くが入れ替わり、若い選手が多いなかで結果を出すという2重の難しさに直面しているが、今の我慢の時間が半年後か1年後かの結果に繋がることを感じさせながらの戦いをやりたいところ。しかし、ファン・サポーターにそれが伝わっているかどうかはわからない。若手からベテランまで選手がそれを信じて、結果を怖れ過ぎずに活力あるプレーを取り戻すことができるかどうかが当面の課題ではないだろうか。ゴールデンウィークの連戦が近付く中、名古屋に関わる全ての人の結束力が問われる。
以上
2014.04.20 Reported by 松尾潤
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