松本にとって、前節・栃木戦は今季初めて迎えた試練と言えた。３連敗だけは避けなければならない一戦だったが、試合開始６分で岩上祐三と飯田真輝が２得点。後半以降、反撃に転じた栃木をセットプレーからの１点に抑えて勝利。内容そのものは「胃が痛いゲームだった」と反町康治監督も苦笑いを浮かべる展開となったが、アウェイでの難しい試合で勝点３を得たことは事実。これを生かすも殺すも、この先の自分たち次第だ。４位に浮上して迎える今節は、５位の京都とアルウィンで激突する。

昨季、一昨季と２年連続で３位になっていることからも分かるように、京都が強豪であることは間違いない。しかし、松本はその京都にこれまでのリーグ戦では４戦して２勝２引き分けと負けがない。その意味では相性は良い、のかも知れない。
『のかも知れない』と表現するのは、今季の京都のサッカーが昨季までのスタイルとはやや様相が変わっているからだ。昨季までの京都が見せていた、サイドの狭いエリアでボールを繋ぎながら崩すサッカーはまさに“異端”であった。「他チームとは違う、すごく独特のサッカーをしていた」と大木武監督が率いていた京都のスタイルについて語るのは、中盤の潰し屋の岩間雄大。そして「今季も攻撃的だが、より個の力で崩す印象がある」と続ける。今季、京都は新たな指揮官としてバドゥ監督を迎え入れた。かつて地域リーグ時代のＡＣ長野パルセイロを指揮していたことから松本サポーターにもおなじみのブラジル人監督は、選手の自由を重視したオープンなサッカーを展開中だ。

変わらないのは、Ｊ２屈指と言えるアタッカー陣。質量ともに充実している。三平和司・山瀬功治ら既存選手に加え、大黒将志・アレッサンドロの新加入選手も期待に応える活躍を見せている。「危険な選手が多く、集中せざるを得ない。隙を作らなくても一撃で仕留める力を持っている」と前節に今季初出場を果たした飯尾和也が警戒心を隠さないように、誰もが個人で決定機まで持ち込める能力の持ち主。前節・山形戦では大黒が後半アディショナルタイムにチームを救うゴールを挙げるなど、開幕からここまで７試合６得点と好調をキープ。「オフからオンへの動きなど、フォワードの教本のような選手」と反町監督もその能力を認めるゴールゲッターの動きには注目が集まる。

逆に言えば、ボールを持たれる時間が長くなることは織り込み済み。「前線から最終ラインまでチーム全体で連動して守るのがスタイル」（村山智彦）の松本ディフェンスが、どれだけ歯車をずらすことなく耐えることが出来るかが勝負のカギを握るだろう。また攻撃面では高い位置取りをする京都の最終ラインの裏を前半からどれだけ突けるか。ジャブを執拗に繰り返すことでフィジカル勝負に持ち込むことが出来れば、試合展開は面白いものになりそうだ。

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2014.04.19 Reported by 多岐太宿