試合が動いたのは開始わずか3分のこと。左からのコーナーキック、今季初出場となった原田拓が左足で入れたボールの落下点を読み、フリーで走り込んだ藏川洋平が歩幅を合わせて、約20mの位置から右足のダイレクトボレー。最後は野口遼太の足に当たって若干コースが変わるという、GK森田耕一郎にとって難しい場面となったが、ファーのスペースを狙う形は、開幕戦でのフリーキック同様にトレーニングからイメージしていたデザインプレーの1つ。精度の高い原田のキックと、ふかさずに枠を捉えた藏川のシュート、いずれの技術の高さもさることながら、的確な判断が結んだ得点だった。
出ばなをくじかれた讃岐も、先制されて以降、決して守勢に回ったわけではない。ボールホルダーへのアプローチは激しく、攻撃に転じれば先発に復帰したアンドレアの抜け出し等、サイドで起点を作って熊本陣内に攻め込む。ただ、前半は風下だった影響もあって我那覇和樹や高橋泰を狙ったフィードが戻され、高い位置ではポイントを作れなかった。また「遊びのパスというか、相手を動かすパスが少ない」と高橋が振り返った通り、タメを作っての押し上げができずに攻撃は単発で、前半のシュートは2本に終わっている。一方、熊本も讃岐の早いチェックを受けて完全に主導権を握るには至らず、16分の澤田崇の右足シュートなど決定機は作ったものの、追加点は奪えない。
後半に入ると風向きが逆になったこともあり、徐々に讃岐が押し込み始める。熊本にとってはミスも出やすくなる状況で、そのまま押し込まれていたならまた違った展開になった可能性もあった。しかし、悪い流れになりかけた時間帯にピッチに落ち着きをもたらしたのが、先制点に絡んだ原田と藏川、そして岡本賢明ら経験豊富な選手達である。特に岡本は、「悪い流れの時にどうやって自分たちの流れに持っていくか」、「マイボールの時間を長く」という意識で局面に顔を出し、ボールを納めてリズムを作った。そうした中、 58分には早いリスタートのフリーキックから養父雄仁が左へ展開。 GK森田と DFラインの間を狙った片山奨典の完璧なクロスを仲間隼斗が頭で沈めて2−0。これで流れを取り戻した熊本は、 80分に藏川の自陣からの浮き球に抜け出した岡本が左足で落ち着いて流し込み、さらに 89分には養父の縦パスを受けた仲間が見事な切り返しから左足でこの日2点目を決め、4-0と讃岐を突き放した。
讃岐は0-2とされてから高橋に変えてアラン、その後アンドレアから関原凌河、山本翔平から持留新作と立て続けにカードを切って反撃に出たが、得点はアディショナルタイムの我那覇の1点に留まり、これで開幕から7連敗となった。確かに攻撃では、個のキャラクターを生かしてチャンスも作れており、フィニッシュやつなぎの精度をより高めることも課題の1つだろう。だが中盤で起点ができずに2トップが落ちて来ざるをえず、ペナルティエリア付近でプレーする場面が少なかったのも気になるところ。ボールへの寄せは非常にアグレッシブで、1人に対して2人、3人と囲い込む場面は多かったものの、そこで外されてからのポジション修正を含めた切り替えや球際の勝負では熊本の後手を踏んだ。攻撃面の強みを生かすためにも、守備を修正して勝点を積み上げたい。
一方、今季初の連勝となった熊本は、試合前日に負傷した畑実の欠場を受けてJリーグ初出場を果たしたGK金井大樹をDF陣が盛りたて、本職のセンターバックとして先発に復帰した園田拓也が身体を張ったカバーリングやインターセプトを繰り返すなど、「我々の大きな武器になる」と小野剛監督が話すチームの一体感を改めて示したと言っていい。中堅からベテランが落ち着かせる中で澤田や仲間が躍動し、2年目の藤本大も公式戦初出場、ファビオが今季ホーム初出場と、「誰が出ても遜色ないプレーができている」と原田が話すように、決して層が厚くない中でも全体的な底上げができていることをうかがわせた。結果として戦績を五分に戻して順位も上げたが、次節以降も山形、長崎と厳しい戦いが続く。それでも、前節、今節と継続して表現できたハードワークをベースに総力でぶつかれば、必ず道は拓ける。目指すところは、もっと上だ。
以上
2014.04.14 Reported by 井芹貴志
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