これほどに熱くなれなかった北関東ダービーは久しぶりだ。群馬の選手たちは必死に走ってはいたが、メッセージが伝わってこない。プレーの端々に見え隠れした弱気な姿勢。果敢にチャレンジし、限界まで戦い抜いて敗れたのであれば納得がいく。秋葉忠宏監督は「前半、ふわっと入ってしまった」と話したが、チームとしてダービーの意味を理解していたのか。この日の群馬の戦いは、あきらかに「名ばかりダービー」だった。

スタートアップは問題がなかった。負傷しているエース平繁龍一を２試合連続で欠いた群馬はロビーニョと小林竜樹の２トップでゲームに臨んだ。14分には前線のコンビネーションで抜け出したロビーニョのシュートがクロスバーを叩くなど迫力ある攻撃をみせていた。だがそれが続かなかった。守備陣が、水戸・三島康平、吉田眞紀人のツインタワーへの対応に苦慮。中盤でのセカンド争いも劣勢となり、リズムを失っていく。

失点は、三島へのマークのズレが要因となった。21分、水戸が左サイドからアーリークロスを放り込む。群馬の守備陣は、ファーへと流れた三島のマークを外してしまう。「三島が自分と瀬川（SB）との間にふくらんで入ってきてマークがあいまいになった」（小柳逹司）。そして三島の折り返しを、後列から走り込んだ小澤司に決められてゴールを許す。群馬は、水戸が狙っていた形にハメられた。

１点ビハインドとなった群馬だがスイッチは一向に入らなかった。守備ブロックを形成する水戸に対して最終ラインでボールを回したものの、各駅停車のパス、イージーなミスが目立ちボールを前へ運ぶことができない。前半終了間際には、FKのトリックプレーでもたつき、遅延行為で加藤弘堅がイエローカード。覇気のない戦いにスタンドからはため息が漏れた。

群馬は後半、坂井洋平、宮崎泰右を投入しリズムを変えにかかったが、劇的な化学反応は生まれなかった。足元のパスに執着した前半に対して、後半は縦パスを入れたため若干の変化はみられたが、水戸守備網を破壊するアクションはなく時間が経過。最後まで水戸のバイタルを脅かすことなくゲームを終えた。「全体のリズムが整わずに前を向いてボールを受けるシーンが作れなかった」（ロビーニョ）。水戸の出来が決して良くなかっただけに、群馬は守備網を突破しなければいけなかった。

水戸は小澤司が挙げた虎の子の１点を、チーム一体となった守備で守り抜き５試合ぶりの勝利を決めた。柱谷監督はこの日、スタメンを大幅に入れ替えてダービーに臨んだ。吉田、小澤、尾本敬、広瀬陸斗らを先発で起用された選手は、勝利という戦果を得るためにタフに戦い抜いた。内容は改善の余地が残されているが、球際の部分で群馬を上回ったのは事実だ。尾本は「ダービーなので内容よりも結果を取りにいった。この勝利をきっかけにしてチームを成長させたい」と話した。

１点を先制されたあと何もできずに敗れた群馬は、対水戸戦９試合連続勝ちなし。４節栃木戦の敗戦に続いて今季の北関東ダービー２連敗で、タイトルがいきなり遠ざかった。昨季のダービーは１分３敗で、秋葉体制２年目でのトータル成績は１分５敗。北関東制覇を公言しながら、この成績では言い訳できない。開幕直前に志半ばで退任した植木繁晴元代表取締役GMが今季のチームに対して残した言葉は「負けを悔しがれ」だった。悔しさを力に変換できなければ屈辱を味わい続けるだけだ。今季最多の6,407人が訪れたダービーで、不甲斐ない戦いを演じたチームの責任は軽くない。

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2014.04.14 Reported by 伊藤寿学