「力負けです」。それだけ言って取材エリアを後にした千葉の谷澤達也のその一言に、今節の千葉の姿が集約されていた。湘南は6−0というスコア、29本というシュート数など一目でわかる数字以上の差で千葉を攻守両面で圧倒し、クラブの連勝記録を7に更新した。
千葉は出場停止の大岩一貴に代わってキム ヒョヌンが、そして出場停止明けの井出遥也が前節のスタメンの田中佑昌に代わってスタメン。湘南も前節のスタメンから2人(右ウイングバックが藤田征也から宇佐美宏和、3トップの一角が岡田翔平から大槻周平)代わったが、もともと今季スタメンが多かった宇佐美と大槻のポジションは右サイド。千葉のストロングポイントの左サイドへの対応も考えると、彼らがベストだったのだろうか。
湘南のストロングポイントも左サイドだった。最初の決定機である4分のウェリントンのシュートは右サイドからの崩しだったが、先制点は左サイドから。11分、丸山祐市からグラウンダーの縦パスが武富孝介に入り、武富からパスを受けた菊池大介がドリブルで仕掛けると、その外側を三竿雄斗がオーバーラップ。三竿のクロスに試合後に「集中して試合に入れば勝てる」と話したウェリントンが合わせたゴールだった。28分の追加点も左サイドの菊池の突破からで、武富のクロスにファーサイドで宇佐美がヘディングで合わせた。
湘南の2点目のシーンで菊池の突破を許した形の千葉の天野貴史は「(町田)也真人が見えたからつなごうと思ったら、それが足に当たって相手ボールになってしまった。つなごうという意識が少し強すぎたかなと思います」と振り返ったが、千葉は近くの選手にパスをつなぐべきところ、湘南の背後を狙うべきところといった状況に応じての攻めができなかった。さらに、湘南のプレスをかわしてパスをつなごうとしても止まっている足元へのパスが多いため狙われてボールを奪われ、ロングボールを入れるところでは前線で選手が3、4人横並びになって中盤にこぼれてくるボールを拾えなかったのが目についた。
それでも31分、この試合の千葉の唯一の決定機は中村太亮のCKからのケンペスのヘディングシュートだったが、これを湘南のGK秋元陽太が弾くもゴールインしそうなところでウェリントンがヘディングでクリア。もちろん力の差は歴然としていたが、千葉がこの決定機をモノにしてスコアを1−2にしていたら、試合展開は少し違ったかもしれない。
前線から連動した激しいプレスでボールを奪った瞬間から、選手全員がゴールを狙って怒涛の攻めを見せる湘南の姿は迫力満点で爽快だった。昔から攻撃的な『湘南スタイル』を貫いているだけにこんなことを書くと怒られそうだが、選手が前の選手をどんどん追い越してゴール前に湧いてくるような攻撃は、イビチャ・オシム監督時代の千葉を思い出させた。だが、ゴール前へなだれこむパワーとスピードは湘南が上。スコアは4−0だった38分、大槻のヘディングシュートがクロスバーの上に外れると曹貴裁監督がとても悔しがった姿が象徴するように、チーム全体が最後までゴールに貪欲な姿勢を貫いて圧勝した。
スペースへパスを出し、そこに選手が走りこんでパスをつないでいくスピーディーな湘南の攻撃に千葉は後追いの守備になることが多かった。攻守両面での出足の鋭さや球際での激しさという個の部分も、攻守の連動性という組織の部分も完敗で、クラブ最多記録タイの6失点(J2リーグではこれまで4失点が最多)。だが、一番負けていたのは精神面で、32分、34分と短時間での連続失点の場面は、精神的な弱さから集中力欠如や技術ミスが出て、球際で体を張って湘南の攻撃をしっかりとはね返せなかったように思う。動きながら味方へ確実にパスをつなぎ、労を惜しまない動きで相手ボールを奪う。そういった基本的なプレーの積み重ねで勝利を積み重ねている湘南から千葉が学ぶべきことは多い。
以上
2014.04.14 Reported by 赤沼圭子
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