清水にとっては各ポジションの選手が自分の仕事をしっかりと遂行し、アイスタで待望のリーグ戦今季初勝利。今後に向けた明るい兆しの中、試合後の“勝ちロコ”も明るい雰囲気で行われ、この瞬間を待ち続けたサポーターも最高の気分で帰路につくことができたことだろう。
清水は最近の良い流れを生かすために前節・甲府戦とまったく同じ布陣で臨んだのに対して、大宮は「少しチームに考え方の変化を与えた」(大熊清監督)という中でボランチを2人とも変更。片岡洋介のケガもあって、加入2試合目の増田誓志を初先発させ、相棒にはリーグ戦今季初出場の横山知伸を起用。また前節で右肩を亜脱臼したGK北野貴之に代わって、清水慶記がゴールマウスを守った。
立ち上がりは、どちらもじっくりと自分たちのリズムを作ろうとする姿勢で入ったため、比較的静かな展開。お互いにDFラインから丁寧にパスをつなぎ、守備のブロックを整えて守ったため、ボールが両ゴール前を派手に行き来する展開にはならなかった。
大宮としても、そこまでは「守備のためにも自分たちがボールを持つ時間帯を増やしたい」(大熊監督)と増田を起用した狙い通り。清水がDFラインにあまりプレッシャーを掛けてこなかったこともあって、後ろではボールを保持することができた。だが、そこから効果的な縦パスをなかなか通せなかったことが、今後の課題となる部分。「ズラタンも長谷川もサイドに流れてしまい、増田の不慣れさもあった。増田との距離感が最初は良かったが、なかなか増田が触れないところが前半の半ばから続いてしまった」と大熊監督は振り返り、中盤で増田を経由して縦パスを通したり、サイドチェンジしたりという思惑があったが、それは思うように機能していなかった。
一方、清水は20分あたりから徐々にリズムが出始め、速いテンポで小気味よくパスがつながる場面が増えてきた。そこからは、ポゼッションでは五分五分ながらもボールを相手ゴール前まで運ぶという面で上回っていたのは清水。とくに左サイドで大前元紀が起点を作り、左サイドバックの吉田豊が裏に飛び出すというパターンが効果的だった。前半のシュート数はどちらも2本ずつと少なかったが、惜しい形を多く作れていたのは明らかに清水のほうで、とくにアディショナルタイムにノヴァコヴィッチがヘディングを左ポストに当てたシーンは、決めなければいけない場面だった。
清水は、前節まで公式戦6試合連続で前半のうちに点が取れていたが、この試合は0-0のまま前半が終了。このところ後半に流れが悪くなる試合が多く、大宮は後半の得点が多いこともあって、ハーフタイムでは一抹の不安が感じられた。
しかし、それは杞憂に終わる。後半は、アフシン・ゴトビ監督にハッパをかけられた通り清水の選手たちは攻守ともに前への姿勢を強め、開始3分に吉田の裏へのパスから大前が右に抜け出す。その折り返しをニアでつぶれた長沢駿がつなぎ、ノヴァコヴィッチが今度こそとばかりに豪快なシュートを突き刺して、待望の先制点が決まる。ノヴァコヴィッチ自身にとっても、リーグ戦では開幕戦以来のゴールを古巣相手に決めることができ、非常に価値ある1点だった。
これで試合展開は前半に比べてオープンになり、清水はさらに得点機を増やしていく。連続ゴール記録を伸ばしたい長沢も、ここまでPK以外のゴールがない大前も、貪欲にゴールを狙い続ける。後半9分に長沢の絶妙な左クロスから大前がシュートした場面などビッグチャンスも何度か作ったが、先制後は決めきれない状況が続いた。
もちろん大宮のほうも、後半は点を取りにいく姿勢を強め、清水の中盤にスペースができ始めた中でゴール前のシーンを増やしていく。19分のカウンターからズラタンのヘッド、26分の左CKからのチャンスなど決定機も作ったが、なかなか決めきれないのは清水と同様。後半35分から古巣・清水との戦いに加わったラドンチッチも、39分に日本代表候補・今井智基の右クロスから決定的なヘディングシュートを放ったが、これも右に外れてしまう。
終盤、大宮が先に同点に追いつけば、試合はどうなるかわからない雰囲気もあったが、清水は最近の試合で見え始めてきた粘り強い守備を発揮し、さらにこれまでと違って、守るだけでなくボールをキープする時間も攻める時間も作ったのは大きな収穫。とくにその意味で大きな働きを見せたのは長沢で、前線でサポートがいない中でも味方の縦パスを身体を張ってキープし、カウンターにつなげる場面やDFラインが押し上げられる時間を作った。
それが追加点として実ったのは、土壇場のアディショナルタイム。長沢の頑張りから交代出場(後半45分〜)の村田和哉にパスがつながり、そこから一気のカウンター。村田がスピードで右サイドを突破してクロスを送ると、ファーサイドにフリーで待っていたのは大前。1トラップから豪快な右足シュートを決めて、勝利を決定づけた。
ケガ上がりの村田がようやく彼らしい大仕事を見せ、大前も待望の一発。非常に価値ある追加点となった。また、長沢は今節で連続ゴール記録は途絶えたが、DFを背負ったボールキープや決定的な崩しのパスなどで大きな貢献を見せ、点を取る以外の仕事もきっちりとやれることを証明した。
一方、これで2試合連続無得点で連敗となった大宮は、ボールポゼッションという面では収穫があったが、それが安定した結果に結びつくまでには、まだ時間がかかりそうな気配。その意味では、大熊監督の舵取りや選手個々の頑張りが注目されるところだ。
それに対して清水は、これで公式戦3試合連続で完封勝利。守備面だけでなく、攻撃でもやるべき人がきっちりと仕事を果たし、非常に収穫の多い試合となった。
以上
2014.04.13 Reported by 前島芳雄
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