少々不格好ではあったかもしれない。終盤の80分には橋本拳人が2枚目の警告で退場。それでもピッチに残った10人で残り10分をしのぎ、熊本は今シーズン初めての完封勝利をおさめた。ゲームの流れが細かく途切れる展開にあっても集中を切らさなかった点からは、チームとしてのメンタルが逞しくなったことが感じられたが、勝因はそれだけではない。小野剛監督も「泥臭く何回も、ミスを誘っていくようなプレーがジャブのようになっていった」と話したように、最初から最後まで横浜FCにプレッシャーをかけ続けたことで流れをつかんだ。ボールへの執拗なアプローチや攻守の切り替えで優位に立つという、言わば原点に立ち返ることによって手にした5試合ぶりの今季2勝目は、あらためて自信を深める契機になったと言える。
ただ、だからこそ次の一戦の意味はより大きなものになる。今節迎えるのは、6試合を終えて未だ勝利のないカマタマーレ讃岐。讃岐は6連敗と苦しい状況にあるが、小野監督は次のように話す。「勝っていない相手とやるほど難しいものはない。負けが続くと重苦しい空気にもなってきますが、どこかで開き直るサイクルが必ずある。何かしらの変化を加えてくることは考えておかないといけないし、相当気を引き締めないといけない」「勝っていないということは、勝利への渇望がどこよりも強いということ」。
リーグ戦では今回が初めての対戦(天皇杯では2006年に対戦)だが、昨シーズンは長崎、その前には松本山雅、さらに遡れば富山など、熊本は過去、初対戦の相手に苦杯を舐めてきた。また、北野誠監督をはじめ、上村健一ヘッドコーチ、FWの高橋泰と木島良輔、MF山本翔平に岡村和哉と、讃岐にはかつて熊本に籍を置いた選手、スタッフがとくに多い。所縁のある地で連敗を止め上昇気流に乗りたいという思いは強いはずで、少しでも隙があればそうした勢いに飲み込まれないとも限らない。42分の1とは言え、あらゆる要素が絡んで非常に難しい一戦となることは覚悟しておかなければならないだろう。
その讃岐、前節は終盤にリスタートから1点を失って栃木に敗れたが、シュート数にも表れている通り内容では決してひけを取っておらず、むしろ優位に進めていたと言っていい。この試合では栃木対策として左に持留新作、右に小澤雄希を配し、立ち上がりから押し込んだ。また3節大分戦では岡村を最終ラインに下げる3バックで相手の両サイドを抑えるなど、特に前半は主導権を握っている。熊本時代からそうだったように、北野監督は相手の特徴を踏まえて策を練ってくることもあり、今節は先発、控えとも変えてくる可能性は高い。そんな中でも、熊本でも実績を残した高橋と我那覇和樹の2トップはやはり強力。前節の試合後、北野監督は「もっと思いきり良く、自信を持ってシュートをして欲しい」と話しているが、細かい部分での精度とフィニッシュに持ち込む判断がJリーグ初勝利への鍵となる。
迎える熊本としては、前節やれたことを継続した上で、相手のストロングポイントをいかに抑えるかが求められる。高橋と我那覇の関係をうまく断ち、いい状態でボールを受けさせないこと、また熊本在籍時からポジションを変え、そのセンスが花開いた岡村の展開力にも十分なケアが必要。前節は出場していないが、アンドレアの突破やクロスも讃岐の大きな武器で、前線のストライカーが高い決定力を持っているからこそ、そこに至る前の段階でしっかりと芽を潰さなくてはならない。今節は橋本の出場停止を受けてボランチの組み合わせが変わるが、「誰が出ても同じサッカーができるように」(小野監督)続けてきたトレーニングの成果を発揮したいところ。今週のトレーニングでテーマの1つにしていた「シュートチャンスを逃さない」ことも意識して、全員のハードワークによって主導権を握れるかどうかがポイントとなる。
51試合を戦った09年、結果として厳しいシーズンだったけれど、北野監督が熊本で見せてくれたのは、攻撃的で挑戦的で、見て楽しいサッカーだった。あれから5年の月日が流れて選手の多くは入れ替わったが、今の熊本はその延長線上にある。
「時間が経って、チームとしても個人としても“こうなったよ”ってところを見せたいけど、向こうもそういう気持ちでくるはず。そのパワーに負けないようにしたい」と矢野大輔は言う。
歴史を越えて、次のページを開こう。
以上
2014.04.12 Reported by 井芹貴志
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第7節 熊本 vs 讃岐】プレビュー:熊本の歴史を作った顔ぶれが揃う讃岐との初対戦。連勝への鍵は、前節からの継続。(14.04.13)
- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- 2024J2昇格プレーオフ
- J3・JFL入れ替え戦
- bluelock2024
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off