前節の讃岐戦（１○０）で連敗を阻止した栃木と、札幌（１●０）に敗れて今季初の連敗を喫してしまった松本が、連勝と連敗回避を懸けてこの一戦に臨む。

アウェイで勝点３を得た栃木だが、前々節の磐田戦（０●２）に引き続き、試合内容は芳しくなかった。阪倉トチギは若いチームであり、結果が発展途上のチームに自信を芽生えさせ、成長を促進させる側面がある。その一方で、結果ばかりを追求してしまうと現状維持に陥り、いつしか成長曲線は右肩下がりになる危うさも秘める。ホームゆえに結果を残すことが大前提なのだが、ここ２試合のモヤモヤを解消する意味では内容を伴った勝点３が求められる。

攻撃が単調になってしまっていることが、直近の試合内容が乏しい一因として挙げられる。瀬沼優司と大久保哲哉のツインタワーを使うのは悪くない。ただ、ロングボールを入れるにもして直線的になってしまい、相手DFにとって対応しやすいボールばかりを供給してしまっている。いくら空中戦に長けた２人がいるとはいえ、あまりにも変化と工夫がなく、驚きもないから相手の脅威となりえていない。讃岐戦の「最初の10分は蹴るプラン」（近藤祐介）だったそうだが、その後もロングボールへの依存度が減らなかったことで自らの首を締めてしまった。

その反省を今節に活かすならば、「ゆっくりボールを回す時と、（縦に速く）仕掛ける時のメリハリを付ける必要がある」（近藤）。特に松本は肉弾戦が売りで、キック＆ラッシュは専売特許。それに付き合ってしまうと、極端に勝率が下がってしまう。フィジカルが物を言うサッカーに持ち込みたい松本に対し、「なるべく下（地上戦）でやれるか」（近藤）がポイントになるが、栃木もポゼッションが得意なわけではない。ただ、そこは現在ブラッシュアップしている段階で、チームとして１ランク上に行くには避けては通れない。

松本と対戦した前節の札幌は下で戦う上手さを見せた。サイドバックからFWにクサビを打ち込み、FWが収めてサイドへ展開することで、松本のウイングバックの背後を取っていた。栃木も今週のトレーニングで、サイドバックからの組み立てを何度も確認した。前線の高さを利用しつつ、どれだけ地上戦で戦えるか。上と下の２方向から攻撃ができれば、自ずと選択肢は増える。そう考えると、松本戦は今後に向けた試金石となるはずだ。

対する松本は、自分達の間合いに引き込みたいはず。そのためには、前節の敗戦から学ぶ必要があり、自分達がリズムを掌握している時間帯に得点することが肝要になるだろう。いくらフィジカルに自信があるとはいえ、90分押し切ることは容易ではない。序盤から猛攻を仕掛け、先手を奪い、優位に試合を運びたいところだ。

チームから個人に目を向けると、得点ランキングで首位に立っている“黄色のジエゴ・コスタ”瀬沼と、“信州のルーニー”船山貴之（元栃木）の直接対決が興味深い。双方とも６試合で５ゴールをマークし、ここまでエースとしての役割を全うしている。瀬沼も船山も得点パターンは多彩だが、瀬沼は上背を利したヘディングが持ち味で、船山は抜け目のなさを存分に発揮できるカウンターからのゴールが特徴。瀬沼は「今季最低のパフォーマンスだった。起点になれなかったし、なにより相手にとって危険な存在になっていなかった」と前節の自分自身へのリベンジに燃えており、船山は志半ばで去った古巣・栃木には負けられないとの思いが強いはず。どちらもこの一戦に挑むモチベーションは十分だと見ていいだろう。

果たして、ライバルを突き放し、チームを勝利に導くゴールを決めるのは瀬沼なのか、それとも船山なのか。両エースの一挙一動から片時も目が離せない。

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2014.04.11 Reported by 大塚秀毅