開始6分、直接フリーキックを決めた宮阪政樹がチームメートにもみくちゃにされながら向かった先は山形ベンチ前。コイントスでコートチェンジになったことで決めたのはベンチ側のゴール。フィールドプレーヤー10人でのゆりかごダンスが実現した。祝う相手は、前日に初孫が生まれたばかりの石崎信弘監督。「一緒にやりましょう」と手で合図を送る選手もいたが、黒いベンチコートを着た石崎監督は腕組みしたまま、距離を置いてそこに加わることはなかった。歓喜の集合が解かれ、キックオフの陣形に戻ろうとするとき、石崎監督が宮阪を呼び止めた。「最初怒られるのかなと思った(笑)」とやや緊張していた宮阪に伝えたのは、「相手の後ろの3枚のところに誰が行くのか、もっとファーストディフェンダーを強く行かせるのかとか、そういうところでした」(宮阪)と守備面の指摘だった。「ボランチのポジション、特にフランクと宮阪のポジションが前半すごく気になってた」(石崎監督)ためだった。
先制点のもうひとりの立役者は1トップの川西翔太。動き出しで裏へ引っ張り、もう一度裏へ引っ張り、今度は下りて間で受ける。「フランクからもらったときにゴールが見えた」とターンからドリブルを開始したところでプレスバックしてきた渡邊一仁に背後から倒された。この流れから宮阪の直接フリーキックで先制。最高の立ち上がりに見えたが、このあと、石崎監督の不安が的中する。
「セットプレー2本で相手に主導権を握られたなというゲーム」と語った愛媛・河原和寿も「それまでの前半は特にスペースを利用した、幅をうまく使ったボール回しは僕らのほうができてた」との印象を持っている。潰し合うゾーンはミドルサードから山形エンド寄りへ徐々に移っていた。主にディフェンスラインを使ってサイドを変えていた山形に対し、愛媛のサイドチェンジは中盤を積極的に経由する。特に、左から右へのサイドチェンジでボールを受けた三原向平は、中にカットインしながらミドルシュートを狙ったり、動き出す選手にパスを送るなど、山形の守備のズレを巧妙に突いていた。ボール保持を強めるなかで、23分には左サイドでオーバーラップした浦田延尚から原川力を経由し、右サイドで三原がフリーでシュート態勢に入ったり、40分にはセカンドボールに反応した原川がミドルシュートをクロスバーに当てている。オフサイドになったものの、右サイドからカットインして堀米勇輝が上げたクロスに河原が飛び込んだ15分のシーンも得点の匂いを十分に感じさせるものだった。
前半に危険なシュートをいくつか浴びたこともそうだが、高いボール支配率を維持してきた山形にとって、ここまで長い時間を守備に回されることは今シーズンなかったこと。ボールを奪い、前線に攻め残る川西にボールが渡ってもサポートに時間がかかることでマイボールの時間を増やせず、シュートまで持ち込む回数を重ねることもできなかった。伊東俊の負傷退場するアクシデントは山崎雅人の投入で乗り切ったが、山田拓巳は「そんなに押し込まれるというわけじゃないんですけど、持たれる時間が多かったので少し後手を踏んで、特に前半は苦しかった」と振り返った。
ハーフタイムをはさみ、山形はアグレッシブに前からのプレッシングを開始。「後半はボールを奪いにいくときは奪いにいく、あるいはブロックつくるときはしっかりブロックをつくって守るというところがメリハリをつけてうまくできたんじゃないかなと思います」(石崎監督)と守備も修正し、押し込んだ勢いで得た64分のコーナーキックで、宮阪のキックから當間建文が移籍後初ゴールを決めてリードを2点に広げた。愛媛は後半開始からキム ミンジェに代えてハン ヒフンを投入し、失点前には堀米から表原玄太にスイッチするなど流れを変えようと試みたが、「前へ前へと行く意識が強くありすぎて、マネジメントで言うと最後は若干幼稚なサッカーをしたなという印象です」(石丸清隆監督)とすでに守備の修正を済ませた山形を崩せず、後半の決定機はゼロ。コイントスに勝ち風上を選択した直後に風向きが変わり、後半に入るとまた変わって終始風下に立たされたことや、後半途中から慣れない雪に見舞われるなどのアンラッキーはあったが、「今日は相手に脅威を与えたかというと、ただただ安全なところにボールをつないでいるという印象なので、もっともっとゴール前のクオリティを上げていかないと相手は怖くないなという印象です」と石丸監督も振り返る敗戦となった。
「今日は試合に勝つというのがすごく大きなところで、内容はこれからビデオ見たりとのはありますけど、しっかり勝点3を取れた、勝ちながら修正していけるというのはいい部分だと思います」。石川竜也が淡々としたなかにほんのりと安堵が響く口調で答えた。石崎監督も常日頃から、勝てない時期が続くことによってチームが崩れていく怖さを口にしている。課題が山積する山形の状況は変わっていない。この1勝が課題解消のきっかけになるかどうかは、今後次第ということになる。
以上
2014.04.06 Reported by 佐藤円
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