試合前。メンバー表に目を通し、かなり焦ったのは筆者だけだろうか・・・。平繁龍一が負傷、瀬川和樹と加藤弘堅が発熱によりベンチ外。この試合のプレビューでポイントに挙げた群馬の2選手の出場がなくなり、試合前にバタバタと新たな争点を探すことになった・・・。

古巣との一戦となった群馬・黄 誠秀の話題は最後に。

まずはゲーム全体を振り返りたい。この試合、『マッチアップ』という点で最も際立ったのは両監督の采配だったのではないか。
この試合、秋葉忠宏監督は今季初めて試合開始から[4-4-2]を採用（※これにはホーム側の報道陣がかなり混乱させられた・・・）。最終ラインは右から夛田凌輔、クォン ハンジン、乾 大知、小柳達司。ダブルボランチに黄 誠秀と坂井洋平。中盤右サイドに小林竜樹、同左に永田亮太。2トップに野崎桂太とダニエル ロビーニョという並びとなった。ただし、この4バックはアクシデントによるものではなく、入念な“策略”だったようだ。ベテランGK・北 一真は「今週は4バックでやるということでやってきた」と語る。「磐田が1トップということもあり、3バックよりも4バックでしっかり潰そうと。そこはある程度いけたと思う。それと、DFラインでよりつなぎたいということもあり、4バックでと。磐田の前の3枚追って来てもはまらないように」（同選手）。

磐田にとっては群馬の4バックは想定外。ホーム側の報道陣と共に、ピッチ上の選手たちも少なからず混乱していたようだ。「ある程度3バックを想定していたので、（守備面で）なかなかはめきれなかった」と語るのは中盤の山田大記。最終ラインの藤田義明も前半に関しては「相手にちょっと自由にやらせ過ぎた」と悔やむ。前田遼一のシュートなどの決定機もあったが、守備面でリズムを掴みきれなかったこともあり、膠着した試合展開を打開するまでには至らず。前半を0-0で折り返すことになった。
しかし、ずるずると後半に入ることはなかった。シャムスカ監督はハーフタイムに「もっと厳しくマークに行こう！」と指示。プレッシャーのかけ方を整理し、後半開始から前半より強い圧力をかけた。この采配がいきなり結果につながることになる。
54分。最終ラインでボールを持った群馬に対し、ペク ソンドン（途中出場）、前田遼一、ポポが激しいチェイシングを見せ、最後はポポがFKを獲得。これをポポが自らキック。ニアサイドでフリーになった前田に合わせることができなかったが、強烈なキックの勢いは衰えずそのままファーサイドへ。「前田選手に合わせられると思い、ポジションをニアサイドに寄せていた」と悔やむ群馬・北の脇をすり抜け、ゴールに入った。加入後初得点となった背番号7は「背の高いGKでしたし、低くて速いボールを蹴ろうと思っていた」とこの場面を振り返る。76分にはペクの今季初ゴールが決まり、2-0。そのまま最後まで主導権を握り、今季2度目の連勝をマークした。

一方、群馬としては磐田が混乱していた前半に勝機を見出したかった。試合後、秋葉監督は「磐田まで来ていただいたサポーターには本当にみっともない試合を見せてしまった。『情けない』の一言」とイラ立ちを隠さなかった。さらに「勇気がなかった、自分たちのやろうとすることをしない、オドオドしている、前にボールをつけない。話にならなかった」と怒りが収まらない。主力3選手を欠いた中でけして悪い内容ではなく、守備にウエイトを置いていたわけでもない。だが、磐田に脅威を与え、勝利という結果を残すためには指揮官の言う“勇気”がさらに必要だった。結果的にシュート数は磐田の『16』を大きく下回る『8』。敵地でアグレッシブな姿勢を見せることができず、完敗だった。

最後に、10年から12年まで在籍した磐田との対戦となった群馬・黄 誠秀について。試合後は敗戦を悔やみつつも、「本当に最高の雰囲気でプレーさせてもらった。本当にありがたいこと」と古巣との対戦を振り返った。スタジアムでは磐田サポーターからも大きな拍手を浴び、「ジュビロ時代は全くチームに貢献できず本当に申し訳なかったけど、多くのサポーターのみなさんが温かく迎えてくれた。本当に感謝している」と頭を下げた。この試合では負傷離脱の平繁に代わり、加入後初めてキャプテンマークを巻いてピッチに立った。勝利はならなかったが、多くの磐田サポーターに成長した姿を見せることはできたのではないだろうか。

以上

2014.04.06 Reported by 南間健治