結果的に最少得点差となったものの、度重なる本間幸司のスーパーセーブがなければ、大差がついていたことだろう。それほど内容では大きな開きのあったゲームであった。千葉にとっては会心の試合であり、水戸にとっては二度と繰り返しはいけない試合。両者のパフォーマンスの明暗が大きな差を生みだすこととなった。

「今日は千葉の攻撃が上手だった。うまくやられた」と水戸の柱谷哲二監督が認めるように、多彩な千葉の攻撃が水戸を翻弄した。前節から先発起用されている兵働昭弘を中心に流麗なパスワークを見せて水戸を揺さぶりながらゴールに襲いかかった。また、守備においても素早い切り替えを見せて前線から厳しいプレスをかけて水戸にビルドアップを許さず。強烈な圧力で水戸を押し込み、ほぼ一方的な展開に持ち込んだ。そして20分、中央からのFKを兵働昭弘がゴール右隅に沈め、待望の先制点を挙げる。40分に前がかりとなった隙を突かれてカウンターから同点とされるものの、後半開始早々に左サイドからのクロスのこぼれ球を谷澤達也が豪快なボレーシュートをゴールに突き刺し、勝ち越しに成功。その後も攻め手を緩めず、再三決定機を築いたが、本間の好セーブに防がれ、追加点を奪うことができず。終了間際にPKを献上するアクシデントも守護神の岡本昌弘がはじき出し、勝利をもぎ取った。

開幕戦で敗れるなど、好スタートを切ることのできなかった千葉だが、前節から調子は上向きつつあるようだ。この日も万全な戦いで勝点3を手にすることができた。今季初の連勝を挙げ、いよいよ次節は6戦全勝の湘南とあいまみえる。真価を問われる一戦となることは間違いない。そこで勝つことができれば、本当の上昇気流に乗ることができるだろう。

対照的に水戸はいいところを出せぬまま90分を終えることとなった。勢いよく攻め込んでくる千葉に対し、水戸はあまりにも臆病だった。「腰が引けていた」という本間の言葉がふさわしい戦いぶりであった。水戸らしいアグレッシブなプレスをかけることができず、DFラインを下げてしまい、中盤を支配されることに。ボールを奪ってからも相手のプレスを恐れるあまりミスを連発。2失点はいずれもミス絡みで与えたものであり、「自分たちで隙を作る場面が多すぎた」（本間）ことが最大の敗因と言えるだろう。試合に負けたことよりも、力を出し切れなかったことが悔やまれるゲームである。

予兆はあった。今週、試合2日前の紅白戦において、あまりにも集中を欠くミスが多く、柱谷監督は「こんなんで勝てるか！」と怒鳴り、首に下げていたストップウォッチを叩きつけて、グラウンドを去ってしまったのだ。チーム全体に緊張感が足りていないことを柱谷監督は感じていたのだろう。刺激を与えてチームの雰囲気を変えるために取った行動だったと思われるが、「紅白戦の内容がそのまま出た」と柱谷監督が振り返るように、チームの雰囲気に変化は見られなかった。だからこそ、指揮官は試合後「メンタルを変えないとこのままズルズル行ってしまう気がする」と唇を噛みしめながら危機感を募らせた。開幕2連勝を挙げながらも、その後は4戦未勝利。悪い流れを断ち切れずにいる。
どんなにもがいても誰かが助けてくれるわけではない。自分たちの手で現状を打破しなければならないのだ。このまま低迷するのか。それとも、浮上のきっかけをつかむのか。すべては自分たち次第。次節群馬との北関東ダービーは水戸にとっての正念場となる。

以上

2014.04.06 Reported by 佐藤拓也