セットプレーからの失点が多い甲府は危機感を持って試合に臨んでいたはず。開始2分で与えたCK、レアンドロ ドミンゲスが蹴ったボールをクリスティアーノがヘッドでクリアしたが、拾われたボールから最後はレアンドロにパンチのあるシュートを決められてしまう。公式記録では3分の失点。1トップに工藤壮人、2シャドーにレアンドロ ドミンゲスとレアンドロを並べる――彼らを休ませてターンオーバーをしたとしてもすごい選手がいるのに、それをやってこない――柏を相手に3分で1点取られれば、甲府にとってどんなにシンドイ試合になるのか。選手入場のときに感じていた高揚感が萎んでしまいそうな失点に、スタジアムも「………」と、多数派の甲府のファン・サポーターのステレオ音源は沈黙し、喜んでいる柏サポーターの声がモノラルで聞こえてくるだけ。
12分にはボランチのマルキーニョス パラナが相手と競りながら後ろに戻したボールが山なりの浮き球になり、突進してくるレアンドロを感じながらバックステップしつつトラップした山本英臣。少しこぼれたボールをレアンドロに奪われ、そのままスピードに乗ってGK荻晃太との1対1の場面を作られてしまう。ここを決められていればゲームが壊れるくらいのダメージを受けそうだったが、「レアンドロとは神戸で一緒にやっていたんで、ギリギリまで我慢して反応しようと思っていました」(荻)という腹の据わった反応で手に当てて防いだ。まさに、チームを助けるビッグセーブ。しかし、その後も柏にシーソーは少し傾いたまま。
19分にクリスティアーノが縦にドリブルしてから入れた低いセンタリングを柏のDFがワンタッチで処理できず、こぼれ球をつっかけに行った山本が倒されて甲府がPKを得る。柏からすれば“こぼれ球をクリアした直後の足に山本が引っ掛かった”と言いたいギリギリのところ。(これで同点になって…)と皮算用を始めるが、キッカーのジウシーニョの蹴ったボールはGK菅野孝憲に反応されて止められてしまう。「モーションを見て反応する方向を決めた」と言う菅野の腕の先ではなく脇にボールが入ったので、キックミスもあってGK菅野の完全勝利。でも、甲府の選手はこういうことも想定内だったのか、失点直後よりもアグレッシブさを高めていた。ただ、今はリハビリ中のボランチ保坂一成が恋しくなる場面は少なくなかった。今節は新井涼平がベンチで、ルーキーの下田北斗とマルキーニョス パラナのボランチだったが、ボールハンターの新井がいない分、マルキーニョス パラナの守備の負担が増えてか、パスミスが目についた。
前半を0−1で終えた甲府。ハーフタイム明けに最初にピッチに出てきたのは荻。気持ちが乗っているのだろうという感じ。47分に甲府が同点のチャンスを逃してから10分後の57分に城福浩監督は、去年まではDF、今年はFWもやる盛田剛平を投入する。先週土曜日のJ1第5節・仙台戦も盛田を後半の早い時間帯に投入してから同点ゴールが決まっているだけに、期待は高まった。しかし、盛田の途中投入はサポートの選手とのコンビネーションがすぐに定まらないことがあり、この試合でもマイボールになってもなかなか効果的な攻撃に繋げることができなかった。柏のハードに寄せる3バック、出足のいい連携したアプローチもそうなった理由だし、ドミンゲスのほうのレアンドロのマークし難いポジショニングに後手を踏まされるといい形でボールを奪って攻撃に繋げることができなかった。(盛田がなかなか生きてこない…)と、ノートに書こうかと思っていたころに甲府は石原克哉を投入。直後に柏は工藤とレアンドロを下げて田中順也と狩野健太を投入する。
どちらにでもバランスが傾きそうな状況から、この交代で双方がどうなるのかを見ていたが、柏はターボがかからない。甲府は盛田の繋ぎを使おうとする場面は増えるが、裏に誰も走っていなかったりと今一つ。どっちが先にハマるかという流れだったが、先にハメたのは甲府。佐々木翔の縦パスを、裏に走り込んだ石原に盛田が首を捻って頭でつないだ。石原はジウシーニョが作ったスペースに入りつつ、タイミングを合わせて飛び出していた。そのままドリブルでゴールに向かいシュートを打つかと思ったら、右サイドを猛烈に駆け上がってきたクリスティアーノへパス。フリーのクリスティアーノは、試合後のミックスゾーンで「奥さんと付き合って8年目の記念日。特別な日にゴールを決める自信はあった」と言うために、落ち着いてゴールに流し込んだ。前座試合をやった後、スタンドで試合を見ていた山梨の少年サッカーの子供たちも大喜びのゴール。いい内容で粘ることも重要だけれど、ゴールって本当に素晴らしい。甲府は次のリーグ戦もホーム(J1第6節)。クリスティアーノには“付き合って8年と4日目の記念日”4月6日に、清水からもゴールを決めてほしい。
甲府にとっても柏にとっても「勝てば首位だったのに…」という後味だが、柏にとってはJ1第5節・大宮戦を思い出す、終盤に追いつかれる展開。工藤、レアンドロ ドミンゲス、レアンドロの三角形をベースにする攻撃の最大値は見つかったが、課題は相手が終盤に1〜2点取っても焼け石に水になるような大量点を取るか、1〜2点差でどうゲームをクローズするのかということになるだろう。ベンチに座っているレギュラークラスの選手をどう使うのか、ネルシーニョ監督の采配が問われそうだ。
甲府は柏の個の質の高さを見せつけられながらも、失点は1で悪くはない。セットプレーの失点が問題になっているが、J1開幕節・鹿島戦の4失点が問題を大きく見せているだけという考え方もできる。PKを含めて決定力はイマイチだけど、柏相手に決定機が複数あることも悪くはない。満足はしないけれど、J1で甲府の置かれた立場を考えれば健闘中。ベンチの選手、ベンチ外の選手が「次は俺だ」的なアグレッシブアピールを続けてチーム内競争を激しくしてくれれば勝点3を取れるチャンスは増えるはずだ。
以上
2014.04.03 Reported by 松尾潤
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