決勝点を決めたのが、大前元紀、竹内涼からの美しいコンビネーションによって裏に飛び出した長沢駿。自身の記録を更新する公式戦4試合連続ゴールだった。3人とも長谷川健太前監督の元で下積み時代を過ごし、その後大きく成長してポジションをつかんだ選手たちだ。口々に「健太さんに成長した姿を見せたい」と語っていた彼らにとっては、かつての師への最高の恩返しとなった。
ただ、それまで清水は多くのチャンスを作れていたわけではない。試合前から雨が降り始め、ボールがよく走るコンディションの中、立ち上がりからお互いにしっかりとサッカーをしようという姿勢が見られた試合。自分たちがボールを持ったときは、安易に長いボールを蹴ることなくしっかりとパスをつないで攻撃の組み立てを試み、相手ボールのときは守備の組織を整えてチーム全体で守る。どちらも守備が安定していたためゴール前の見せ場は少なかったが、お互いに自分たちのサッカーをしっかりと表現しながら戦う姿勢は見ていて気持ち良く、もどかしさを感じることはなかった。
そんな中で、より多く相手ゴールに迫っていたのはG大阪のほうだったが、先にワンチャンスを生かしたのが清水。33分、ボランチとして公式戦4試合連続のスタメンとなった六平光成の鋭い縦パスを受けた大前が、ドリブルで中に進んで縦パスを入れ、竹内が1タッチでつないで長沢がゴール前に抜け出した鮮やかな突破は、これまでの清水にはあまり見られなかった形。落ち着いて左足でGKの足下を抜いた長沢の冷静さは、連続ゴールで自信と余裕を増していることの証明でもあった。
また、その長沢以上にこの試合で光ったのは、六平の成長ぶりだ。先制点の場面でも「遠藤(保仁)さんにパスコースを読まれているのはわかっていたので、わざと強いボールで通した」ことによって、大前が楽々と遠藤を置き去りにすることができた。そして父である俳優の六平直政氏をスタジアムに招待したゲームを通して、G大阪における遠藤保仁のような落ち着いたボールキープと効果的な縦パスを披露。守備でもポジショニングやカバーリング、球際の競り合いなどで頼もしい姿を見せ、アフシン ゴトビ監督も試合後の会見で誰からも質問されていないにも関わらず「六平のことも話しておく必要がある。今日は彼がピッチ上のベストプレイヤーだった」と語った。守備で十分な働きができつつ、攻撃を高いレベルで司ることができるボランチを探し続けてきた指揮官だけに、それを得た喜びは本当に大きいのだろう。
清水は先制した後も、前節・F東京戦の反省を生かして守備の組織を保ち、「今日は清水のブロックがしっかりしていた」と日本代表・今野泰幸に言わしめる守りで、前半をリードしたまま折り返す。だが後半に入ると、G大阪が1トップの小川直毅を佐藤晃大に、トップ下の二川孝広をリンスに代えて攻撃のギアをチェンジ。リンスの積極的な仕掛けや裏への飛び出しを軸に、攻撃の主導権を握った。
後半のシュート数は、G大阪が11本に対して、清水はわずか1本。G大阪の決定機は少なく見積もっても4、5回はあり、そこまでのサッカーに関しては長谷川監督も手応えを口にするが、最後のところを決めきれないことがこの試合の結果だけでなく、リーグ戦の成績にもつながっている。エースの宇佐美貴史が不在の中、「一発決まってくれば、今の攻撃の停滞感というのは変わってくると思うんですが、その一発がなかなか出ないというところで……」(長谷川監督)という苦しい胸の内を記者会見でも語った。
一方、清水のほうは、G大阪の決定力不足に助けられた面もあったが、ヤコヴィッチを初めて右サイドバックとして起用した中で守備のほころびを見せることなく、終盤に押し込まれた中でもゴール前で全員が身体を張って守り切って、ヤマザキナビスコカップでは2試合連続の完封勝利。ホームで2連勝という絶対的なノルマを果たし、予選Aグループの単独首位に立って、予選突破に大きく一歩前進した。
ただ後半も、6分にノヴァコヴィッチを投入して竹内をボランチに下げた後は、少しだけ自分たちがボールを握る時間帯を作ったが、「それを長く続けられないのが課題」(六平)。それによって終盤に押し込まれる時間が余計に長くなってしまった部分は、修正が必要だろう。だが、それ以上に平岡康裕らの守備陣も含めて恩師の前できっちりと成長の跡を見せ、結果も手にしたことは大きな自信になるはず。それをリーグ戦にもつなげていけるかどうかが最大の注目点となる。
以上
2014.04.03 Reported by 前島芳雄
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