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【J2:第5節 山形 vs 水戸】レポート:水上の神経戦はスコアレスドロー!両チームが最後まで高い集中を保つ。 (14.03.31)

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メインスタンドから角度をつけてピッチを見ると、水が浮いて見えるゾーンが4割ほど。照明の明かりが灯されたスタンド上空が水面に映され、強く降り続く雨や時折吹く風に細かく揺れていた。水たまりがないように見えるその他のエリアでも、選手が走れば足元で水しぶきが上がっている。

ボールが止まることは予想できる。ただ、どこに止まるか正確な地点はボールが止まるまでわからない。マイボールにするには、ロングボールやそれを跳ね返したセカンドボールを追っていき、ボールが止まった瞬間にそのポイントへ向けて急激な方向転換が必要となる。ボールへのアプローチが相手とほぼ同じタイミングの時は、そこから体のねじ込み合い。相手とボールとの間にどちらが先に体を入れるか、激しいコンタクトが展開される。ようやくマイボールにしても、そこで体勢が崩れていれば別の相手に体を当てられてたちまち奪われる。足場が悪く、自由なコントロールが利かない状況で長くキープしているのはリスキーなため、ボールは早めに前方へ送られる。ボールに合わせて人も縦への動きを頻繁に繰り返し、ボール際では体をぶつけ合う。フィジカルとテクニックが同時に要求される山形・石崎信弘監督の練習メニューは「フィジテク」と呼ばれているが、たとえて言うなら、「フルコートで行う実戦形式のフィジテク、45分×2セット」といったところか。

山形は前節からメンバー3人を入れ替え、石川竜也と川西翔太が今季初先発。運動量が持ち味の選手から足元の精度を高める方向へシフトし、引かれたブロックに対してどう崩していくかというシミュレーションも重ねてきた。一方、1ボランチから3-4-2-1にシステムを変えた水戸にも「守備のところで前から守備をかけていくという狙いがあって、そこから前で奪ってショートカウンターができれば」(船谷圭祐)との目論見があったが、そうした準備がほとんど通用せず、「やるべきことというのは球際のところと、はっきりしたプレーというところだった」(山形・宮阪政樹)とフィジカルと集中力がマックスに要求される大味な展開が90分間続くことになった。

船谷圭祐が振り返る。「どうやって押し込むかというところだったんですけど、もうちょっと相手を裏返すようなボールを出せればと思っていました」。前半にカウントされた水戸のシュートは、31分に三島康介が遠目からダイレクトで浮かせた1本のみ。その「相手を裏返すようなボール」をより効果的に使っていたのは山形だった。その理由は技術の部分。8分、左奥からのクロスでディエゴの頭に合わせた伊東俊が、その2分後には、転がらないボールの習性をつかみ、通常のドリブルよりも奥に持ち出す独創的なドリブルで左サイドを突破。宮阪はボランチの位置から3バックの背後や脇に落とすボールを供給して多くのセットプレーを得て、そのなかから30分には宮阪からディエゴ、40分には石川から當間建文とコーナーキックからヘディングの決定機が生まれた。37分には宮阪が雨で止まったボールを直接フリーキックの要領で蹴り込んだ。しかし、ここで立ちはだかったのは水戸のGK本間幸司。手前で不規則にバウンドするボールにも慎重な対応で危なげなく胸ポケットに吸収し、ゴールを割らせなかった。スルーパスからシュートを量産してきた山形も、いつも以上にリスク管理が必要な状況で前線に人数をかけることはできなかった。

0-0で折り返した後半も、53分に川西からボールを受けた伊東がペナルティーエリア内に持ち込み、最後はディエゴにスイッチした。カバーに戻った田向泰輝にクリアされたものの、シュートの少ない展開のなか水戸陣内に押し込み、そこでのプレッシャーも効いていた。徐々に潮目が変わるきっかけとなったのは、66分の鈴木隆行投入。「ターゲットが三島だけじゃなくなって2つできてしまった。こういうシンプルなサッカーの応酬になる時はターゲットが少ないほうが助かるので、そういったところでラインを下げさせられてしまったかなという印象はあります」(清水健太)。80分、距離のあるフリーキックで三島の落としから鈴木隆がニアに入ってシュートにつなげた場面など、プレーエリアはじわじわと山形陣内に移っていった。ボールへの反応が遅れ気味となった山形は押し込まれたが、後半も水戸のシュートを2本に抑えた。

結果はスコアレスドロー。「選手は本当によく戦ってくれたんじゃないかなと。90分間、特にディフェンスの選手はひとつでもミスすれば失点する場面でも集中して戦えたというところはすごくよかったんじゃないかなと思います」(石崎監督)、「選手たち、このチームというのは、ほんの数ミリかもしれないですけども前進したと思っています」(柱谷哲二監督)。両監督は悪条件のなかで戦い抜いた選手たちを讃えた。集中を切らすまいと高い意識で臨んだ守備があり、あきらめずにゴールの可能性を模索した攻撃があった。後押しするサポーターも含めて、間違いなく力を振り絞った90分だった。

「次の試合、ふつうのグラウンドでできるのを祈っています」
石崎監督のこの言葉には、「ふつうのグラウンド」であれば勝点3が取れた可能性を示唆するものでもあるが、それ以上に「サッカーそのものがしたかった」との思いが強く響く。雪がようやく解けたこの時期、芝の養生や土壌の管理は特に難しい。前回のホームゲーム以降は保養シートでピッチ全面を覆うなど養生の努力も続けられてきたが、土砂降りとまではいかない雨が数時間降り続いた程度でこれほどピッチに水がたまる環境は、興行として正直厳しい。この状態が続けば、J1を経験した09年以降では最低を記録した4270人の観客にさらに影響を与えることも懸念される。この4月1日からNDスタを含む山形県総合運動公園の指定管理者となるクラブにとって重要な宿題となりそうだ。

以上

2014.03.31 Reported by 佐藤円
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