初めて今季、東京Vサポーターからのブーイングを聞いた。以前、高木大輔が「東京Vのサポーターは、結果だけではなく、内容も見た上でブーイングか拍手かを決めてくれる」と語っていた。実際、前節までの4試合0勝1分3敗という成績ながら、その内容に次節への期待を込めて、常に大きな拍手と声援を送り続けていた。その「優しいサポーター」(高木)が、ついに怒号を上げざるを得ない内容・結果となってしまった。
立ち上がりから、思うようなボール回しができずに苦戦した。スタイル通り、後ろからつないでいこうとするが、長崎のプレスも早く厳しく、さらに自分たちのミスも重なり、前線に入るまでのパスで相手にボールを奪われる場面が散見された。また、浮き球を前線に入れてからの展開での打開を試みるも、元々空中戦を得意としない上、3枚を全員180cmで揃えたDFに競り負け、セカンドボールをことごとくさらわれ、逆襲からピンチを迎えることが少なくなかった。前田直輝、安西幸輝らのドリブル勝負も、チャンスを作る前に潰された。それでも、平本一樹のドリブル突破からの常盤聡とのコンビネーションであったり、安西の好クロスからのシュートなど、特に前半の残り15分ぐらいは徐々にペースを握ることができ、「前半はどっちに転んでもおかしくなかった」(平本)中での0−0での折り返しとなった。
だが、後半はまさかの一方的なゲームとなった。東京Vはまず、主将・田村直也が前半のプレーで負傷し、後半3分に退くというアクシデントに見舞われた。セットプレーの守備という非常に難しいタイミングでの交代。最初のピンチは凌いだが、その流れからの2度目のCKで試合は大きく動いていった。6分、野田紘史の絶好のCKを黒木聖仁が東京Vのマンマーク守備を見事に外して頭で押し込み先制する。3月10日にC大阪から加入したばかりのニューカマーの初得点を、野田も「嬉しい」と、喜んだ。東京Vとしては、またしてもセットプレーからの失点、そして、先制点を与える展開に落胆の色は隠せなかった。すると14分、前線に入れたボールのセカンドを拾われ、そこから奥埜博亮にフリーでミドルシュートを許し、それが決まる。「2失点目がすべて。大きな問題」と、平本も自分を含めたチーム全体としての守備の緩さを猛省した。今季未だ複数得点を挙げられていない東京Vにとっては、この2失点目はまさに痛恨だった。その後、わずか5分間で2点を追加され、あっという間に0-4と突き放された。
25分、中後雅喜から平本に展開されると、追い越した高木が左で受け、その折り返しを常盤が流し込んで一矢報いたが、その後はチャンスらしいチャンスも作れず。逆に34分、代わって入った小松塁に決められ、終わってみれば1-5という大敗の苦渋を味わうこととなった。
4節までとは違い、今回はほとんど自分たちの良さを出せずに喫した完敗だっただけに、ショックの大きさは相当だろう。2失点目を喫した後、明らかに気落ちし、一気に集中力が低下したのも、「若さ」の1つと言えるのかもしれない。これまでは、“若さ”のプラス面である躍動感、運動量、フレッシュさなどが前面に出ていたが、一方で、「乗れば一気に乗れる」の逆の「落ち込むときも一気に落ち込む」というメンタルの波の振れ幅の大きさ、経験値不足など、マイナス面も多々持ち合わせていることは、「若いチーム」で闘っていくことを決めた段階で十分覚悟していたはずである。であれば、この大敗も、ある意味では想定の範囲内と言えなくはないのではないだろうか。この試合の結果だけで全てをマイナスに考え込むことはあまりにも短絡的すぎである。ただ、「若いチームだから仕方がない」で終わらせるわけには絶対にいかない。平本は、自戒を込めて語った。「出ている選手は、何十人も選手がいる中で、数少ない1つの枠で使ってもらっている。その恩返しではないけど、それぐらいの気持ちを見せるプレーをしなければいけないと思う」。そして、続けた。「俺もそうだったけど、若い時は、たとえば、ドリブルが得意な奴が、何とかしようとがむしゃらにドリブルしてったり、言葉は良くないかもしれないけど、もっと“バカ”でいいと思う」試合に出られることへの感謝、なぜ自分が選ばれ、何を求められているのかの意味を自覚することの重要性を説く。若い選手は、失敗を恐れるぐらいであれば、思い切り自分を出し、後は先輩に頼ればいいということだろう。「大事なことは次の試合、どういう気持ちで臨むことができるか」(三浦泰年監督)。今季チームが初めて直面した高く厳しい難関。どのように乗り越えていくのか、次節(4/5vs富山)、その過程と結果に真価を問いたい。
大量・5得点を挙げた長崎は、「1点目が試合を決めたといっても過言ではないと思います」と、佐藤洸一が語った通り、セットプレーによる先制点から完全に勢いにのった。高木琢也監督も、「実をいうと今日の東京Vさんは、前節のFK、CKの守り方と違っていました。それを前半から伝え、そこで駆け引きをしながらのセットプレー」だったと語り、前節までのゾーンではなくマンマークで守ってきた相手への選手たちの対応力の高さを評価した。東京Vが開幕からセットプレーによる失点を繰り返し、その守備にナーバスになっているであろう精神的な部分を突くという意味でも、勝敗を分ける、最高のダメージ力ある一撃と言えそうだ。
互いに“ハードワーク”をストロングとする中、0-3と点差が開いても、ギアを落とすことなく追加点を追い求めたことに、「相手を上回った」と、野田は勝因を見出す。「(プレーオフ進出した)去年がまぐれだったと言われたくない」と、佐藤は語ったが、現時点ではしっかりと昨季からの成長を示すことができているのではないだろうか。「次のホームに勝点3以上のものを持ち込めると思う」長崎のサポーターにとっては、より楽しみな次節(4/5vs北九州)になりそうだ。
以上
2014.03.31 Reported by 上岡真里江
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