柏は前節の徳島戦から布陣を変え、3バックシステムを用いた。これまでのレアンドロの1トップから、工藤壮人を最前線に置いたことはポイントだった。「工藤が相手のセンターバックと駆け引きをしながら、相手のディフェンスラインを下げるような動きをしていた」(大谷秀和)ため、大宮の最終ラインとボランチの間はわずかにスペースができ、そこにレアンドロ ドミンゲスとレアンドロが顔を出してパスを受けることで攻撃を展開していく。その2人の対応に大宮のボランチとサイドバックが引き寄せられると、今度はサイドに空いたスペースを右の高山薫、左の橋本和が突いていき、前節までは中央突破に固執しすぎる傾向のあった攻撃の形が、この試合に関しては中と外を使い分けるメリハリの利いた展開に持ち込むことができた。
21分の決定機、レアンドロのまさかのシュートミスで逸したシーンも、DFの背後を取った高山の突破から生まれており、柏が叩き出した2つのゴールを見ても両ウイングバックが積極的に攻撃に絡んでいたことがわかる。27分の先制弾は、セットプレー崩れとはいえ、右サイドの高山のクロスを橋本が押し込んだものであり、52分の追加点も、カウンターからレアンドロ ドミンゲスのスルーパスに抜け出した高山が中に折り返し、工藤が難なく流し込んだ。
守備面に関しても非のつけどころがなかった。ズラタンとラドンチッチへのハイボールには苦しんだが、大谷と栗澤僚一のダブルボランチの対応が良く、セカンドボールをほぼ拾えていたために大宮が長いボールを放り込んでも次の展開へ繋げさせず、このダブルボランチは攻撃面でも右のレアンドロ ドミンゲスと高山には栗澤、左のレアンドロと橋本には大谷と、それぞれ的確にサポートを行うことで奪われた直後の守備にも素早く転じ、大宮のカウンターも封じることができた。
大熊清監督は「片岡(洋介)がドミンゲスをゾーンで見ながらうまく消したかったが栗澤と大谷がリズムを作っていた。前半から試行錯誤していた」と振り返り、「僕もアキ(家長昭博)も結構押し込まれて、5バック、6バックみたいな感じになっていましたし、ボールを持った後に前へ持って行けず、スピードアップもできなくて、相手は3枚後ろに残り、ウイングバックも引いて、裏一発で狙うことができなかった」と渡邉大剛もうまく回らない時間帯についてそう話している。
後半の早い段階で選手を入れ替え、2トップも並びを変えてズラタンの1トップと家長のトップ下に変更したが、それも奏功した感じはなく、渡邉が「0−2になった後は攻守がバラバラになって相手のカウンターを受けてしまった」と話したように、むしろ圧倒的な柏ペースになった感があった。
ただ、柏がその後訪れたチャンスをことごとく逸し、試合を決定付ける3点目を奪い切れなかったことが響いていく。さらに、文字通り“ケガの功名”と言うべきか、56分に入ったカルリーニョスが負傷し、76分に退くことになったのだが、それによって渡邉をボランチに下げ、センターバックの高橋祥平を上げてダブルボランチを組むと、「非常に距離感が良く、ボールを奪いに前に行く高橋の積極性がチームに勇気を与えた」(大熊監督)と、試合の流れが大きく変わり始める。
柏とすれば、わずかな綻びが見られたこの時点で手を打っておかねばならなかった。前線の3人の足が止まり前からプレスを掛けられず、大宮の最終ラインとボランチが比較的楽にボールを持つことができたからだ。ボールを奪ってもイージーミスで簡単にボールを失うシーンも目立ってきたため、運動量豊富な田中順也、キープ力があり時間を作れる狩野健太あたりを投入すると思って見ていたのだが、ネルシーニョ監督は動く気配を全く見せなかった。
そして、ついに大宮のパワープレーが炸裂する。
83分、チョ ヨンチョルのクロスを柏DFに競り勝ったズラタンが落とし、高橋が押し込み2−1。85分にも家長のクロスを橋本が被り、ファーサイドの菊地光将がフリーで放ったシュート性のボールをまたしても高橋が詰めて2−2とした。
75分まで何もなかった大宮がラスト数分間で追い付けた要因は、それまで試行錯誤を繰り返しながらも選手の配置・組み合わせを変え、ハマりどころを見出したこと。そして2点差になってもあきらめなかったメンタリティーがあればこそ。渡邉は、試合内容に関しては満足がいくものではなかったことを明かしていたが、この大宮のあきらめないメンタリティーは敬服に値する。
逆に、75分まで完璧に試合を運んでいた柏には勝てなかった原因があった。試合を決定付ける3点目を奪えなかったこと、終盤の守備の仕方、多発したイージーミス、選手交代の遅れなど、様々な要因が絡み合ったがゆえに、こうした負けに等しい引き分けが生まれた。
ラストの10分、15分をチームとしてどう終わらせるのか。75分間ですばらしい試合をしても、残り数分間の稚拙さが原因で全てが台なしになる。本当にリーグ優勝を狙っているのならば、今回の試合を教訓に考えを擦り合わせ、チームとして戦い方を共有していく必要がある。
以上
2014.03.30 Reported by 鈴木潤
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