振り向きざまにシュートを放ってポストに弾かれる。こぼれ球に反応して右足を振り抜くも、クロスバーの上に外れる。シュート16本を放っても無得点で終わった前節の鳥栖。惜敗とは言え、選手たちは我々には計り知れないほどのプレッシャーを感じていたのではないだろうか。「今日のゲームを落としてしまうと、上位に食い込んでいくためには問題を生じてしまう中でのゲーム」(尹晶煥監督/鳥栖)となったG大阪との対戦、今シーズン初のナイトゲームだった。
試合前から降り出していた雨の影響で、ボールをコントロールするのは非常に難しかったと思う。しかし、一度上空に上がったボールはピッチの影響を受けることはない。ボールが上がってしまえば、この男の見せ場である。自分のヘディングエリアで、入ってきたボールの角度を変えてネットを揺らした。放ったシュートはこの1本だけ。決定力不足を指摘する声が多かった前節の内容を、この一発で吹き飛ばした。決めるべきところで決めてくれるのがエース。FW豊田陽平が72分に魅せてくれた。
「最後のところは豊田だと思うし…」とこの日ボランチでプレーした相手選手が警戒していた中での1本のシュート。そう語った選手サイドの左奥から放たれたクロスボール。豊田はボールが左サイドにあるうちにファーサイドに流れて、自身のヘディングエリアを確保した。ボールを目で追うと、マークするべき選手がファーサイドに消えてしまうし、マークするべき選手を追うとボールの軌道がわからない。日本代表であろうが、同時にこれらをこなすことは容易ではない。逆に言うと、鳥栖の得意の形でボールを運び、仕留められたことになる。
「自分が下がるのが遅れてしまい、ダイレクトで押し込まれてしまった」と先制されたシーンを振り返ったのは、G大阪・今野泰幸。一瞬の判断遅れがこの試合を動かした。
雨の中で、濡れながらもピッチに指示を送り続けた尹晶煥監督の采配も冴えわたった。前半に守備ラインが低いと見ると、後半開始からMF谷口博之に代えてMF高橋義希をピッチに送り込んだ。
14分にセンターバック菊地直哉が負傷退場したことで、予期せぬ交代カードを切らざるを得ない状況もあったために守備のバランスを考えての決断だった。「後半は鳥栖のペースで進めたと思うし、2次攻撃に繋げることができた」と高橋は尹監督の期待に応え、サポーターを引き込んだ。
その高橋が、前線からのプレスを掛けたボールを拾い、右サイドに送って82分のMF金民友の得点の起点を作った。「ニアにしっかりと入っていこうと話して試合に入った」と試合前に話した尹監督。試合前から的確な指示を行い、試合中に素早い決断で相手を追い込むことができた。試合後には、「後半に入って本来の姿を取り戻しながらこのような大勝利を収めてくれたことを彼らに感謝したい」と選手に華を持たせる心遣いも見せた。
「内容は悪くはないが、結果がついてこない」(尹監督)試合が2つ続いた鳥栖。この日は、全ての選手が内容と結果を一致させた。急な出場にもかかわらず、カバーリングと対人の強さを見せた呂成海。守備での要が不在になった直後から、声を掛け続けたDF安田理大。切り返しから先制点をアシストしたDF丹羽竜平。そして、終盤の決定機に素早い反応でゴールを許さなかったGK林彰洋。
鳥栖の選手全員の気持ちが一つになって上積みした勝点3。この勝点3は、シーズン終盤で大きな意味を持つことになるだろう。堅守のG大阪から奪った2得点、今後に大きな期待を持たせてくれる得点でもあった。
「2点取られたことよりも1点を取れなかったことのほうが、今日は悔しい」と振り返ったG大阪・長谷川健太監督。今のチームの現状を表しているように感じる。この日も一瞬の隙を突かれ失点はしてしまったが、この部分よりも“攻撃の覚醒”を期待するサポーターが多いのではないだろうか。
「今日のゲームについては、我々のほうにツキがあったと思う」と評した鳥栖・尹監督。一瞬の判断が結果を左右した試合ともいえる内容だった。
攻める(守る)ゴールを見る。動くボールを見る。それにかかわる選手(相手・味方)を見る。次に起きる現象を予測するために必要な要素である。
そこには、経験と練習で培われたサッカー観(テクニック・フィジカル・メンタル)がとても重要になる。ボールを動かせる選手は一人だけだが、そこにかかわることができる選手は多い。結果を指摘するのは容易いが、結果を導くことは至難の業である。観戦するたびに、つくづくサッカーは難しいと実感してしまう。予想と現実、結果が常に変化するのがサッカーなのだから。
以上
2014.03.30 Reported by サカクラゲン
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