今季のJ1で1分3敗という苦しい結果の仙台が、ホーム3戦目で迎えた相手は甲府。前節に横浜FMを倒して今季初勝利を記録し、自信を深めて乗りこんでくる。厄介な相手だ。
仙台はここまでの戦いから、攻守のバランスを修正する必要があった。グラハム アーノルド監督は開幕前のキャンプで用意していた4−2−3−1と4−4−2のフォーメーションのうち、ここまでの公式戦では前者を基本的に採用してきた。しかし試合前日の時点で「タイトに守り、スペースを与えない甲府に対し、2トップで相手のスペースを突く」と監督が予告していたように、この甲府戦では4−4−2に変更。先発メンバーも入れ替えた。
このフォーメーションを機能させるうえで、キーマンとなったのが柳沢敦だった。アーノルド監督に「タイトなエリアでスペースを見つけるのが得意だし、彼の豊富な経験と合わせて相手に脅威を与えることができる」と評されていたベテランは、「チームが良い方向に動き出すスイッチになれれば、と思っていました」という気持ちとともにプレー。この日はロングボールが多かった仙台において、パスを前線で収め、周りの動きを引き出す。また前線の相棒であるウイルソン、2列目の梁勇基やマグリンチィといった選手がボールを落ち着けている時は、精力的に動き回ってスペースを作る。さらに守備のときにも相手のパスコースを狭め、前から連動した守備組織の円滑化にも貢献した。
ベテランに引っ張られるようにこの日の仙台は攻守のバランスよく甲府を攻め、37分にはもぎ取ったCKから角田誠が頭で先制点を決めた。カウンターから甲府に危ない場面を作られたこともあったが、クリスティアーノや河本明人のシュートはゴールに至らず。仙台にとってはここまでは上々の試合運びだった。
しかし前半にのびのびプレーできた分、仙台に“飛ばしすぎた”ところがあったのも事実だ。「後半からバランスを崩し、スペースを与えてしまった」とは渡辺広大の言葉だが、その通りに後半も10分を過ぎると前後のコンパクトさが両チームから失われてきた。
甲府の城福浩監督は「時間が経つにつれオープンになってくるので、そこで我々のやりたいことをやろう」とこの時間帯に勝負を懸けるプランを持っており、55分に長身FW盛田剛平と負傷から復帰したテクニシャン・ジウシーニョを同時に投入。さらに70分に仙台の柳沢が交代で退いたのと同時に水野晃樹を投入し、ジウシーニョをボランチに下げる攻撃的な配置で仙台を押し込んだ。仙台は後半にシュートを1本しか打てないほどだった。その結果が77分の場面である。カウンターから甲府がもぎ取ったFKをきっかけに、青山直晃が混戦から同点弾を押し込んだ。
その後は互いにチャンスの芽をつぶし合って、なかなか相手ゴール前にボールを運べず。試合は1−1に終わり、勝点1が両者に与えられた。だが双方のチーム事情からすれば、満足度が50%ずつ与えられたわけではない。
城福監督が「勝点3をもちろん取りたかったが、『勝点3を取りたかった。もう一度こういう試合をやりたい』という試合を続けるしかない。勝点を1でも取れて、遠くまで来てくれたサポーターとともに帰れるのは悪くないと思う」と実感したように、アウェイの甲府にとっては上々の結果だった。殊勲の青山も「アウェイで勝点を取ることによって、次節は心のゆとりを持って試合に臨める」と振り返る。
一方、またしても今季初勝利を逃したホームの仙台にとっては、勝点を1つ取ったというより、2つ逃した印象が強い。柳沢は「90%は悔しい気持ちの方が大きい」と率直な気持ちを語った。仙台には3月の公式戦で未勝利という現実も残ってしまった。
しかし彼はこうも続ける。「10%は負けなかった、勝点1を取れたことをポジティブにとらえていいと思います」。現状と課題は重く受け止めなければいけない一方で、仙台は勝点1を取れた要因を、次の勝利のために生かさなければならない。
以上
2014.03.30 Reported by 板垣晴朗
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