今季初めてキンチョウスタジアムで行われたＪ１リーグ戦第５節、Ｃ大阪と新潟との一戦は、両者決め手に欠き、スコアレスドローに終わり、勝点１を分け合った。ただし、「試合前から予想していたとおりの展開になり、タフで厳しい、難しいゲームになった」（Ｃ大阪・ランコ ポポヴィッチ監督）なかでも、ともに２試合連続完封と守備陣の奮闘も光り、Ｃ大阪は勝点10で２位をキープ、新潟も勝点８で８位と、最初の５試合で着実にポイントを積み上げている。

「すばらしい雰囲気のなかで試合ができたことについて、サポーターの皆さんに感謝したい」と開口一番、Ｃ大阪のランコ ポポヴィッチ監督が述べたように、チケット完売、1万5232人の観衆で埋め尽くされたキンチョウスタジアムは、臨場感あふれる興奮空間だった。そのなかで、Ｃ大阪、新潟の両サポーターの応援コールが響き合い、その声援に後押されるかのように、桜色の戦士たちも、オレンジのイレブンも、ゴールを狙ってアグレッシブなプレーを続けていた。

特に、序盤に攻勢を掛けていたのはＣ大阪。開幕から好調なプレーを続ける南野拓実を軸に攻め込むと、３分に南野のＣＫから山下達也が打点の高いヘッド、12分には山口蛍、杉本健勇が絡んだプレーから最後は柿谷曜一朗が強烈なグラウンダーのシュート、37分にはフォルランが左45度からの直接ＦＫで、それぞれゴールを狙う。しかし、新潟ＧＫ守田達弥らの好守などもあり、決め切ることができない。「勝負の分かれ目になるようなプレーのときに、決断力、精度というところを欠いてしまった部分があった」と指揮官は課題を口にしたが、先手を奪えなかったことで、「前半の中盤以降、相手にボールを持たれる時間があったが、そこでは受け身になってしまっていた。アグレッシブさがチームに出なくて、相手に主導権を握られてしまった時間帯があった」（ランコ ポポヴィッチ監督）。

逆に、「Ｃ大阪相手に90分間、すごく戦ってくれた。アルビレックスの勝利のために、一人ひとりが強い気持ちを持ってやってくれた」と試合後の会見で述べていたのは、新潟の柳下正明監督。前節、勝利しながら、厳しい言葉でチームの叱咤していた指揮官が、この試合では「自分たちでボールをしっかり保持してプレーしている時間もありましたし、後ろに関してもズルズル下がることなく、前に前に行っていた」とイレブンを称えた。「守備のところでも前から行けましたし、規律を持ったプレーができていた」と大井健太郎も言うように、新潟は、前線からは川又堅碁や鈴木武蔵があきらめずにボールを追い、相手守備陣がやむを得ずボールを大きく蹴ると、ＤＦ陣がそれを跳ね返す。そして、すかさずレオ シルバ、成岡翔をはじめとする中盤の選手たちがそのセカンドボールをしっかり拾って、攻勢につなげる。その繰り返しで、Ｃ大阪の連動した攻撃を許さず、自分たちのペースに持っていくことができていた。

ただし、守備が光ったのは、Ｃ大阪にも言えること。ＧＫキム ジンヒョンは後半にやってきたピンチ、川又のヘッド、岡本英也のミドルシュートなどを好セーブでしのぎ続けた。また、山下、ゴイコ カチャル、山口らをはじめとする粘り強いディフェンス、カバーリングも随所にあったことで、新潟にゴールを許さなかった。「僕らにとっては非常に厳しいゲーム。なかなか自分たちの力を出せなかった」とゴイコ カチャルは勝利できなかったことを悔やんでいたが、「ディフェンスとしては、きちっと２試合守り通すことができたと思いますし、回数を重ねるごとによくなってきているところがある」と、守備には手応えをつかんでいるようだった。

惜しむらくは、両者とも、ゴールがなかったこと。Ｃ大阪も新潟も、あと一押しが足りなかった。それでも、「自分たちがやろうとしているサッカーを成熟させることや、コンビネーションを深めていくことに関しては、試合を重ねるにつれて、だんだんよくなってきている」（Ｃ大阪・酒本憲幸）、「これを次にどんどん繋げていけば、もっともっと上位に行けると思うし、今年の目標は高いところに置いてあるので、どんどんチームとして成長していければと思う」（新潟・大井）と、Ｃ大阪も新潟も着実にチーム力を上げている。そのなかで、この勝点１がプラスに働くかどうかは、互いにこの試合で得られたものをベースにして、今後の戦いに繋げられるかにかかってくると言えるだろう。

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2014.03.30 Reported by 前田敏勝