今日の試合速報

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第5節 広島 vs 徳島】レポート:セットプレーから3得点の広島、課題多き勝利。J1初得点をあげた徳島、希望ある敗戦(14.03.30)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
3−1という結果にも関わらず、拍手を贈りたくなったのは、むしろ敗者・徳島の方だった。
彼らは実に、よく戦った。肉体がきしむ音が聞こえるほどの球際。どんなに揺さぶられても集中を切らさず、自分たちがやるべきことを必死で貫こうとした。もちろん、彼らはただ守るだけではない。J1王者ののど笛をかみ切るような刃を持っていた。

16分、1本の縦パスに高崎寛之が抜け出し、千葉和彦と激しく戦いながらも決定的なパス。飛び出した林卓人よりも先に津田知宏が触った時は、「先制は徳島」と確信した。だが、林は慌てない。津田の切り返しを十分に読み切り、両足に力を込めて立ちはだかる。津田がスペースに持ち出しても追いすがり、絶妙のタイミングで足下のボールを払いのけた。生きている壁。かつてスチュワート・バクスター元広島監督が当時の守護神・前川和也を評して語った言葉を思い出す見事な守備がなければ、徳島のJ1初得点はさらに大きなインパクトを両チームのサポーターに与えただろう。

ただ、見た目ほどに前半の広島は、慌ててはいなかった。6分の佐藤寿人のゴールは、その前に水本裕貴が微妙なオフサイドの判定を受け、認められなかった。30分に見せたエースのヘッドも、ファウルをとられてノーゴール。徳島の5−4−1のブロックの前に縦パスを入れられず攻めあぐんでいたようにも見えるだろうが、広島にとっては想定済み。左の柏好文、右のミキッチが完全にサイドを制圧しており、クロスの雨を降らせていた。特に柏の内側への切れ込みに徳島の守備陣は後手を踏み、捕まえることができない。いつしかアウェイチームは、カウンターを仕掛けることもできなくなった。

44分。林も交えた後ろからのビルドアップから柏がまたも突破。クロスは弾き返されたが、セカンドボールを拾った広島が圧力を掛け、ペナルティエリア近くでハンドを誘発。FKを獲得する。
キッカーは高萩洋次郎か、塩谷司か。ボールをセットし、ポジションの指示を出す高萩に対し、塩谷は沈黙。蹴るのは10番か。だが、高萩が助走をとるべく後ろに下がったと同時に、33番が動く。強烈な右足から放たれたボールは唸りながら壁のわずかな上を抜け、強烈なスピードで曲がり落ちた。高萩を想定して動いたGK松井謙弥、呆然。

5試合連続の先制被弾に気落ちしたのか、後半の入りの徳島は、どこか集中を欠いた。49分、柏の突破から得たCK。「この時、ボールを見ていなかった選手がいた。その隙をショートコーナーで突かれてしまった」と徳島・小林伸二監督が悔やむように、広島の速いリスタートにうまく対応できず、石原直樹の天を貫くような高い打点のヘッドの爆発を誘ってしまった。
広島はさらに野津田岳人が強烈なミドルをたたき込んで3−0。それまでの内容を考えても、このまま広島が押し切ると誰もが考えた。

だが、そこからの状況を小林監督は「広島の緩み」と表現する。ボールロストが頻繁に起き、自ら相手にボールを与える状況が続くことでリズムをみすみす徳島に与えてしまった。72分、大崎淳矢のクロスが柏に当たり、そのボールがフリーの高崎の前に飛んでくる。徳島のJ1初得点は確かに幸運にも恵まれた。だが、森崎和幸は「偶然ではなく必然」と表現する。プレー内容からすれば、この場面で失点しなかったにしても、いずれはやられていた。
ただ、もし広島側が緩んだとしても、徳島がもし試合を投げ出していたならば、こういうシーンは起きえなかった。彼らは3点差をつけられても、決してあきらめることはなかった。ガムシャラに前に出た。リスクを冒して攻撃に参加した。全力で走り、全力で身体をぶつけた。その強い意識が広島のスキを強烈に突き、ゴールを生み出し、さらなるビッグチャンスを創造する。78分、左からのクロスをハードヒットした高崎のヘッドを右手1本でクリアした林のビッグセーブがなければ、この試合は「3点差をものともしなかった徳島のJ1初勝点」という大きなドラマを産んだ可能性もあったのだ。

試合後の広島の選手たちからは、勝利の安堵よりも反省の想いが強く表現されていた。一方の徳島からは、敗戦の悔しさをにじませつつ、「後半の戦いができれば」という手応えも感じさせた。勝者に課題を、敗者に希望を与えた戦いの熱によって、いつしかエディオンスタジアム広島に降り注いだ雨の冷たさは、感じなくなっていた。

以上

2014.03.30 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テレビ放送

一覧へ

明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/11/25(月) 10:00 【週末のゴールをイッキ見!】明治安田J3リーグ全ゴールまとめ【1124】