ボールを支配し、あるいはシュート数で上回り、それでも勝てない試合がある。アクションを起こすスタイルを押し進めていくなかで立ち現れた壁と向き合う2つのベクトル。この一戦を上位浮上のターニングポイントにしたい15位・山形と11位・水戸がNDスタでぶつかり合うとき、果たしてどのような化学反応が生まれるのか。
今週に入り山形は15度前後のあたたかい日が続き、練習場もそれまで一時的に使用していたグラウンドから、27日には通常使用する第3運動広場に移っている。キャンプから戻っても雪や寒さとの戦いを続けてきた北国のチームは、ふだんのトレーニング環境に戻ることで、ようやく万全の態勢が整いつつある。今節、次節と続くホームゲームで勝点3を獲ることになれば、歯車は加速度を増して回り始めることになる。
前々節のホーム・岐阜戦で今季初勝利を挙げたが、連勝をめざした前節・横浜FC戦では1-2と今季初の複数失点で敗れた。前半こそシュートを急ぎ過ぎた感はあったが、12対5とシュート数で相手を大きく上回って試合を終えるのはすでに定番となっている。横浜FC戦の2失点目はカウンターに備える人員の数や配置には問題がなかったものの、局面での対応の拙さから突破されシュート態勢まで持ち込まれるなど、小さな綻びがまだどこかで発生している。それだけにいまだ勝点4にとどまっている現状には歯痒さもある。今週のトレーニングで、守備ではアプローチの厳しさを取り戻す作業を、攻撃ではゴール前、特に引いてブロックをつくる相手に対する攻撃を重点的に行っている。加えて石崎信弘監督は「悪い内容だとは思ってない。でもせっかく負けたんじゃからね」と、おもに攻撃面での質を高めるメンバー変更も視野に入れている。
守備の堅さをベースに開幕2連勝を飾った水戸もまた、ここ2戦は山形同様、ボールを支配しながらともに0-1で落とす結果となった。前節・岡山戦は序盤に訪れた再三の決定機を逃すうちに、自陣深く引いて構える岡山を前にシュートまで持ち込めない展開となり、後半すぐに先制点を奪われる悪い流れの試合となった。「今までカウンターを中心にやってきたところで、そこを消された中でどうやって崩すかということは、今年の課題になるし、今取り組んでいる最中」「残念ながらそこを崩すだけの力がないということがよく分かりました」と、柱谷哲二監督は遅攻になった際のアタッキングサードでの攻撃の質向上がテーマになることを明言している。とは言え、ここ2試合1ボランチでプレーする中里崇宏が安定した預けどころとなり、シンプルにさばいてリズムをつくるほか、自陣ゴール前ではプレッシャーのなかでもつないでかわすなど、ボールを保持しながら主導権を握るスタイルでも高いレベルをめざす意欲はプレーのなかからもうかがえる。
山形は高い位置から奪ってショートカウンターの狙いが基本としてあるが、開幕・湘南戦がそうであったように、3バックの相手に対してはウィングバック対策としてややラインを落として構えるオプションを持っている。水戸は高い位置から行くケースと、リトリートして三島康平をターゲットにカウンターを狙うケースを時間帯や状況によってどう使い分けてくるか。互いに理想とするのは、相手が守備の陣形を整える前にシュートまで持ち込む速攻。そこで相手よりも先に、それも早い時間に得点が奪えれば残りの時間を優位に進めることができるが、そのためにも必要なのは切り換えの早さであり、失点を防ぐのに必要なこともまた然り。
では、遅攻に可能性はないのか。相手を押し込んでからの攻撃で、水戸は中にくさびを当てて落とし、その間に3人目が動き出すシステマティックな動きが浸透している。狭いエリアで正確にパスをつなぎ続ける精度はまだ足りていないのが現状だが、船谷圭祐や馬場賢治など相手の隙を突く動きのなかで質の高いプレーができる選手のプレーは大きな注目ポイント。対して山形は水戸よりやや即興的な色合いが濃い。引いた際に5バックになる水戸に対し、今季始めて先発のピッチに立つことが濃厚となった石川竜也は「ショートパスを基本にやっていくなかで、サイドチェンジをしなくていい部分でやってしまったり、逆にサイドチェンジしたほうがいいのに細かい部分に入っていったりしている。そういうところでバランスが取れていればもう少し厚みができると思う」と冷静な状況判断の必要性を指摘している。前節、外と中で人とボールの出し入れをしながら秋葉勝のクロスに中島裕希が合わせたゴールは、ひとつの模範解答になる。
さらにセットプレー。190cmの金聖基、184cmの新里亮など高さと強さを備えた選手を擁する水戸は、ここまでの4得点中3点がセットプレー絡み。さらに守備でも今季はまだ失点を喫していない。それに対して、山形も直接フリーキックから得点の匂いを発する宮阪政樹など良質のキッカーがそろっている。水戸陣内でのプレーが続けば山形がフリーキックを得る確率が高くなるだけに、そこでの駆け引きにも試合を決める要素が潜んでいる。
好天に恵まれた今週の山形だが、日曜日だけピンポイントで雨、しかも低温が予想されている。プレーの精度を保ちながら、どちらがアグレッシブに戦い抜くことができるか。注目の一戦は16時にキックオフされる。
以上
2014.03.29 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第5節 山形 vs 水戸】プレビュー:試合を決めるのは速攻か、遅攻か、それともセットプレーか。上位浮上を目論む山形と水戸が火花を散らす!(14.03.30)
- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- 2024J2昇格プレーオフ
- J3・JFL入れ替え戦
- bluelock2024
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off