開幕からここまで４戦無敗という誇り。順位表で上から３番目に位置している事実。失点が松本と並びリーグ最少タイという安定感。シーズン前の低い下馬評を覆す、痛快なまでの快進撃を誰が予想できただろうか。何が起こるか分からない。サッカーが内包する醍醐味を、今の栃木はサポーターに存分に味わってもらっている。

阪倉裕二監督は「感謝の気持ち」を重んじ、それを結果で示すことを選手に求める。今節、ホームで迎え撃つ５位・磐田に勝ったからといって、得られる勝点が３から６に増えるわけではない。とはいえ、勝てば勝点３以上の価値と歓喜を手にできる。日々の支援や応援に報いるためにも、栃木はこの一戦をこれまでと同じく全力で獲りにいく。

「クロスは両足とも上手い。ドリブルもあるし、やり難い。左足で蹴らせるか、下げさせるような対応をしたい」
そう近藤祐介が警戒するのは、磐田の右サイドバック駒野友一である。日本代表でともにプレーした経験があるからこそ、その凄味が分かり、キーマンに挙げたのだ。磐田の生命線は、駒野と松井大輔の右サイド。いかにそこを潰せるか。栃木の勝敗を左右する要素になるはずだ。

今週のトレーニングでは、サイドにボールが入った際の連動した守備を重点的に確認した。ボールホルダーにプレスを掛け、縦へのパスコースを遮断し、後ろに下げさせる。隙があれば内側へのパスを狙い、一気にカウンターに移行する。これらの形に持ち込むことを何度も繰り返すことで、サイドに起点を設けさせないように意識付けした。駒野と松井からの良質なボールを、ゴール前に待ち構える前田遼一は一発で仕留めるだけの決定力を有する。前田へのマーキングも重要だが、それ以前にボールに触らせなければ仕事はできない。「ゴール前にはフリーでやらせれば決定力のある選手がいる。その前の出所、その前の前の出所を封じる必要がある」とは阪倉監督。兎にも角にも、供給源を断つ対応が求められる。

相手の攻撃を封じるだけでは、当然ながら勝点は１に留まる。「（スコアレスドローに終わった３節の）京都戦のように相手の攻撃を受けるだけではなく、こっちの攻撃面の良さを出したい」（瀬沼優司）。勝点３を奪うには、ゴールが必要不可欠。前節、磐田と乱打戦を繰り広げ、３―３に持ち込んだ福岡は立て続けに失点した後、果敢に前からプレスを掛けることでリズムを掌握した。その参考資料を活かさない手はない。高い位置からファーストディフェンダーの瀬沼が追い、それに追随するように周囲が刺さっていく組織的な守備は、今や栃木の代名詞になっている。名門・磐田の看板に怯むことなく、序盤からアグレッシブに躍動し、「相手の良さを消し、自分達の良さを出す」阪倉サッカーの真骨頂を発揮したい。それが具現化できれば、ゴールは遠くないはずだ。

Ｊ２の戦い方に馴染めていない磐田は、４節終了時点で勝点を５つも落としている。前節も２点リードしながら守備が崩壊し、ドローに終わった。コンスタントにゴールできている一方で、失点が止まらないのが悩みの種。「我々の哲学は常に攻撃的」とシャムスカ監督は口にするが、攻撃は水モノであり、長いリーグ戦を勝ち抜く上で守備面の改善は急務だ。今節は伊野波雅彦が戦線復帰できる見込みだが、一人で問題は解決できない。福岡戦で２失点したセットプレーの対応を含め、チーム全体で守備意識を高めて立て直しのきっかけを掴みたい。

「やることをやれば勝てない相手ではない。チャンスで（ゴールを）狙いたい」
力強くゴール宣言をしたのは、４戦４発のエース瀬沼。磐田は間違いなく強い。難敵だ。だが、強いチームが必ず勝てる保証が薄いのが、サッカーの興味深いところ。一昨年はＦ東京を、昨年はＧ大坂を、グリスタで撃破した実績がある栃木。大物食いは、お手の物だ。大好物の強豪を食し、３月を勝利で締めくくる。

以上

2014.03.29 Reported by 大塚秀毅