浦和のペトロヴィッチ監督は前節の無観客試合の後、会見でこう言い残している。「私にとっても初めての経験。６万2000人は入るような大きなスタジアムに全く観客がいないのは何とも言えない感覚だった。練習試合のような雰囲気が漂う公式戦だった」。
結果は１−１のドロー。清水に先制され、後半に左ウイングバックにポジションをシフトした原口元気が同点弾を叩き込む展開だった。ゲームの流れから考えると、ここに浦和サポーターの後押しがあれば結果は違ったものになっていた可能性もある。それだけに残念な結果と言えるだろう。

この清水戦でポイントとなったのが、原口の積極的な仕掛け。リスクを怖れないアグレッシブなドリブルは、結果的に清水ＤＦを押し込む原動力となった。また、逆サイドではリーグデビュー戦となったルーキー関根貴大の強気のドリブルも光った。無観客試合明けで、多くの浦和サポーターがノエスタに詰めかけるであろう今節。浦和の“果敢な仕掛け”はさらに加速するに違いない。

一方、前節の名古屋戦で今季初黒星を喫した神戸は、先制してからの逆転負け。内容では狙い通り相手以上にボールを保持したものの、最後のフィニッシュがなかなか上手くいかない。毎試合失点している守備も課題だが、攻撃のタクトを振る森岡亮太は名古屋戦で見えた課題をこう話す。「（ボールを）つないで、つないでが頭の中で先行していた。リスクを冒せず、簡単に守られた感じ。シュートまでのどこかでもっと仕掛けていかないと。そこが課題だと思います」。奇しくも原口や関根のドリブルでリズムをつかんだ浦和とは対照的に、神戸の課題は“仕掛け”。今節のポイントもここに集約されるのかもしれない。

そういう意味で注目したい選手が神戸には２人いる。１人はキャプテンの相馬崇人だ。「サイドで１対１の勝負を仕掛けていく。自分の役割としてはそこかなと思う。（古巣対決について）知っている選手とかもいるし、やっぱり燃えるものはありますしね」。左手小指骨折で出場ができない茂木弘人とは、また違う“色”を持つ相馬が、果たしてピッチにどんな絵を描くのか。
そしてもう１人がエース小川慶治朗である。「（左サイドは）相馬さんとのコンビなので、すごく仕掛けていけると思う。個人的にも最近は仕掛けが少ない。まだリーグ戦でシュート１本ですし。浦和サポーターを黙らせる一発を決めて、チームにも、自分自身にも勢いを付けたい」。
幸い、神戸はホームでの浦和戦は、リーグ戦では２００８年の第10節以降５試合連続負けなし。しかも４連勝中。この相性の良さも味方につけて、ガンガン仕掛けまくって勝点３をつかみたい。

以上

2014.03.28 Reported by 白井邦彦