岐阜の今季の実力を示すと同時に、湘南のしたたかさ、勝負強さをまざまざと見せつけられるという、2つの側面を持った試合だった。
立ち上がりから主導権を握ったのは岐阜の方だった。岐阜はDFラインを高く上げ、湘南の両ウィングバックの裏のスペースを果敢に狙った。4分には左サイドを突破したFW難波宏明のマイナスの折り返しを、ニアでMFスティッペが合すが、これはシュートミス。その後も左MFの高地系治がドリブルで仕掛けたり、DF杉山新のオーバーラップからいい形を作るなど攻勢を仕掛けたが、ゴールを奪うまでには至らなかった。
こうなると湘南のしたたかさが顔を出してくる。今季の湘南は3バックからのロングフィードが多くのチャンスを生んでいる。三竿雄斗、丸山祐市、遠藤航の3人はフィードの正確性が持ち味で、彼らが巧みにスペースにボールを落とすことで、菊池大介、武富孝介、大槻周平、永木亮太というスピードと技術のある選手が前向きに仕掛けられる。さらにFWウェリントン、MF宇佐美宏和のパワー系の選手が起点を作るため、前への圧力は一気に強まる。
立ち上がりこそ、岐阜の前に沈黙していたが、徐々に正確なロングフィードが岐阜の組織に歪を生み出し、24分、湘南に先制点が生まれた。中央でボールキープした右のウィングバック宇佐美が左に開いた大槻にフィード。大槻のクロスをウェリントンがドンピシャヘッドで合せた。43分にも湘南はウェリントンが落としたボールを武富がドリブルで持ち込み、強烈なシュート。右ポストに当たったこぼれを、MF永木亮太が豪快に蹴り込んだ。
2−0。岐阜にとっては非常に悪い試合展開となったが、ここで流れを変えたのが、ボランチの位置から再三裏にいいパスを出していた水野泰輔だった。前半アディショナルタイム、水野は中央でクリアボールを拾うと、ドリブルをしながらナザリトの裏へ抜け出す動きを見逃さず、右のスペースにスルーパスを通す。これをナザリトが高い身体能力を駆使して決めて、岐阜がいい時間帯に1点を返した。
後半、ラモス瑠偉監督は策に出た。難波に代え、DF三都主アレサンドロを投入。右MFだったスティッペをトップ下に、?地を右MFに置き換え、三都主を左MFに置く、【4-2-3-1】にシフトチェンジ。狙いは相手の3バックの前のスペースで数的優位を作って、両ウィングバックを下げさせることで、湘南の厚みのある攻撃を回避すると共に、自分たちの武器である攻撃力で同点、逆転を狙うものであった。積極策を講じてきたラモス監督。指揮官のこの狙いに応えるように、岐阜は前半立ち上がりの動きを取り戻し、攻撃の形を作った。
しかし、やはり湘南はしたたかだった。守備面では水野の巧みなパスとドリブルに苦しんだが、攻撃面では水野のプレスバックが遅れる分、中央に起点を作りやすい。これをしっかりと利用して、守備で奮闘しながらも、ウェリントンと武富、大槻の3人をボールの落ち着きどころとしながら、岐阜の守備のずれを効果的に狙ってきた。
86分には空いた右サイドのスペースを交代出場のMF藤田征也に突かれ、フリーで折り返されると、攻撃参加をしていた三竿に蹴り込まれ、試合を決定づけられる3点目を奪われた。
湘南の試合巧者ぶりをまざまざと見せつけられ、1−3とリードを広げられた。しかし、これで沈まなかったのが、今年の岐阜の持つ力であった。湘南同様に守備面で苦心しながらも、それに忙殺されず、パスを繋ぎながら前に運んで、数的優位を作りながら相手の裏を突く攻撃を貫く姿勢を見せた。だからこそ、アディショナルタイムに交代出場の右サイドバック・田中秀人のビルドアップから、中央で水野がボールを受け、またも裏に抜け出したナザリトに浮き球のスルーパス。これをナザリトが冷静に蹴り込んで、1点差に迫った。
昨年までの岐阜なら、3点目が入った時点で試合は終わっていただろう。しかし、今年は息を吹き返し、1点差に迫った。敗れはしたが、岐阜にとっては大きな前進を示す試合だった。もちろん、冒頭で述べたように、湘南のしたたかさ、実力をまざまざと見せつけられた試合であったのも間違いない。だからこそ、『負けたけど、良かった』ではなく、『良かったのに負けてしまった』と反省し、次以降の試合につなげなければならない。そうすることで、岐阜はまた新たな進化を見せてくれるだろう。
以上
2014.03.23 Reported by 安藤隆人
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