リーグ戦では未勝利が続く両者は、Jリーグで23回目の対戦を迎える。対戦成績は、F東京の7勝6分9敗とやや分が悪い。昨季は2―0、2―2と東京側が勝点4を奪ったが、今季も同様の打ち合いを挑むか、どうかがまず試合の焦点だろう。
川崎Fは相変わらず派手だが、公式戦4連敗中と元気がない。リーグ3試合で6得点と自慢の攻撃力は健在。レナト、大久保嘉人、中村憲剛の3人が率いる攻撃は迫力十分で、前節大宮戦でも3ゴールを奪っている。ただし、一方で8失点の脆弱な守備が未勝利の原因となっている。さらに、19日にはアウェイでウェスタン・シドニー・ワンダラーズとのアジアチャンピオンズリーググループリーグ第3節を戦い、疲労の蓄積も予想される。チーム状態は、決して良好とは呼べないからこそ、この試合を契機にしたいと考えているだろう。
一方で、F東京はJリーグ初のイタリア人指揮官であるマッシモ・フィッカデンティ監督を迎え、新たなスタイルの模索を続けている最中だ。リーグ戦では接戦をモノにすることができず、勝利を挙げられていない。その中でも、マイナーチェンジを繰り返してきた。基本システムは4―1―2―3だが、19日に行われたヤマザキナビスコカップ鹿島戦で前線の3トップを2トップ+トップ下の形に変更。それが奏功し、リーグ戦で首位を走る鹿島を3―1で破った。その試合こそ、マッシモ・トーキョーがやりたいサッカーだったと言えるだろう。
F東京は08年から一貫してパスをつなぐスタイルに取り組んできた。しかし、今季は頑なにパスをつなぐだけではない。ミステル(フィッカデンティ)は「攻撃と守備は独立したものではなく、常に密接な関係にある」と言い、攻守一体のトータルフットボールを目標にしている。守備はコンパクトな陣形を維持しつつ、規律よく統率を図る。事前に相手の対策を行い、その戦略を基に勝利を目指す。攻撃はポゼッションスタイルを放棄したわけではなく、あくまでそれを手段の一つとして捉えている。リードを奪えば、ボールをつなぐ時間も存在する。かと思えば、一本のパスで急襲するなど、これまでにない形も見せている。時間帯、シチュエーション別に、適正な判断を試みる。それが合致したときに見せる機能美は、これまでにない新 たな魅力と呼べるだろう。ヤマザキナビスコカップ鹿島戦で見せたそのような戦いをこの試合でも見せられるかが、リーグ初勝利をたぐり寄せる最大のポイントだ。
そして、この試合は、川崎Fの攻撃を封じ、相手の穴をどこまで突けるかが肝となる。彼らの圧倒的な攻撃を完封するのは、かなりの労力を要する作業だ。MF高橋秀人は「川崎Fは数十センチ寄せきれなくてパスを通されたり、タイミングを外してシュートまで持っていく力はJリーグの中でもトップオブトップのチーム。体を投げ出したり、少しでも相手に寄せきったりというところにこだわらないといけない」と言う。また、2トップを継続する場合は、相手のドイスボランチをトップ下一人に任せてしまうと、たちまちそこから決定的なパスを送り込まれてしまう。守備時には2トップの一人を下げて対応させることも徹底しなければいけない。F東京は、昨季のようなド派手な打ち合いを望んではいないだろう。多摩川を挟んだリバーサイドマッチを緻密な戦術で制す。
以上
2014.03.22 Reported by 馬場康平
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