今シーズンのヤマザキナビスコカップが開幕する。2分1敗でJ1リーグ戦13位のF東京は、3連勝でリーグ首位を走る鹿島をホーム・味スタに迎える。04年、09年の覇者のF東京。そして、97年、00年、02年、11年、12年と最多5回の優勝を誇る鹿島。ともにタイトルホルダーだが、現在のチーム状態には大きな差がある。チームを再建中のF東京は今季未勝利が続き、このカップ戦を転機にできるか。盤石の鹿島に挑む。
F東京は15日、03年以来負けなしが続いていたアウェイ神戸戦で、1−2と敗戦を喫した。ただし、光明を見出せた試合でもあった。それは、米本拓司が交代出場してシステムを変更した66分過ぎからの戦いにあった。その時間帯から前線の形を「3トップ」から「2トップ+トップ下」に変更。そこから中央でのパス交換が増え、サイドバックが積極的に攻撃参加する形が圧倒的に増えた。ウイングがサイドに張り出す3トップは選手間の距離が離れ、コンビネーションでの崩しにはやや不向きだった。個人での独力突破にも限界があり、テコ入れが必要となっていた。それだけに、敗れはしたものの、ポジティブな要素も少なくなかった。
今週は、その戦いを踏まえ、変則的な3トップとして1トップ+2シャドーに近い形もテストした。昨シーズンまでのポゼッションをベースにした戦いを、現在のチームに組み込むことができれば、さらに攻撃の幅は広がりを見せるだろう。
F東京は今週、今季ここまで公式戦の出場機会に恵まれなかった選手たちの起用に踏み切ることになりそうだ。マッシモ フィッカデンティ監督は、試合2日前の戦術練習で主力組のメンバーをリーグ第3節から大量に入れ替えた。右サイドバックには松田陸を配置。センターバックには森重真人の相棒に、吉本一謙が入り、中盤には野澤英之、米本拓司、羽生直剛が並ぶ。前線は平山相太、河野広貴、石川直宏といった面々が名を連ねた。F東京は、23日のリーグ第4節で川崎Fとの多摩川クラシコが待っている。主力を休ませつつ、新たな戦力の発掘がこの試合でのテーマとなる。昨季に続くヤマザキナビスコカップ・鹿島戦での抜擢に期待が掛かる野澤は、「このチャンスをモノにできるかどうか。去年の初先発した試合はまだチームに入ったばかりで自分に自信もなかった。前半は緊張して何もできなかった。この1年で自分がどれだけ成長できたかが楽しみだし、やれる自信はある」と言い切った。
フィッカデンティ監督は「カップ戦を決して軽視するつもりはない。ただ、チームには、プレーする時間が少ない選手もいる。特に若い選手はプレッシャーが掛かった状態で良いプレーをすることが、今の段階では重要。彼らを判断する絶好の機会でもあるし、彼らにとっては自分たちの良さをアピールする最高の機会になるはずだ」と、この試合に向けてコメントした。
鹿島も週末にC大阪戦を控えており、メンバーを入れ替えてくるだろう。今季は、より穴の少ない守備を主体に、ダヴィのパワフルな突破を生かしたサッカーで効率の良い試合運びを見せている。中盤にはモビリティの高い選手が揃い、上質なパスの出し手もいる。さらに、そこにJ1リーグ戦第3節でプロ初ゴールを決めた豊川雄太をはじめ、若いタレントが次々とでてきている。新外国籍選手の融合も含め、さらにチームを盤石に固める段階へと入っていく。
「鹿島は、日本サッカーの歴史の一部と言える重要なクラブだ。タイトルを奪うことに慣れている、そういったメンタリティを有している。彼らが長い時間を掛けて築いたメンタルを、自分たちは短い時間で身につけていかなければいけない」
F東京のミステルはそう言って、鹿島に対して最大限の敬意を払う。今季対戦したどのクラブよりも簡単に隙を許さず、隙を見逃さないチームでもある。
F東京復帰後初先発が濃厚な羽生は「味スタのピッチに立てるこを幸せに感じる。その気持ちをプレーで表現したい。チームが勝ち切れていない中、しっかりと結果を出したい。今できることを全力でやって味スタで勝利する姿をサポーターに見せたい」と言う。さらに、右肩を負傷して出遅れていた米本は「1勝が自信になる。内容よりも結果。決定機を5回つくられても1回のチャンスをモノにして勝ちたい」と続く。勝利という名の良薬を手に入れられるか。それが、鹿島から挙げた一勝となれば、その価値は大きいだろう。勝ち方を知りたいF東京が、それを最も知る鹿島に挑む。
以上
2014.03.18 Reported by 馬場康平
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