リーグ戦では思うような結果の出ていない両チームが、勢いをつかむきっかけにもしたいヤマザキナビスコカップ開幕戦。アイスタでの両チームの因縁もあり、新戦力のポテンシャルを見定めるチャンスでもあり、非常に楽しみの多い平日夜の注目イベントだ。

開幕の名古屋戦では歓喜の逆転勝ちをしたものの、その後は２連敗している清水にとっては、今季のホーム初勝利を目指す戦いでもある。ホーム開幕の横浜FM戦（第２節・３月８日）は、内容的にもかなり不満の残るゲームだったが、１−４で敗れた前節・Ｃ大阪戦はスコアほど差のある内容ではなく、とくに前半はアウェイで明らかに主導権を握れていた。だが、イージーな失点が多いのは開幕から続く課題で、結果を出すためにはこの部分の改善が急務となる。
ただ、今回はゴトビ監督がメンバーの入れ替えを示唆しており、経験の少ない選手も何人か起用されそうな中で、どれだけ安定した守りができるかという部分が大きな注目点となる。だが清水の場合は、それでも守りから入ることはありえない。むしろ、若さの勢いを生かして自分たちが主導権を握り、相手の攻撃機会を減らすということを目指すはずだ。その中で、カウンターに対するリスク管理や、裏を狙ったロングボールへの対応、セットプレーでの守りなどがポイントになるだろう。

……といった戦術的な話よりも、今回楽しみなのは、誰が出て、どんな活躍をするかという部分。とくにリーグ戦ではまだ出場機会のないオランダ帰りの高木善朗は、清水サポーターもぜひ観たいはず。本人も「いつ出番が来てもいいように準備はできています。ヤマザキナビスコカップは出られれば初めてになるし、そこで結果を出せば次に繋がると思います」と語っており、ゴールに直結するプレーという持ち味を存分にアピールしてくれるだろう。
練習試合でゴールを量産しているＪＦＡアカデミー出身のルーキー金子翔太も、将来が本当に楽しみな選手の１人。戦術眼も高く、２列目より前のポジションならどこでもやれるので、チャンスは大いにあるはずだ。その金子の活躍もあって、今季のセカンドチームは、２／２０ vs常葉大で８−２、２／２６ vs光州FCで３−１、３／２ vs同志社大で６−０、３／９ vs関東学院大で４−１と、練習試合で昨年まで見られなかった高い得点力を見せている。それをＪ１のチームに対しても発揮できるかどうかが注目される。
そのほかにも、守備面を鍛えて急成長を遂げつつある六平光成や、今季は開幕初先発をつかんだ竹内涼など、十分に計算できる戦力もいる。開幕戦では十分に自分の力を発揮できなかった竹内は、「（ヤマザキナビスコカップ開幕戦に出られれば）もっと落ち着いてやれるだろうし、僕はナイトゲームが好きなので、今度は自分の力をしっかりと出すことをまず第一に考えています。それができれば徐々にプラスαのこともできてくると思うので」と語る。それはほかの選手たちにも言えることだろう。

対する仙台は、昨年まで６年間チームを率いた手倉森誠監督が、五輪代表監督就任のために退任。今季は元オーストラリア代表、グラハム・アーノルド監督の下で新たなスタートを切っている。そんな中で、リーグ戦では１分２敗とまだ勝利がないが、前節は攻撃力のあるＧ大阪を無失点に抑えており（０−０のドロー）、伝統的な堅守の片鱗を見せている。アーノルド監督も「ディフェンスでは強いということが、ここまで証明できています。ただ、セットプレーからの失点があるので、そこは改善していかなければいけません」と語っている。
また仙台のほうも、３連戦の中での水曜日の試合にメンバーをある程度変更して臨む可能性があるが、もちろん今季の公式戦初勝利は何としてもほしいはずだ。昨年までは「鬼門」だったアイスタだが、11月の天皇杯４回戦で初勝利を挙げ、もはやイヤなイメージはないだろう。そのときは堅守速攻のスタイルで結果を出したが、今回はどんな戦い方でアイスタに挑んでくるのか。それも楽しみな要素となる。
逆に清水としても、天皇杯の悔しさを晴らし、再びアウスタは鬼門というイメージを仙台に植え付けたい試合。若い選手に試合経験を積ませながらも、結果を第一に考えるという難しいミッションが待っているが、それに向かうエネルギーや情熱は、両チームともいつも以上に大きなものになっている。

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2014.03.18 Reported by 前島芳雄