柱谷兄弟対決の第3ステージは兄・幸一監督率いる北九州が勝点3を手にした。今季初勝利に加えて、J2昇格後の通算50勝目というメモリアルも重なり、スタジアムはようやくの歓喜に包まれていた。
快晴で春めいた陽気の本城。メインスタンドから向かって左から右に吹くお決まりの風も今日はいくらか穏やかだった。ピッチコンディションも良好。だが、その万全すぎる環境にありながら前半から両チームが、それぞれに性格の異なるイージーミスを際立たせてしまっていた。
水戸を苦しめたのは柱谷哲二監督が「僕の嫌うところ」という判断ミス。哲二監督は「リズムを作る前にボールを入れてしまったり、40メートルくらいのシュートを狙ってみたり」と指摘、安易な判断から簡単にボールを失ったことには厳しい表情を浮かべた。記録では水戸のシュートは14本。それは北九州の6本の倍以上に当たるが、ペナルティエリア内ではなく大半が北九州のディフェンスラインを割れずにミドルやロングレンジから放つだけだった。
ところが北九州も簡単にボールを奪うことができたにもかかわらず、パスが繋がらずカウンターに入れなかった。連動性がまだ高まってきていないことが一因だろうが、ボールホルダーに選択肢が少なく苦し紛れのパスがイージーミスを誘発した。
試合が動き出したのは後半に入ってから。「勝負を焦らないこと」という指示を受けた水戸は51分、自陣で粘り強く保持して相手を引き寄せると、船谷圭祐が間隙を突いて中央突破。スルーパスを馬場賢治がフリーで受けてペナルティエリア内から狙い、惜しくもDFにはじかれるもののこれを契機に水戸にリズムが生まれる。「ミスマッチが起きているわけだからもっとリズムを作ることを大事にしていかないとだめだ」と哲二監督。指揮官を納得させられるだけのプレーができたわけではないだろうが、60分にも三島康平がエリア内からシュート。北九州のGK大谷幸輝の好セーブに阻まれるも後半の立ち上がりは水戸の時間帯が続いていた。
しかし、ゲームをモノにしたのは北九州だった。選手たちは「奪ったボールはしっかり繋いでプレーをはっきり」という言葉で後半のピッチに送り出されているが、まさにその点が前半から改善。徐々に保持する時間が増してくる中、64分にはこの日のヒーローとなる原一樹を途中投入し、矢継ぎ早に川島大地も入れて攻撃を活性化させた。
ゲームを決したゴールは83分、カウンターからだった。自陣でパスカットした冨士祐樹が小手川宏基に預けてスピードに乗って左サイドをオーバーラップ。再び左の高い位置でボールを受けるが「クロスのタイミングでDFが合わせてくる」ことを逆手に取り、急にスピードを落としてマイナス気味にセンタリング。タイミングをずらすことで狙い通りにギャップが生じ、ゴール正面の大島秀夫がフリーに。これをダイレクトで大島が合わせ、ゴール方向に転がったところを原一樹が冷静に流し込んだ。「(GK本間幸司との)駆け引きにうまくハマらずに落ち着いて決められて良かった」と原。先制後の北九州は退場者を出し防戦一方となるが、この日のヒーローは「相手が取りに来ている中でしっかりゼロに抑えた結果が勝ちに繋がった」と守備陣を称えることも忘れなかった。
ともにイージーなミスからゲームをうまく作れなかった試合ではあった。しかし終盤になるにつれてゴールへ向かおうという姿勢が明確に現れ、勝ち負けの結果は付いたものの見応えのある試合になったことは間違いない。柱谷兄弟対決はこれで1勝1分1敗と完全なイーブンスコアとなり、次戦への楽しみもまた広がった。
そしてこの試合で北九州はJ2リーグ戦通算50勝目を記録。思い起こせば2010年3月のJ2初勝利は、50勝目と同じ第3節で、やはり同じように退場者を出したが守りきった試合だった。ただ同じにしてはならないのはその後のシーズンの戦い方だ。両試合でピッチに立ったのは冨士だが、50勝目の呼び水となるクロスを送ったチーム最古参のハードワーカーは力強くこう言った。「同じだけど、同じにしない」。今シーズンはチームの進化とともに勝利を重ね、より上の順位を目指していく。勝点3の重みを改めて胸に刻み、シーズンの端緒を開く勝利となった。
以上
2014.03.17 Reported by 上田真之介
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