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【J1:第3節 甲府 vs 新潟】レポート:甲府vs新潟は現代の川中島か?お互い特徴を出したもののまたしても1−1の引き分け(14.03.16)

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今季初めて山梨中銀スタジアムで開催される試合を祝うにふさわしい快晴の天気だった甲府市。芝生の状態も大雪に長く閉ざされていたとは思えないほど良好、空気も澄んでいて見える範囲の山はすべてクリアに見えた。開幕第1節が大雪の影響で急きょ、国立競技場開催になったが、機械化除雪部隊を山梨県に派遣してくれた新潟県の星・アルビレックスを快晴で迎えた第3節。乗り込んできた新潟の柳下正明監督が、「新潟は今週、ずっと雨や雪で濡れているピッチで練習したが、久しぶりに太陽の下で(乾いた芝生の上で)プレーしたからボールが走らず足につかなかった」という言葉を聞いて、新潟の雪に対する覚悟(備え)のすごさを感じた。

甲府の先発は予想通りの盛田剛平1トップの3−4−2−1。新潟は3試合連続で同じ先発メンバーではなく、田中達也に代わって加藤大が初先発の4−4−2。柳下監督は新潟の前半を「ひどすぎた」と評したが、甲府からすれば37歳、10年前まではFW、ちょっと前までDF、そして今年からはFW&DFの「スーパー盛田」が機能する攻撃を見せることができた内容。利き足の頭でも本当の足でもプレッシャーの中でかなりの精度でボールを繋ぐ技術の高さがすばらしい。チームメイトも盛田を信じてサポートに行くことができるから、より繋がる。そのうち盛田もマラドーナみたいに、ふくらはぎにレガースを入れなければならないようになるかもしれないが、盛田の存在が甲府のシュート数・決定機の数を増やすことに繋がっている。
盛田自身も「おじさん頑張っている」と言うが、その37歳のFWがJ1の舞台でゴールを決める。「盛田が守田(達弥)の守るゴールに決める」なんて言葉遊びを頭の中でやってはいたけれど、本当に決めた。

前半はクリスティアーノが厳しいマークで何度か傷んでカリカリし始めているのが気になってはいたけれど、総じて自分を抑えうよとしていたし、彼と同じシャドーに入った河本明人が盛田とのいい距離感でサポートできていたので決定機は来ると思っていた。前節まで1試合平均0.5点打線だったが、クリスティアーノの心が整い決定力がJ1にマッチすれば最低でも1.2点打線くらいにはなるはずだ。先制点の場面はクリスティアーノがアシストに回り、決めるのは盛田(32分)。左からクリスティアーノが入れた山なりクロスにジャンプして合わせた。189cmの長身の頭、それも先っぽに当たったボールが守田の守るゴールにイン。一瞬誰が決めたのかわからなかったが、河本が最初に盛田に抱きつき、団子の中心が飛び抜けて高かったのでわかった。みんながうれしいゴール。
「このまま勝てば盛田祭り…」と思いつつも追加点なしで勝てるとは思えない新潟戦。ゴールの高揚感とアドレナリンが引き始めた前半の終盤からなんとなく新潟のポゼッション率が高くなってきて、後半の難しさを予感させる。

そして、後半。ハーフタイムにネジを巻いてきた新潟は主導権を取る。最初は“主導権はあるけれど攻めあぐね”的な感じだったが、川又堅碁が抑えられても岡本英也や田中亜土夢らアタッカーに加えて、サイドバック金珍洙の積極的な上がりで甲府を追い詰める。それを受けた面もある甲府は攻撃の手数が不足。バランスを崩して攻撃を仕掛ける新潟に対してカウンターを仕掛けたい気持ちはあるけれど、少ないチャンスの芽を活かしきれない。シャドーに入るクリスティアーノの特徴を充分にわかっていない面もあるし、ルーズボールを味方同士でお見合いをする場面もあった。こういう課題は時間とともによくなっていくことはわかっているが、この試合に関しては(新潟は勘弁してくれないだろうなあ)という思いが湧いてくる時間帯。68分頃には新潟の決定機が重なって、甲府は必死のクリアを連発して逃れる。甲府は35歳でもダイナモの石原克哉を投入して対策をするが流れはなかなか変わらず、73分に田中(亜)の正確で速いCKから川又に決められてしまう。彼は自身のコンディションを上げられないことが不満のようだが、川又がいるからチームメイトが生きる面もある。川又には、青山直晃がマークに付いていたが、味方同士で重なってマークをズラしてからフリーになるうまさは“さすが”だった。外された青山は試合後に「開幕戦(対鹿島)でもマークを外されてやられているので、なかなか立ち直れないですね」とコメントしてくれたが、顔を上げてしっかり話す姿に逃げの姿勢はなく、これを糧にするはず。同点になってから、甲府のセットプレーでは自身のミスを取り戻そうとしていた姿勢にもそれを感じた。

城福浩監督は盛田を下げ、水野晃樹を投入して、クリスティアーノをシャドーから1トップに上げて2点目を狙いに行く。1−1となり、時間も後半のいい頃合いで内容はオープンになったので甲府・新潟双方に2点目のチャンスがあった。甲府の選手は新潟の攻撃を凌ぎつつ決定機を作れるようになっていて、石原に2回、クリスティアーノにも1回決定機があった(個人の感想です)。シュートには至らなかったけれど、GK岡大生のロングロングキックを受けた水野にもあった。なかでも石原が決めていれば、37歳盛田と35歳石原のゴールで「オジサン祭り」になっていたはず。
逆転を狙う新潟の柳下監督はホージェル ガウーショを79分に投入してきたが、映像で見るのと生で見る印象は違って、ニックネーム通り、馬に乗っているようなスピードでドリブルをするから、甲府のボールハンター・新井涼平もサッカーのルールを順守して止めることができない。試合後に話を聞くと普段は表情をあまり変えない新井が一瞬「あれはすごい」的な顔になったほど。結局、カウボーイにミドルシュート決められることはなかったが、甲府も決めることができずに2014年の第1次・川中島は1−1の引き分け。
諸説あるようだが武田信玄と上杉謙信の戦いは最終的には引き分けで、甲府と新潟も昨年から3戦連続の1−1の引き分け。甲府のゴールは佐々木翔、柏好文(現・広島)、盛田剛平とバラバラだが、新潟は3ゴールともに川又で、甲府に対する相性は岡山時代からいいまま。甲府vs新潟は甲斐と越後の戦いとちょっとリンクしているようで――勝ちたかったけれど――巡り合わせはおもしろいと感じてしまう。第28節(10月18日)の新潟対甲府戦でtotoを買うときは忘れずに「0」もマークしましょう。サッカーでは譲らないけれど、ありがとう新潟県、除雪の恩は忘れません。

以上

2014.03.16 Reported by 松尾潤
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