やはりサッカーは難しいということを思い知らされた。攻撃力の大幅アップを狙った工藤壮人、レアンドロ ドミンゲス、レアンドロ、田中順也の同時起用。4選手のキャリアハイゴール数の合計が62という脅威のアタック陣は、得点力アップの期待とは裏腹に全く機能しなかった。
名古屋の西野朗監督も、当初はこの4人を並べた柏が立ち上がりからアグレッシブに出てくると予想し、選手たちには「最初は圧力を受けても守備意識を高め、コレクティブにカウンターを仕掛けながら、まず15分は戦え」と指示を送った。ところが西野監督が「想定外」と述べたように、柏が思いのほか前に出てこない。
「前へ出てこない」というより、前への意識が強すぎる前線4枚は前に張り付き、“4トップ状態”になってしまい、自陣から丁寧にパスを繋いでビルドアップをして攻撃を組み立てていきたい中盤から後ろとの意思疎通が図れていないため、4−2−4のようなシステムになっており、チームとしての形が見えなかったと言う方が適切だろう。
したがって攻め手は後方からのロングボールのみ。だが、高さに強い名古屋のセンターバック2枚、田中マルクス闘莉王と大武峻によってロングボールはいとも簡単に弾き返され、選手同士の距離が悪い柏とは対照的に、コレクティブに統率の取れた名古屋が弾き返した後のセカンドボールを支配することで、必然的に主導権を握っていく。柏のアタック陣が連動して崩す場面は、皆無に等しかった。
ただ、名古屋も主導権こそ握ってはいたが、ポゼッションのわりには数多くのチャンスを作り出せたわけではなかった。それでも西野監督の目指すコンセプトに沿ったスタイルは徐々に固まりつつあると感じさせ、闘莉王を中心とした最終ラインからのビルドアップに、サイドバックの攻撃参加を絡め、長短のパスを織り交ぜながら攻撃を展開していくという、以前の名古屋との違いは明らかに見て取れる。守備の局面でも切り替えが早く、素早いブロック構築によって柏の攻撃をスローダウンさせ、バックパス頻発状態に追いやる。名古屋は攻守において非常に安定した試合運びを見せていた。
拙攻と停滞。時間が経過しても柏には解決策が見えてこない。好機は良い形でボールを奪った時のカウンターだけだ。65分には橋本和のインターセプトから一気にカウンターを仕掛け、バイタルエリアまで攻め込みレアンドロ ドミンゲスがゴールを狙うも、力のないシュートはGK楢崎正剛が難なくキャッチした。すると今度は名古屋が右サイドからカウンターを仕掛ける。右サイドの深い位置まで運んだ矢野貴章がクロス。ファーサイドのケネディが高さを生かして高山薫の上からヘッドを叩きつけてネットを揺らした。ゴール前の対応を問う以前に、切り替えの遅れた柏はドリブルで運ぶ矢野への対応に遅れ、フリーでクロスを上げさせてしまった時点で勝負ありだった。
リードを奪った名古屋は自陣にブロックを作り、スペースを消して柏の拙攻に追い打ちを掛ける。柏の攻撃が唯一連動したのは、ハン グギョンの縦パスをレアンドロがダイレクトでスペースに流し、外から中に入ってきた工藤がディフェンスラインの背後を突いたシーンだが、これはタイミング良く飛び出した楢崎の好セーブが阻んだ。
前節まで2試合で4失点を喫した守備陣とは思えないほど、名古屋の守備の安定感は高かった。今シーズン初めて無失点に抑え、「ラインコントロールをしたうえで、中盤をコンパクトにマメに動かしていた。それでセカンドボールが良い距離感の中で拾えたり、2つ目、3つ目のアプローチで取れたり、良い形でボールを取るということは少しずつ意識できている」と西野監督も十分な手応えを感じたようだ。
工藤、レアンドロ ドミンゲス、レアンドロ、田中の強力アタック陣は凄まじい破壊力を見せるどころか、機能不全に陥った。試合後、柏の選手たちの多くが「どう攻めていくのかがはっきりしない」「攻め手がない」と課題を述べていたが、その言葉はとてもネルシーニョ監督体制6年目の成熟を武器に「リーグタイトル奪還」を合言葉にするチームのものとは思えなかった。
これが一時的な不振なのか、選手の組み合わせの問題なのか、この試合だけで結論を出すことはできないにしても、開幕3戦で2分1敗という成績には、危機感を持つべきである。
以上
2014.03.16 Reported by 鈴木潤
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