主に東北地方と北関東に激甚な被害を残した東日本大震災が起きた3月11日が今年も近づいてきた。Jリーグでは毎年この時期に被災を経験した鹿島アントラーズとベガルタ仙台が対戦することが恒例となりつつある。両チームともに応援する人に勝利を届けたい気持ちを抱えながら、どちらか片方は涙を飲まなければならない場合もあり、岩手出身で復興支援活動に尽力してきた小笠原満男は「複雑と言えば複雑」と話す。しかし同時に、この時期に試合が行われるメリットも感じている。
「発信できる人が発信していかないと。言わないと伝わらないことに気づかされた」
今年1月、豪雨災害に見舞われた熊本で開かれた講演会に招かれた小笠原は、自分が熊本で起きた災害が、その後どうなり、現地がどういう状況なのかをまったく知らないことに気づかされた。だからこそ、東北の状況を多くの人に伝えようとこの時期には積極的に口を開き、現状を訴えている。
とはいえ、3年というのは長い月日だ。
「3年で中学生は高校生になる。普通の3年を過ごせなかった」
その喩えは、ただの数字ではなく、実感を持って響いた。
開幕のアウェイゲームを4-0で大勝した鹿島は、ホーム開幕戦を迎える。前節2得点を決めたダヴィのモチベーションは高い。
「今年は違う。家族も一緒だしリラックスできている。オレの頑張りでゴールを取りたい」
短いながらも日本語でホーム開幕戦への思いを伝えてくれた。特に、期待される得点については「オレのスタイル。ゴール前で待てる」と自分のやりたいプレーができていることが好調なスタートに繋がったと話す。昨季の10得点を上回るだけでなく、得点王争いに絡むくらいの活躍を期待したいところだ。
とはいえ、開幕戦を落としたとは言え仙台は注意が必要な相手だ。サイドにスピードの速い選手を置き、中央のウイルソンは強烈な存在感を放つ。前節、角田誠が負傷交代したが、ボランチとCBの守備力は固い。無理にこじ開けにいけばカウンターの良い餌食となってしまうだろう。
しかし、トップ下に入る土居聖真は「チャレンジする」と意気込む。
「たぶんボランチに潰されると思う。でも、やられ続けてもやることは変わらない。チャレンジする勇気を持ち続けたい」
鹿島がこの試合で勝利すればJリーグ通算400勝という節目を迎えることができる。数々の記録を打ち立ててきたこのクラブに、またひとつJリーグ最速の記録が加わる。
「Jリーグ最速ということもあるし、そういう節目を今季ホーム開幕戦で勝てば達成できることはモチベーションになる」
前節、久々の完封勝利に貢献した青木剛は、コツコツと積み上げられてきた勝利の歴史にまた一つ、勝利を積み上げることを誓っていた。
「練習や試合で苦しいときも、もっと苦しんでいる人がいるからと思うともっとがんばれる」
小笠原のその言葉に、両チームの選手の気持ちは集約される。応援するすべての人のために、最後の笛が鳴るまで鹿島の選手も仙台の選手も、全力を尽くして戦うはずだ。
以上
2014.03.07 Reported by 田中滋
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