本文へ移動

今日の試合速報

ルヴァン 準々決勝 第1戦
ルヴァン 準々決勝 第1戦

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第1節 東京V vs 松本】レポート:互いにスタイル貫く好ゲームも、松本が最後の走力戦を制す(14.03.03)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
オープニングゲームにふさわしい、非常に見ごたえある好ゲームだった。特に前半は、東京V、松本ともお互いのスタイルを存分に出し合い、攻め合う中での一進一退の展開で、敗れた東京Vのサポーターからも「前半はおもしろかった」との声が多く聞かれたほどのゲーム内容だった。

ハイプレッシャーをベースとする両チームの戦いとあって、序盤から球際の激しい走力戦となった。その中で、早くから試合は動き、互いにファーストシュートがゴールという効率的な展開でスタート。前半3分、岩上祐三の出した左のタッチラインぎりぎりへのループパスを鐡戸裕史が落とし、受けた船山貴之がドリブルでペナルティーエリア内に侵入。シュートを狙ったボールが中後雅喜の腕に当たったということでPKの判定が下った。5分、船山が自ら決め、松本が先制に成功した。
だが、その5分後だった。東京VはCKを入れた前田直輝が、平本一樹の戻しから左足で狙い、シュートセンス光る見事なゴールが決まりビハインドを脱した。精神的に落ち着いた東京Vは、11人中8人が東京Vのアカデミー出身者という部分でのプラス要素を生かし、息の合ったボール回しと絶妙なコンビネーションで松本陣内を崩していく。特に20分前後には主導権を握り、前田の右からのクロスに、中央で菅嶋弘希がスルーして中後がシュートなど、チームとしてアイデアを共有した攻撃も見られた。また、相手陣内までラインを上げたところでのセンターバック吉野恭平からの縦へのスルーパスも有効だった。
ただ、決定的なシュートを放てなかったことで、勝機は流れていくこととなる。

相手のビルドアップのミスなど、球の取りどころを見逃さない松本は、奪った途端に全員が目的をゴールに見据え迷わず動き出す。クロスボールに対して、中に少なくとも必ず2〜3人は詰めていたのを見ても、“攻め時”をチーム全員が共有できていた証拠と言えるのではないだろうか。新加入した田中隼磨のクロスの精度は絶品だけに、今季の松本のサイドクロスからの攻撃は相当なストロングポイントとなりそうだ。また、ゴール前に人数を掛けられるという点では、ボランチの喜山康平の積極的なミドルシュートも東京Vゴールを大いに脅かした。「ゲームコントロールをしながらゴールに絡める、怖い選手になりたい」との喜山本人の言葉通り、実に怖い存在だった。
そうした松本が押し込んでいた前半アディショナルタイム、FKのクリアボールに船山が思い切って右足を振り抜きスーパーゴール。相手にダメージを与えるのに最も効果的とも言える時間帯に、再びリードを奪うことに成功した。

後半、東京Vは1トップを平本から常盤聡へと代え、攻撃に変化を与えて逆転を狙いにいく。一方で反町康治監督は、ハーフタイムに「前田の対応をしっかりするように」と、相手のキーマン封じを指示している。より効果を発揮したのは松本だった。前半、得点以外でも決定的なシュート、味方を生かすスルーパス、クロスなど攻撃の格となっていた前田だったが、後半は自身も「消えてましたよね」と認めざるを得ないトーンダウン。その理由の1つとしては、前半あまりに自由を許してしまった対峙の鐡戸が、ハーフタイムに柴田峡コーチから「弱気にならず、警戒しすぎずに自分から仕掛けて守備に行け」とアドバイスされ、積極的なディフェンスに出たことにある。もう1つの原因が、「僕がどうこうというよりも、相手が疲れたというのも大きいと思います」と鐡戸が感じたように、運動量の低下も大きいに違いない。そして、前田に限らず、チーム全体が走り負けしたことが、この試合の勝敗を分ける最大原因となった。三浦泰年監督も、「今日は、最初から最後までは走れなかった」と、真摯に認めている。
また、走力が落ちてしまったことで、セカンドボールがほとんど拾えなくなり、後半から入ったフレッシュな常盤の創造力をフルに活用することができなかった。加えて、松本にとっては、「後半、平本さんがいなくなってターゲットがなくなり、前にボールが収まる人がいなくなったし、入ってきた常盤選手と(2トップ気味の)高木(大輔)選手は2人とも動くタイプで似ていたので守りやすかったのかもしれない」(喜山)。
スタミナ勝負となれば、松本には3年間徹底して積み上げてきたという自信がある。徐々に走力で差が出たことで、東京Vは後手に回り、押し込まれる時間帯が長くなり、後半43分にまたしてもセットプレーからの流れで船山にハットトリックを許しダメを押された。

90分を通してみれば、ある意味「完敗」とも言える内容・結果となったが、三浦監督は次のように語っている。「今日の90分の中で、『走った』と評価してあげられるのは40分ぐらい。でも、今後戦術的に集団、グループでコンセプトをしっかり落とし込んでいって、50分、60分、70分、そして最終的に勝利というものをつかめるような集団に育てていかなければいけない。ただ、今日の試合を見て、時間はかかるかもしれないけれど、彼らが成長していく第一歩であることは証明できたのではないかと思っています」
実際、選手たちも40分弱の戦いまでは、手応えを感じていたに違いない。楽しんでプレーしている様子が見ている側にも大いに伝わってきた。だからこそ、サポーターの「おもしろかった」の声に繋がったに違いない。
ただ、勝負の世界である。この敗戦を「良し」とするわけにはいかない。その上で、前田に尋ねた。負けたこの試合で、あえての収穫は、と。「自分たちが強くないとわかったことです。練習試合などでJ1チームに勝利したり、良い内容のゲームもありましたが、勘違いだとわかりました」。この答えが返ってきたことで、指揮官の語る「成長していく第一歩」であることをはっきりと確信できた気がした。

エースのハットトリックで快勝した松本は、最高のシーズン幕開けとなった。一昨年、昨年と「走って走って、相手より速く走る」徹底的なハードワークをベースとしたスタイルに、今季は“つなぎ”のエッセンスを加えながら崩すという、反町体制3年目の進化をしっかりと示せた内容だったと言える。『J1昇格』に照準を合わせた期待の持てるシーズンとなりそうだ。さらに、この勝利の功労者として、田中はサポーターへの絶大なる感謝を口にしている。「今日のピッチで、僕らは11人じゃなかった。サポーターと12人で戦えたから勝利できたと強く感じた」
オフィシャルの応援バス35台、総勢8036人の松本サポーターが駆けつけ、大熱唱でチームを鼓舞する景観は、東京V側の担当記者としても素直に心震えた。スタジアム全体も、12658人もの観客が集まった。特に若い東京Vの選手たちにとって1万超の大観衆の中でのプレーは大きな喜びと興奮でもあり、今後の大きな糧にもなったに違いない。結果はともあれ、すばらしい雰囲気で今季の幕開けの試合ができたことは、両チームの選手・スタッフ、サポーター、その他この試合運営に携わった全ての人々に感謝したい。

以上

2014.03.03 Reported by 上岡真里江
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/09/05(木) 14:00 Jリーグ審判レポート(シンレポ!)審判の舞台裏 #6 「元Jリーガー 御厨貴文が審判への道を選んだワケとは?」