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【J1:第1節 名古屋 vs 清水】レポート:紙一重の打ち合いを制し、開幕戦勝利を飾ったのは清水。新体制の船出を勝利で飾れずも、名古屋は今後に光の見える内容に(14.03.02)

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どちらにとっても悪くない内容と結果だった。とりわけ陣容の一新と指揮官の交代を同時に行い、わずか5週間で6年間築き上げてきたスタイルを再構築した名古屋にとって、一度は逆転しての2-3という打ち合いは、少なくとも内容的には悪くない。だからこそ西野朗監督は「チームとしてまとまって戦えた」と振り返ることができたのだ。負けてなお及第点。それが新生・名古屋のスタートにおける印象だった。

名古屋のスタメンは予想通りの11人。DFラインには前日に西野監督が「出しますよ。闘莉王と組ませます」と起用を明言していた福岡大在学中の特別指定選手・大武峻が入り、サイドバックには田鍋陵太と本多勇喜の若手が選ばれた。ボランチにはゲームメイカー役を期待される磯村亮太がダニルソンとコンビを組み、サイドハーフには古巣対決となる枝村匠馬と小川佳純。ツートップには名古屋の隆盛を支えたケネディと玉田圭司のベテラン2人が居座った。「この1週間でチームがすごく上向いた。キャリアのある選手たちの仕上げ方はさすが」と指揮官。ここまでの練習試合や紅白戦でも思うような形を作れずにいたが、開幕へ向け戦闘態勢は整えてきていた。

清水もほぼ予想通りのメンバーだ。村松大輔が出場停止となった中盤の底は杉山浩太と竹内涼がコンビを組み、残るは2月16日のプレシーズンマッチ(vs川崎F)と同じメンバー。伝統のサイド攻撃を活かす長沢駿とノヴァコヴィッチの長身ツートップには、名古屋の西野監督も「あの2人の高さには自信を持っているでしょうし、そこがストロングポイント」と警戒心を強めていたほど。大前元紀、高木俊幸というキレのあるサイドアタッカーに対峙するのが経験の少ないサイドバックであることは、清水にとっては崩しどころの一つであり、名古屋にとっては懸案事項。ゴトビ体制4年目の熟成度も、名古屋にはないアドバンテージといえた。

試合はゴトビ監督が「典型的な開幕戦だった」と振り返ったように、両チームともに不安定な立ち上がりに。4分、相手のクリアミスから攻め込んだ名古屋が玉田のボールキープから小川とつなぎ、中央の枝村がシュート。これがDFに当たってこぼれたところをケネディが詰めたが、惜しくもバーを叩いた。この決定機に対する反撃から清水が先制するあたり、ピッチ上の不安定さが見てとれる。右サイドに大きく展開した清水は大前のクロスをDFに囲まれながら長沢が落とし、いち早く詰めた高木俊が低く抑えたシュートをゴールに突き刺した。

しかし名古屋のメンタルは崩れなかった。それを体現したのが大武や磯村、そして果敢に前を目指したサイドバックたちだ。特に磯村は中盤のパス供給役としての役割を強く意識した動きでチームにリズムを生んだ。DFラインからボールを引き出し、パスを出しては動き、パスを受けてはまたさばく。ボランチが落ち着いてボールを配れば自ずと周囲の動きもスムーズになっていくもの。失点後はむしろ名古屋がペースをつかみ、大武のくさびのパスや田鍋、本多のサイドアタックも際立つようになっていった。

そして15分を過ぎるあたりから名古屋の攻勢が始まり、前半の逆転劇が生まれる。まずは20分、ボールを持ち上がった磯村が左を見ながら、セットプレー終わりで右にいた本多にパスを送る。本多は縦に仕掛け、切り返して中央へ。ワンバウンドのボールをDFを背負いながら玉田がさばいて浮き球を後ろに送ると、フリーで待っていたケネディがきれいにボレーで合わせ、今季の1点目を叩き込んだ。そのまま清水を押し込んだ名古屋は36分にも追加点。左サイドからの小川のクロスをケネディが競って浮かすと、後ろから走り込んだ田中マルクス闘莉王がGKの位置を良く見てループ気味のヘディングを押し込んだ。前半の終盤では清水も盛り返したが、前半はそのまま名古屋のリードで折り返す。

後半は名古屋の不安要素がそのまま結果につながった。不安要素の一つは連係面だ。先にも書いた通り、新しいシステムを構築しだして5週間。勝手知ったるメンバーも多いとはいえ守備でも攻撃でも意志の疎通はまだまだ時間は足りていない。そうした中での73分の失点は、起こり得るものでもあった。CKに“ど”フリーで合わせたのは平岡康裕。ゾーンDFの間にボールを落とした大前も見事だったが、名古屋はあまりに簡単にやられ過ぎた。

もう一つの名古屋の不安要素は、経験の少ない選手たちだ。得点、逆転したことで勢いづいた若いチームだったが、経験のなさは体力面にも影響する。J1でフル出場した経験の少ない、あるいはない選手の動きは時間の経過とともに鈍っていった。80分、途中交代の村田和哉と吉田豊が右サイドを攻略したが、この時間帯、明らかに名古屋の左サイドバックはバテていた。それに伴う周囲のサポートも乏しく、数的優位を作られたまま上げられたクロスにノヴァコヴィッチが合わせ、決勝点をゲット。本多ばかりを責めることはできないが、体力と対応の両面において、経験不足が露呈したがゆえの失点だった。

目まぐるしい打ち合いにスペクタクル性は満載で、ともに攻撃的嗜好の強い両監督もその点には満足している様子。得られた結果も白黒ついたものの、敗戦の将である西野監督もおおむねポジティブな感想を並べている。清水としてもアウェイでの開幕戦で3得点、しかも一度はビハインドを背負っての勝ち越し劇には自然と頬も緩むというもの。ゴトビ監督はオレンジ色のソックスという“ラッキーチャーム”に言及しつつ、「諦めない姿勢を選手は見せてくれた」と満面の笑みを浮かべた。3月はこの後横浜FM、C大阪、浦和と難敵揃いの日程だけに、開幕ダッシュを決められたのは大きい。

名古屋の表情も明るかった。枝村などは古巣ということもあってか険しい表情で「勝てる試合を落とした」と悔やんだが、玉田、闘莉王、楢崎正剛などベテランたちは冷静に状況を捉えている。「今までの試合で一番締まった試合をした」という楢崎の言葉が全てだろう。大武が及第点以上のプレーを披露し、両サイドバックも奮闘した。司令塔・磯村にもメドがたち、FWの活躍で2得点を奪った。失点も守備が完全に崩されたというわけではなく、どちらかといえば自滅に近いものだったことを思えば、悲観する必要はない。交代策と終盤のパワープレーは実らなかったが、それも勝利への執念を感じさせるものだった。パワープレーひとつとっても、得点の術が見えてこないゆえではなく、同点、逆転を追い求めてのパワープレーという点で評価できる。

「本当に今日の勝敗は紙一重でした。次のゲームに繋がるような部分もたくさん見られたし、自分のプレーにもっと自信を持っていいような選手もたくさんいました。こういう戦いを続けながら、停滞することなく、また次へと進んでいきたい」(西野監督)

勝って兜の緒を締めた清水と、負けはしたものの及第点をつけられる名古屋。豊田スタジアムでは勝者も敗者も等しく自信を手に入れた。

以上

2014.03.02 Reported by 今井雄一朗
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