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【J1:第34節 F東京 vs 仙台】レポート:本懐を遂げた男の味スタ ラストダンス(13.12.08)

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今季J1リーグ最終節は、試合後のセレモニーを除けば、ラストマッチという印象を抱かせなかった。それは、F東京も仙台も同じだ。試合は2−0でF東京が勝利を収めたが、両クラブの選手も、監督も2週間後を見据えていた。

前半は仙台の試合だった。手倉森誠監督は、それまでのサイド主体の攻撃体系をこの試合に向けて変更してきた。2トップの一方を前線に置き、もう一人は中盤との間で顔を出す。さらに、左サイドで起用した佐々木勇人がサイドに張るだけでなく、中央寄りに位置を変えて中盤の構成力が増した。場面によっては、1トップ2シャドーに近い配置となり、それを捕まえきれないF東京は劣勢に立たされた。仙台は枠内シュートを次々と放ち、攻勢を強めた。さらに、前線からのプレスを含めた一つ一つのプレー強度も高く、前半は仙台ペースのまま進んだ。
しかし、そこにF東京GK塩田仁史が立ちはだかる。前半だけで8本のシュートが飛んできたが、いずれも掻き出してゴールを割らせない。カウンターからチャンスを創出しつつ、耐え忍ぶ時間帯が続いた。

後半は、様相がガラリと変わる。攻め疲れてきた仙台に対し、尻上がりに調子が上がっていったF東京が押し返していく。開始直後にルーカスがチャンスをつかみ、シュートを放つなど、次第に背番号「49」の足元にボールが集まり始める。
すると、53分、右サイドでボールがつながり、 長谷川アーリアジャスールからクロスが中央に送られる。それに待ち構えていたルーカスが素早く反応。右足で合わせると、放たれたボールはゴール右を正確に射抜いた。それを見届けてベンチへと駆け寄り、仲間たちからの祝福を受ける。輪が解かれ、ベンチの後ろにいた飯野一徳通訳を指差して拳を握った。両手を広げ、天を仰ぎ見て十字を切る。幾度と見てきた光景は、味スタではこれが見納めとなる。歓喜と、さびしさが入り交じる中、89分、万感の拍手に贈られてルーカスはベンチへと退いた。終了間際、そのルーカスと代わって入った平山相太が米本拓司のクロスを頭で合わせて追加点を奪い、F東京が仙台から勝利を奪った。

ただし、試合後の仙台・手倉森監督は不敵だった。会見の席で「駆け引きはもう始まっていたのかなと思う。最後に、天皇杯を置き土産にしたいという思いはおそらくポポヴィッチも同じ。今回、土をつけられた分、すべてが良い部分に進んでいるとオレは思う。ポポヴィッチとの対決をまた楽しみたい」と口にした。2週間後の天皇杯準々決勝(12/22@ユアスタ)には主力選手が復帰を果たし、この日とは違う面子が顔を揃えるはずだ。
そして、F東京もポポヴィッチ監督はネマニャ・ヴチチェヴィッチと、塩田をサプライズ起用し、平山、石川直宏、三田啓貴、東慶悟といった面々をベンチに置いた。いずれも好調をキープしており、多士済々なメンバーをどう起用するかも2週間後の一戦での楽しみとなる。2人の指揮官も今季限りでクラブを去る。負ければ、そこが最後となる天皇杯がそれぞれのラストゲームだ。それを見据えた戦いはすでに始まっていたのかもしれない。

いずれにせよこの最終節は、引退を表明したルーカス・セベリーノの去り際の美学が集約された試合だった。「それぞれの考え方がある。ボロボロになるまでという選手もいる。来季も十分できる自信はある。だけど、私は自分が最高のパフォーマンスができる状態でユニフォームを脱ぎたい」。1試合で語り尽くすことのできない偉大な男は、その言葉どおりのプレーを披露し、味スタラストゲームでゴールを奪って本懐を遂げた。
ルーカスは2004年に初来日し、2005年限りでF東京を後にするはずだった。プライドを傷つけられた男は、それでも当時のクラブのワガママを受け入れてチームに残ってくれた。そして2011年、一度はユニフォームを脱いだにも関わらず、苦境に立たされていたクラブを助けるために地球の真裏からカムバックを果たした。2004年のヤマザキナビスコカップ初制覇、2011年のJ2優勝・J1復帰、さらに天皇杯初優勝、翌年のAFCアジアチャンピオンズリーグ初出場。そのすべてはルーカスがいなければ、成し遂げることなどできなかった。一つひとつの功績を振り返っていけば、夜通し話しても語り足りないだろう。

試合後のセレモニーで、7年半の思い出の映像が大型ビジョンに映し出され、それを見終わったルーカスの頬を涙がつたった。マイクの前に立った男は、感謝の言葉を口にした。その「ありがとう」に応えるにはまだ少しだけ早い。頼りっぱなしだったルーカスの引退試合は、もう一つのホームで開催しなければいけない。これまでたくさんのワガママに笑顔で受け入れてくれたのだから、そんな素敵な結末が待っていてもいいだろう。ルーコンのビッグスマイルが似合う舞台は、元日の国立決勝に他ならない。誰もがともにハッピーに踊り、「ありがとう」と笑いながら一緒に泣くなんて最高のハッピーエンドだ。陽気なブラジリアンとの別れには湿っぽいラストダンスなど似合わない。

以上

2013.12.08 Reported by 馬場康平
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