Ｊ１進出を賭けた１発勝負。２年連続のプレーオフ進出の京都に勢いのある長崎がどう挑むかという部分が注目されたが、長崎は立ち上がりから素早い攻撃で京都ディフェンスラインの裏を突く。長崎はほとんどの時間でゲームを支配するも得点が遠く、ついには０-０で試合が終了。粘り強い守備で長崎を無得点に抑えた京都がプレーオフのレギュレーション（※）によって決勝進出を決めた。

試合後、長崎の高木琢也監督は「1年間やってきたことを今日はピッチで出してくれた」と選手を讃えたように、得点こそあげられなかったが、この日も長崎らしいハングリーな気持ちが前面に出た試合となった。選手たちは気負うことなくレギュラーシーズン以上に走りまわり、前線からハイプいレスをかけてボールを奪うと、連動した攻撃でチャンスを作った。

今季、長崎は京都と2回対戦して2敗。ただし、「２試合とも内容的には悪くはなかった。京都のほうが嫌がっているはず」（古部健太）と話すように、長崎の選手は特別、京都に対して苦手意識はなかった。ただ２試合ともＧＫオ スンフンとＤＦバヤリッツァを中心とした固い守備によってことごとく長崎の攻撃は阻まれてきた。

そのため高木監督は京都攻略のための”秘策”を練り上げ、この１週間はこれまで繰り返してきた練習に加えて、”サイドからの素早い攻撃”を意識させた練習を加えた。会見でもそのことに触れ「非常にラインコントロールをするチームなので、できればサイドに出た時には早いボールをとにかく入れて、そうすればオウンゴールやコーナーになることもある。それはなぜかというと見てもわかるようにオ スンフンというＧＫの素晴らしさ。あのＧＫにクロスから点を取るのはなかなか難しいので、そういう工夫が必要だった、後はワイドを基点に相手の守備の特徴を突くことで本当に全て出せた」と試合へのアプローチを紐解いた。

選手が普段以上の頑張りを見せながらも、得点という形で”秘策”が結実しなかったのは、ここ数試合も全く同じ。シュートやクロスといった最後の部分のプレーの質がどうしても課題となっている。高木監督は来季、必要な点について「簡単な言い方をすれば点を取る。野球で言えばホームランバッター、3番4番5番を打てる選手がいない」と絶対的なストライカーを望んだ。

ただしチームの方向性については「我々の最大の武器はハイプレッシャーと運動量。相手を混乱させることができるので、ヨーロッパのサッカーを見られればわかると思いますけれど、バイエルンやドルトムントなど主にドイツのチームですとやはりハイプレッシャーの世界になってきていますので、あれを我々も目指してやっていきたい。（攻撃に）時間をかけないという事も含めて今後やっていかなければならないと思います」と話しており、来年度以降も見ている人をワクワクさせる”イケイケフットボール”を貫くようだ。

長崎は惜しくもプレーオフ準決勝で今季の航海を終えることとなったが、Ｊ２参入初年度のクラブが残留を軽々とクリアして、１１戦無敗という結果も残し更には６位に入りプレーオフに進出した。この歴史的快挙は日本サッカー界をも驚かせ、何より長崎県民に喜びと誇りを与えた。高木監督は「一年間終って、長崎の県民の方々、サポーター、そしてスポンサーの皆様には本当にお世話になりました」と礼を述べたが、長崎県民は初めて触れたＪの興奮に新しい人生を見つけた人も多い。長崎とサッカーの素敵な出会いは時間を重ねるごとにこれから膨らんでいくはず。多くの人にとってもそう感じた２０１３年だったのではないだろうか。

以上

※90分で引き分けの場合は、年間順位の優位性を確保するため、年間順位が上位のクラブを勝者とする。

2013.12.02 Reported by 植木修平