Ｊ１昇格プレーオフ準決勝。京都が勝ち上がった。
「一発勝負だと思っている」と、大木武監督は試合後の会見で語ったが、正確には二発勝負、その一発目を通過した。本当に素晴らしい、の一言に尽きる。

試合は、負傷者が戦列に戻ってきた京都が、横谷繁を左手首にギプスを巻きながらも先発させ、右サイドバックに酒井隆介を起用した。
試合は、長崎がロングボールを使い、京都陣内にボールを運ぼうとする構図となる。高い位置でプレッシャーをかけ、京都に自由を与えなかった長崎。往来の激しい、落ち着かない内容のまま前半が終了する。
後半、攻撃への勢いを強めたのは長崎。後半17分に小笠原侑生がシュートを放つと、さらに攻撃に鋭さを増した。
そして、長崎の決定機、京都のピンチが訪れる。後半29分に、ＣＫから藤井大輔が頭で。さらにＣＫからのクロスに高杉亮太がシュート。38分にはサイドからのクロスに神崎大輔と、決定的な場面を迎えるが、ここで立ちはだかったのは京都ＧＫ・オ スンフン。「今日は本当にオ スンフンを100％褒めるべきだなと思いました」と敵将・高木琢也監督も脱帽のセーブでピンチを救った。
そして、アディショナルタイム4分を乗り切りタイムアップ。スコアレスドローとなったが、規定により（※）京都の勝ち上がりが決まった。

勝ち上がったことが全てと言っていい。倉貫一毅は試合後「続けて試合ができるということ」、工藤浩平も「今は結果だけなので、とりあえず次のステージに上がれたのは良かった」と、まず口にしたが、本当にその通りだろう。
昨年はここで涙を飲んだ。あの悔しさを思い出せば今年のこの喜びは天と地の開きがある。次、昇格をかけて戦える挑戦権を与えられた（正確には「掴み取った」）。先ず何よりも、そこを素直に喜びたい。
その中で省みるなら、大木監督が試合後に語った「ボールを運べなかった」点。シュート数は長崎が後半6本で、セットプレーを除くと、流れの中での打たれたシュートは、実は少ない。長崎の攻撃を途中で止めるシーンも何度もあった。でも、それが京都の攻撃につながらなかったという印象だ。
山瀬功治が「どう相手を後ろ向きに守備をさせる様な形を作るのか」と語った。山瀬の真意は中盤での相手プレッシャーをいなす点にあるだろうが、それでも数は多くないが、ロングキック一発の裏で相手を逆向きにさせたこともあった。ただ、それがすぐに跳ね返されて相手ボールに、という感じだった。この辺りにも試合が難しくなった要因があるのではないか。攻撃だけ、守備だけというよりも攻守に渡って、ということである。
ただ、逆に粘り強く守った、無失点に抑えたという評価点もある。そのお陰で次に進めるのだから。

大木監督は試合後に、昇格プレーオフを「一発勝負」と表現したが、本当にその通りだと思う。だから、この試合の出来不出来は、個人的には大きく取り上げる必要もないと思う。一発勝負なので、この試合の良し悪しを持ち越すことが出来ず、次の試合は次の試合でまたまっさらな状態となる。ならば重要なことは、また次も京都のサッカーを続けてやることだろうと思う。
次のステージへ進める喜び。そこから、まだ何も掴んでおらず、手中に収めていないという意識、そして、昇格への渇望と執念へ。決勝に向け、準備を整えていくだけである。

以上

※90分で引き分けの場合は、年間順位の優位性を確保するため、年間順位が上位のクラブを勝者とする。

2013.12.02 Reported by 武田賢宗