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【J2:第40節 熊本 vs 福岡】レポート:終了間際のゴールで、またもドロー。ともに今季の課題が浮き彫りになった『バトル・オブ・九州』、決着は来季に持ち越し。(13.11.11)

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たとえば2008年の広島や2011年のF東京、今年ならG大阪に神戸と、ずば抜けた戦いぶりで勝点を積み上げてリーグを制するチームは別として、わずかな勝点差の争いを競り勝って昇格を成し遂げるのはおそらく、こういった展開の試合で勝点3をきっちり獲れるチームだ。この試合では、双方に勝つチャンスが十分あった。結果的にはお互いが勝点をこぼしたゲーム。現実として熊本、福岡ともプレーオフ圏に届かなかったわけで、両チームにはそのために必要な「勝ちきる力」が足りなかった、ということが言えるだろう。

熊本がこの試合で狙いとしていたのは、前節のG大阪戦でやれなかった「ボールサイドに激しくいく」(池谷友良監督)守備と、攻撃では「福岡のプレスをいかに外して運んで行くか」(同)ということ。具体的には、アプローチを受けてカバーリングを徹底し、奪ってはワンタッチをベースにした速いテンポでボールを動かしていく、この2点をテーマとしていた。もっとも、前回対戦時やシーズン序盤ほどには福岡の前からのプレッシャーは激しくなかったのだが、そうしたイメージを持っていたことで、いい流れでゲームに入っていけたのは確か。右の藏川洋平、左の片山奨典と、運動量が特徴の両ウイングバックが、縦に押し込むだけでなく斜めに中へ入って福岡のボランチ中原秀人の脇を、あるいは仲間隼斗とファビオの2シャドーが逆に外へ抜ける動きでサイドバックの裏と、福岡の選手の間や背後のスペースをうまく使う形を作り、前半は熊本が流れをつかんでいく。中盤のセカンドボール争いでも、圧倒とまではいかないにしても熊本に分があった。

池谷監督は戦前、福岡が立ち上がりからプレッシャーをかけてくると目論んだ上で「前半を耐えること」をポイントの1つに挙げていた。しかし実際には、前半をしのいだのはむしろ福岡の方である。熊本のボールの動かし方が早く、ボールへの寄せが徐々に遅れてスペースのケアもままならない状態で、最終ラインも含めて全体的な守備は決してオーガナイズされていたわけではない。それでも、「ミドルからのピンチはありましたけど崩された形はなかったと思う」と話したGK神山竜一がきわどい場面を3回ほど防ぐなど、福岡はゴールを割らせなかった。熊本としては、得点が奪えなかったことを除けば攻守両面において「前半はパーフェクトに近い出来だった」(養父雄仁)のは間違いない。しかし結局は、「こういうゲームは危ない」という池谷監督のハーフタイムコメントの通り、前半のうちにゴールを奪えなかったことが結果を左右することになる。

福岡は前半19分に金久保順が接触プレーで左足を痛めて船山祐二との交代を余儀なくされており、後半開始時もメンバーチェンジは行わなかった。だが前半とは一転、石津大介のドリブル等、シンプルに前にボールを運ぶ意図を持って縦への推進力を増した。特に右サイドに集中してボールを送ることによって熊本の左を押し込み、47分に坂田大輔から三島勇太へ開いて最後は金森健志、さらに52分にもボールを奪った坂田が運んでマイナスのクロスから石津と、徐々にゴールに迫る。そして迎えた58分、タッチライン際で三島がファウルを受けてフリーキックを得ると、船山のニアへのボールにフリーの状態を作った坂田が頭で合わせて右ポストギリギリを抜き、遂に先制したのである。直後、マリヤン プシュニク監督は金森に代えて前線に長身のプノセバッチを投入、坂田を右に動かして熊本の最終ラインに圧力をかけるが、「点を取った後に引いてしまう」(古賀正紘)ことで、その後は決定的な場面を作れない。福岡にとっては、こうした傾向から追加点を奪えなかったことが勝点2を失った要因の1つとなった。

リードを許した熊本は66分にウーゴと仲間を下げて北嶋秀朗と齊藤和樹、さらに77分にファビオから大迫希と、前の3人を立て続けに交代。これによって高い位置でのタメができなくなるというデメリットもあったのではないかと思われるが、一方では大迫からのクロスの場面が増える。そうした形から80分、84分、86分とチャンスを迎えるが決められず、試合は4分のアディショナルタイムに突入。このまま終わるかと思われた90+3分、相手のクリアミスを拾った大迫が送ったクロスを養父が左足で流し込み、熊本がようやく福岡のゴールネットを揺らした。最後に詰めた養父の運動量もさることながら、ニアで勝負を繰り返していた北嶋や齊藤の動きも得点を演出したと言える。
その後最後の笛が鳴るまでの1分ほどの間に熊本、福岡ともカウンターからチャンスを作ったがお互いに得点には至らず。通算12回めの対戦は、前期に続いて引き分けとなった。
シュート数は熊本が16本、福岡が8本となっているものの、90分を通しての展開は互角。内容的には、両チームとも闘争心やボールへの執着心を表現した『バトル・オブ・九州』にふさわしい緊迫したゲームではあった。それでもやはり、熊本はフィニッシュ精度や失点時に見られるマークの甘さ、福岡は前半の拙攻と終盤の失点など、お互いに今シーズン抱えていた課題が改めて見えたと言わざるを得ない。残りの2試合を来シーズンにつなげるべく、修正して臨みたい。

ところで、福岡のサポーターからは引退する北嶋に向けた横断幕が掲げられ、試合後にはそれに対して北嶋が感謝の気持ちを表現しに挨拶に行く等、Jリーグならではの温かい光景が見られたことを記しておきたい。選手だけでなく、スタンドの観客やあらゆる要素を含めてこそ、見応えのある素晴らしいゲームが成り立つものだ。
次節はいよいよホームのラストゲーム。引退する北嶋だけではなく、赤をまとっての最後の試合となる選手がいるかもしれないことを考えれば少々感傷的になるのも仕方ないが、だからこそ笑って終われるように、全力で横浜FCにぶつかり、そして勝とう。

以上

2013.11.11 Reported by 井芹貴志
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