リーグ戦も残すところ４試合。J1第31節、大宮アルディージャはホームNACK５スタジアムにヴァンフォーレ甲府を迎える。降格圏にある湘南ベルマーレが前節に敗れたことで、13位大宮のJ1残留は確定。15位の甲府と湘南の勝点差は６。今節で甲府が勝利して湘南が敗れても残留は確定しないが、甲府は得失点差で湘南を12上回っている。甲府とすれば、リーグ戦6連敗中の大宮から勝点３を上積みし、残留をほぼ確実にしたい。ここ５試合で3分２敗と足踏み状態が続いているだけに、その思いは切実だろう。

大宮も甲府も、11月３日に練習試合を行っている。大宮は流通経済大学と45分×３本を行い6-1で勝利したが、流通経済大学は２日に関東大学リーグを戦っており主力は不在。そのチームに67分まで0-1で試合を運ばれ、内容的にも押されていた。両チームのメンバーが入れ替わってからは大宮が圧倒したが、カウンターからクロスを入れられてあっけない失点の仕方といい、不安の残る内容だった。甲府は清水と45分を４本行い、主力組は1-0、サブ組は3-0とそれぞれ勝利で終えた。

甲府の戦い方ははっきりしている。守備時は自陣に引いて５バックと中盤４枚で人数をかけて守り、攻撃はカウンターからパトリックのスピードとパワーを生かす。「前半戦とは選手も戦い方も大きく変わった」(小倉勉監督)、後半戦はその戦術がハマって４勝５分４敗と勝点を重ねてきた。残留まであと一歩の状況で、戦い方を変えて無理に勝点３を取りにくることはないだろう。アウェイでの戦いでもあり、守りを固めてノヴァコヴィッチとズラタンに仕事をさせなければ、大宮が焦れて前がかりになることでチャンスは広がるはずだ。

一方、６連敗中の大宮はホームで何としても勝点３がほしいが、それには甲府の堅い守りを崩さなければならない。しかし守りを固める相手を崩すにはカウンターを浴びるリスクも負う。「真ん中でボールを奪われるとピンチになるので、サイドから崩すこと。そしてボールを失ってもすぐに切り替えて、カウンターの起点にプレッシャーをかけることが重要」だと、渡邉大剛は言う。そして、いかに「相手のブロックの中でボールを受けて前を向く状況が作れるか」(上田康太)。ボールを失うことを恐がり、ブロックの外でボールを回すだけでは崩せないし、「中に付けるパスがなければサイドも空いてこない」(渡邉)。もちろんそこにリスクも伴うが、自信を取り戻すために勇気をもってチャレンジしたい。

大宮に明るい材料は、最後にリーグ戦で勝利した横浜FM戦で負傷して戦列を離れていた金澤慎が復帰したことだ。大宮ユース出身で前半の好調を支えたレギュラーボランチは、「まだゲームを90分やっていないので、フィジカルはまだ足りないが、できるところまでやる」と、連敗ストップに意気込んでいる。7日の練習後には、小倉監督が金澤、高橋祥平、上田の３人を呼び止めて「誰と誰がボランチで出るにしても、お互いの良いところを引き出すように」という趣旨の話と、連携の確認がなされたという。それぞれ持ち味が違うだけに、小倉監督がどの組み合わせを選ぶかが興味深い。金澤ならボールへのアプローチの速さと、攻撃での縦パス。高橋なら１対１の強さとダイナミックなサイドチェンジ。上田ならボールキープとゲームメイク。守りを固める相手を積極的に崩しに行くのであれば、ボランチの１枚は上田にしたい。より慎重にゲームに入るのであれば、金澤と高橋で臨むだろう。

いずれにしても、攻める大宮と守る甲府の図式になることは間違いない。たとえ13時キックオフのゲームで湘南が勝利したとしても、残りの対戦を考えれば甲府にとっては勝点１でもそう悪い結果ではないからだ。「相手の土俵で戦うより、ウチが甲府をカウンターにハメたいんですけどね」と渡邉は苦笑するが、ここまで重ねてきた状況がそうさせてはくれない。残留リーチか、連敗ストップか、選手も切実だが、サポーターのメンタル的にもスリリングな一戦になりそうだ。

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2013.11.09 Reported by 芥川和久