「中村俊輔、緊急入院」

11月１日の電撃的なニュースに衝撃を受けた方も多いだろう。中村が胆のう炎を患い、入院生活を余儀なくされた。７日に退院し、練習も別メニューで再開するなど、長期離脱を免れたのは不幸中の幸いだが、今節の欠場は決定的。その影響がどうのように表れるかが、今節・名古屋戦の焦点だ。

６日の練習で選手たちは「今節は中村不在」と、すでに覚悟を決めた様子だった。希代の司令塔の代わりにトップ下の大役を任される中町公祐は、「プレッシャーなんて今更ない。楽しみだ」とニヤリ。続けて「試合本番にならないと分からない」と前置きしつつも、「プロでキャリアを積んできた中で、自分がやるべきことは分かっているつもり。どこのポジションでもそのタスクを担えると思う」と戸惑いはない。04年にトップ下の選手として湘南でプロの門を叩いており、元々その素地を持つ。横浜FMの普段のゲームでも、中村が中盤の底に下がった際には、中町が前に上がり非凡のゲームメイクを見せおり、そのセンスに疑う余地はない。ただし、中村と同じプレーができないことも十分承知。「自分が（中盤の底に）下がってプレーするのは得策ではない」と、あくまでも前線での仕事に専念する。

今季すでに２ケタ得点をマークする中村だが、数字に表れない、彼にしかできない唯一無二なプレーもある。タメをつくることだ。ゲームの流れを適切に読み取り、抜群のボールキープ力でチームに落ち着きを与えていた。それでチームは無駄なボールロストを回避でき、敵のカウンター防止策にもなっていた。そのタメがなくなることを踏まえて「確実にスピーディな展開になる」と富澤清太郎は推測する。

もし本当にそうなれば、名古屋が有利な展開になるかもしれない。元々、名古屋はサイドからハイタワー、ケネディを目がけて放り込むアーリークロス、藤本淳吾の精密な左足キックによるサイドチェンジなど、ダイナミックな展開を得意とするチームだからだ。さらに玉田圭司、永井謙佑といったカウンターで一発裏を突ける高性能アタッカーたちが、前線で手ぐすねを引いて待っている。よって相手ディフェンスのポジション取りが乱れがちなハイペースな展開は、大歓迎なのではないか。
まして相手は、中村が握る伝家の宝刀セットプレーも欠く。田中マルクス闘莉王らのストロングヘッダーたちがゴール前にそびえたち、FKの名手・藤本もいる名古屋が、セットプレー対決でも優位に立つと予想される。

また、名古屋は前節・大宮相手にリーグ戦で７試合ぶりに勝点３を得て、負のトンネルを脱出。しかもケガ明けの闘莉王が咆哮を挙げて自ら２ゴールを奪っての逆転勝利に、盛り上がらないわけがない。今季限りでの勇退が決まったストイコビッチ監督に、首位から奪った価値ある白星をプレゼントしようと、モチベーションは高いはずである。

横浜FM・栗原勇蔵は名古屋に対し「今季はあまり成績がよくないけど、全く侮ってはいない」と言ったが、それは本音だろう。首位と12位の格差対決とは思えない、激しいバトルになりそうだ。

以上

【11月10日、名古屋グランパス戦】

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2013.11.09 Reported by 小林智明（インサイド）